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第六十話   植えかえ

 そろそろ植えかえだな…と、神里かみざと堅太は思った。そんな神里もこの春の人事異動で、官財課から議会事務局へ植えかえられたのだった。植えかえたのは役場である。そんな小さい自分が、より一層小さな植物を植えかえようと思っているのだ。そう気づくと、神里は思わず噴きだした。家の庭で、辺りに人の気配はなかったから、(わら)い声が聞こえず助かった。これが職場なら、同僚や上司に、こいつ、どうかしたのか? と嫌な目で見られてもおかしくなかったところだ。

 ピートパンにいた種が頃合いまで目を出し、ポットへ植えかえの時期だった。神里は次の日曜に植えかえようと思った。そして、その日曜が巡り、今朝である。すべての方法はある程度、パソコンの検索データを収集しておいたから安心だった。

 植えかえはことほか、スムースにいった。用土はややアルカリ性土にした。植えかえながら、ふと朝の新聞記事が頭をかすめた。それは新たな海外進出を目指めざす、とある企業の記事だった。神里は思った。そうか! 企業も植えかえられるのか…と。だが、誰が植えかえるんだ? と巡ったとき、それが内部の指導者だ…ということが分かった。内部の指導者とは企業の発展をになう経営陣である。その発想は人件費が安い海外での工場生産だ。根が伸び過ぎたから小さな日本の鉢から外国という大鉢へか…と神里には思えた。だが神里には分かっていた。いずれは根腐れを起し枯れてしまうということを。植えかえは幹を守るためなのだ。根が腐れば、幹は枯れる。現地へ設備投資で展開した工場は、ふたたび日本へ持ち帰ることは出来ないのだ。撤収すればその国のものになる…。ああ! そんなこたぁ~、どうでもいいんだ! せっかくれた管財課だったが、また一から覚えるのか…と神里は少し腹立たしくなった。経営的な事務効率からすれば、なんか無駄に思えた。民間企業なら三日と持たんな…と、また思えた。持たないのは神里ではなく民間企業なのである。

「よかったよ! このうつわで…」

 植えかえた鉢を手にして見ながら、神里はしみじみと言った。器とは、神里が勤める役場だった。


                   完

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