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第九十七話 流れで…

 池波伸次は流れに身をまかせて生きる男だった。それはまるで、♪時の過ぎゆくままにぃ~♪と有名歌手が唄っていたような格好よさではなく、飽くまで行き当たりばったりの出たとこ勝負・・という、なんとも不安定で格好悪い生きざまだった。それでも池波は、それでよし! としていたから、これはもう、他人がとやかく言う筋合いの話ではなかった。大きなお世話なのだし、池波はそれで損をしたことがなかったのだから尚更なおさらである。

 桜が散り、花筏はないかだが池のほりを優雅に流れている。池波は土手の草原くさはらに座りながら、その流れをながめていた。俺もこんな綺麗に流れる人生を…などと不似合いに思いながら、池波は、ヨッコラショ! と立ち上がった。そのときだった。池波の視線の先に大きな壺のふたが見えた。誰かが捨てたものが土にまってるんだろう…と、池波は軽く思って立ち去ろうとした。だが、その壺の蓋は、実に鮮やかな瑠璃るり色に輝いていた。太陽の乱反射か…とは思ったが、池波は妙に気になった。近づいて手にし、その蓋を取ってみた。中には金銀宝石が、ぎっしりと詰まっているではないか。ハハ~~ン、誰かが何かの事情でうずめたんだ…と池波は思った。これも流れだ…と思え、壺を掘り出すと池の水で洗い、池波は何もなかったように本の位置へもどして埋め、立ち去った。どうも、よからぬ風が流れているように思えた。これも、流れで生きる池波のかんだった。

 三日後、テレビ画面がその池の濠を映し出していた。音声は池波が戻した壺と窃盗事件をからめて報じていた。池波はうそだろ! と思った。

「池波さんですか? 誠に申し訳ございませんが、署までご同行願います…」

 刑事らしき私服の警官が警察手帳を示して池波の前へ現れた。持ち帰らなかったとはいえ、洗ったりして手に触れた以上、指紋が付いているのは当然で、警官が訪ねてきたのもうなずけた。池波は、まあ、流れで…と、パトカーへ乗り込んだ。車の中で、嫌味含みでアレコレたずねられたが、どういう訳かいい風を池波は肌に感じた。その勘は実に見事に当たっていた。取り調べが始まって二分もたないうちに、犯人自首の報が警察に入ったのだった。池波に対峙たいじして座る刑事の偉ぶった口調が一変した。

「どうも、すみませんでした!! お引き取りになって結構です!」

 池波は署長以下、総出で見送られた。こうなったのも、流れで…と、池波は思った。警察をあとにして、歩きながら、ふと、ズボンのポケットへ手を突っ込んだとき、池波はいい流れの風を肌で感じた。ズボンには以前、買った三枚の宝くじが入っていた。池波はその足で宝くじ売り場へ向かった。その宝くじは三枚とも池波の勘どおり当たっていた。池波は前後賞を含め数億円をを手にし、言葉どおりの億万長者になっていた。池波は大喜びすることもなく、これも流れで…とめて思った。だがその後、札束を手にしたとき、悪い流れを感じた。

 一ヵ月後、日本は財政 破綻はたんし、数億円はただの紙切れ同然になっていた。


                  完

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