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第九十八話 退化

 春のいい天気なので、ブラリと自転車で外出した木島は軽くペダルをいで家へともどった。そのときふと、自転車で流れた景観が頭へフラッシュした。迂回うかいした道路で行われていた電柱工事である。電話線? いや、電線だったか? と木島は動きを止めて考えた。だが、どうしても記憶はもどらなかった。意固地になった木島は、ネット検索に打って出た。よく考えればどうでもいいことなのだが、このまま分からずじまいにする、というのが木島の性分には、どうも合わなかった。で、パソコンをさっそく開けて検索をしたのだが、どうにも分からず、とうとうたたみの上へ大の字になり、不貞腐ふてくされる破目におちいった。どうにも中途半端な気分で心が晴れず、木島はたたみの上へ大の字になって不貞腐ふてくされた。そのときチャイムが鳴り、友人の汲田が玄関から勝手に上がってきた。いつものことなので、さして木島は気にしなかった。

「なんだ? 金欠か?」

「そうじゃ、ねえんだよ…。そうだ! お前、アレ知ってるか?」

「アレって?」

「ここへ来るとき、やってたろ。工事さ」

「ああ、あれか…。あれは電線だ」

「なんだ、そうか…」

 あっ! という間に、木島の難問は解決した。結局、パソコンを駆使して知識を得ようという方法は徒労に帰した。ふと、木島は思った。文明の利器とか言うが、ひょっとすると、人は退化してるんじゃないか? と。小難しいことを機械に考えさせ、自分達は何も考えず答えを得ている。これって、退化なんじゃないか…。木島は他の例も気づいた。自分達は遊び道具がなかったから作って遊んだ。今の子供達はテレビゲームとかの既製品を買って機械相手に遊んでいる。それはそれで結構なことなんだろうが、反面、作ったり工夫したりする人間本来に備わった能力を、自らが退化させているんじゃないだろうか…。木島はネガティブ思考になるのが嫌で、考えないことにした。そんな無口になった木島に汲田が問いかけた。

「お前、何かあったか?」

「いや、何もないさ。ちょっと、文明を気づく人間が馬鹿に見えたのさ」

「どういうことだ?」

 汲田が木島をうかがう。

「ひとことで言えば、便利にれ過ぎた人間が、退化してるってことさ」

 木島は淡々と答えた。

「退化か…。言えるかもな。劇的に世を揺るがすような発明や発見も最近、ないからなぁ~」

 汲田も同調した。

「小ぶりで努力賞的な発見は多いんだがな。どでかい、のがない」

「ああ…、退化だ」

 汲田が腕組みしながらうなずいた。

「鳥インフルエンザで何万羽も殺処分らしいぜ」

 汲田は続けて言った。

「それだって、他のいい方法が分からないからだろ? いや、分からないんじゃなくって、すでに考える能力が多分に退化し始めてるのかもな、ははは…」

 木島がまた、淡々と答えた。木島と汲田の会話は、いつの間にかすっかり冷えきっていた。二人は同時にくしゃみをした。


                  完

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