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第九十四話 暮れる色

 空が暮れなずんでいた。確かに日足は長くなった…と、宿題の絵を書く堅太のクレパスが賑やかな線を描いた。誰が見ても山と空だが、色が少し違うように思える絵だった。いや、はっきりいえば、全然、色が違っていた。ただ、その絵には才能が認められた。実に描写が克明で、写実派の画家・・を彷彿とさせる絵だった。とても、10才の小学生の絵とは思えなかった。

 次の日の図工の時間である。生徒達が宿題で描いてきた絵を一人ずつ教師が呼んで、評価をしている。

「…、なぜ、この色にしたの?」

 図工の原塚先生は笑いながら優太にたずねた。堅太が色盲しきもうでないことは、担任の平山先生にいて知っていた。

「訳はないよ…。ただ、そう感じたから」

「そう感じたのか…」

「うん! なんか、この感じ…」

 堅太は描いた絵の空を指さして、そう言った。その口調には自信があふれていた。原塚先生には分からなかったが、そのとき堅太の感覚ではその空の色彩は、山や野や田畑の色彩と融合していた。その絵は普通目には、すぐに異色だったが、10分ばかり見続けていると、観る者の感覚を次第に変化させる、独特の技巧だったのである。堅太には描く瞬間に、その感覚が脳裡のうりに訪れたのだった。

「惜しいなぁ~。色彩以外は素晴らしく上手いんだけどね。先生はそう思うぞ」

「はい! 有難うございます。また、書いてきます」

「うん! 頑張ってな!」

 堅太は絵を持って自分の席へ戻った。

「では、次の人! …山崎君」

 一人一人、原塚先生の指導と評価が続いた。

 後日、堅太は日本画壇にその名をとどろかせることになるのだが、この頃には誰一人としてそうなる彼を予見できる者はいなかった。この技法はいまだに解明されていない不思議な特殊技法である。


                 完

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