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第九十六話 話題

 身に迫る災難や危険を察知すると、未然に話題を変える男がいた。方月ほうづきという珍しい姓のためか、彼はアホウ月という渾名あだなを有難くも課内で拝命していた。その彼が所属する課は堅くも堅い、泣く子もだまる、人事部管理課。通称、人管である。

 話題を変えるといっても、それは局面に応じて変化させるというかたを決めないものだった。例えば職場内の人間関係の場合、機転をかせて話題を変えた。仕事の場合は、まったく別次元の逆発想で、そういう考え方もありか…と上司を思わせた。また、宴席の場合、シラけた座を一変させる余興をして一同を笑わせた。要は、その時々の話題変化を強弱、軽重、硬柔に使い分けることで、その場をしのいだのである。アホウ月と呼ばれる方月だったが、彼は決して馬鹿でも阿呆アホウでもなかった。いや、真逆の課内一の切れ者と言っても過言ではない存在だった。

 方月は今朝も軽く話題を変化させていた。

「どうなのかねぇ~? 来季の採用は…」

 課長の宇佐美は、机の前で待機する方月にたずねるでなく口を開いた。

「えっ? ははは…。それにしても消費税って一円玉が貯まりますよねぇ~」

「んっ? ああ、そうそう。昨日は妻の買い物で増えて往生したよ」

「そういうのって、結構、困りますよね。私は、レジ前の募金箱へ入れることにしております」

「ああ、それはいいかもな…。邪魔って訳じゃないんだが、どっさり持って移動するっていうのもな。ところで、どうなのかねぇ~? 来季の採用なんだが…」

「えっ? ははは…。そういえば、また五月の連休ですが、今年も課長、お出かけですか?」

「そうそう、それなんだよ、君。私は乗り気じゃないんだ。ゆったり、疲れをとって眠っていたいんだが、妻がね…」

「はあ、うちもそうでして…」

「お互い、大変だね? …ご苦労さん。なぜ、君を呼んだのかな?」

「さあ~?」

「あっ! もう、いいよ…。…?」

「その花瓶の花、課長、綺麗ですね?」

「んっ? ああ…。…」

 方月は軽くお辞儀すると、自席へ戻った。


                  完

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