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第六十四話 地球人

 そもそも、このひとつしかない地球で、なにを争ってるんだい! というのが今年、小学六年になった天川星矢の疑問である。新聞にはクリミア半島周辺でめる某国の記事が出ていた。星矢はその記事を読みながら次第に怒りが込み上げていた。

「小さい! 人間は実に小さい! …」

 彼は次第に怒りで手が震え出した。こりゃ、やばい…と、星矢は新聞を読むのをやめ、テーブル上へ置いた。そして、冷静になろうと両手を広げ、深呼吸をひとつした。それでも怒りはまだ少し残っていた。彼は立ち上ると洗面台へ近づき、蛇口をひねった。続けて、水をコップへ注ぎ入れ、ガブガブと一気に飲み干した。

 星矢が自分を地球人だと意識して思うようになったのは彼が物心ついた頃からだった。だから、かれこれ数年ばかり、そう思い続けていることになる。この思いは、学校でホモ・サピエンスと学名がつく人間が進化をげてきた歴史を学ぶにつけ、より強固なものとなっていった。星矢の目や耳に入る世界各国の紛争や戦争は、おろかしくも馬鹿げた人間同士の自殺行為として映っているのだった。

 飲み終えたコップを洗いながら星矢は、ふとつぶやいた。

「最近の地球は、発想がなんか重いよ。地球人の僕としては、いたたまれない!」

「なにが、いたたまれないの! そんなこと言ってないで、宿題やりなさいよ!」

 洗濯を終えた江里が顔を出した。しまった! ママがいたのを忘れていた…と、星矢は舌を出して子供部屋へ撤収しようとした。

「また、新聞!! きちっとたたんでおきなさい。パパ、怒るわよ!」

 後方から江里の激しい愚痴攻撃をうけ、星矢はあわてて新聞を綺麗に畳み直した。毎度のことながら、江里は容赦ようしゃなかった。

 日々、地球人情報という観察記録を星矢は書いていた。そのノートには細々(こまごま)と人の特徴がしるされていた。


1.地球人は戦うことが好きだ。戦うことをやめると、ムラムラと、また戦いたくなるようだ→ この前、堀田君と三田村さんは仲なおりしたはずなのに、今日の給食のとき、またケンカしていた。


 といった内容だ。最近、星矢は地球人として、このままではいけない! と深く思うようになっている。大統領や各国首脳に任せていてもらちが明かない…と気づいたのだ。星矢は国際連合に見切りをつけ、地球連合を組織した。今のところ、参加人員は星矢、一人である。


                 完

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