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第七十四話 集光発電所

 西暦2350年、化石燃料の枯渇により人類は深刻なエネルギー危機に見舞われ、新たなエネルギーを得る必要に迫られていた。特に、それによる電力の不足は全世界の人々の生活を危うくし、一刻の猶予ゆうよも許されぬ事態に立ち至っていたのである。そのため、世界の知識人達は新たに建設された地球連合ビルで一堂に会し、地球語による会議を開催していた。地球語は世界のどの国でも通用する地球共有語として共同研究され完成したものである。この地球語は、西暦2150年から各国域[西暦2014年現在の国家単位ではない]の学校で必須教科に取り入れられていた。そして、全学生が地球語を修得することが義務付けられるようになって幾久しかった。その会議で、ついに人類は全世界が一丸となりこの一大プロジェクトに着手することを決議した。その方法は、今年度、ノーベル化学賞を受賞したクラック・エリプトンの新理論、集光発電の実践定義によってである。世界七大陸に一ヶ所ずつ、計七ヶ所の集光発電所が建設され、完成の日の目を見たのは、それから20年後の西暦2370年のことだった。この構造は、端的たんてきに言えばオリンピック開催のため、ギリシャ神殿で採火される採火の方式に酷似していた。要は、その形式と規模を拡大させたものである。熱反射鏡の建設には用意周到な事前準備が必要となった。まず、作業員の安全性の確保のため、太陽光線の直射熱を避ける巨大ドームが作られ、その中で円錐型の反射鏡は完成していった。発電所には変電所も不可欠である。当然、それらも整備された。

「これで、ようやく我が家も安心だ…」

 部屋の宙にプカリプカリと浮かぶエアーマットに寝そべりながら、生存番号1824367251号の平松康司は古きよき時代の飲み物、カブチーノをしみじみと味わっていた。50年前から地球に生存するすべての人々に番号制が敷かれていた。もちろん、過去に使用されていた各国域での名前は、そのまま認められていたが、パスポートやビザは、すでに廃止され、法整備も全世界共通の法規に統一されて久しかった。政治や検疫システム、通貨など、ありとあらゆる世界を分けへだてた地域格差は、すでにこの頃、消滅していた。科学の発展が宗教の迷信を凌駕りょうがし、民族間の偏見や紛争、戦争も過去の馬鹿げた茶番劇として、時折りアーカイブ映像で流れる程度だった。


「康司! 起きなさいよ!!」

 肩を揺すぶられ、ベッドで眠っていた康司は目覚めた。目の前には母親の照代が怒り顔で立っていた。康司は、どうも夢を見たようだった。昨日きのう夜、テレビで流れていた某局のエネルギー討論会を観続けた影響か…と、康司は、ぼんやりと思った。ただ、誰も気づかないベッドの暗闇の下に、康司が見た夢のエア―マットが、ひっそりとあった。


                  完

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