表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/100

第四十三話 ため息

 三日前に降ったのだから、もう一度くらい降るだろうが、ここしばらくは降らないだろう…と山並は軽く思っていた。だが、その考えは甘く、朝起きたとき、雪はまた降り積もっていた。

「なんだ! またかよ…」

 静かなたたずまいの雪景色は好きだが、また疲れるか…という雪 きをする自分の姿がふと、頭をよぎり、山並の口からため息がれた。まあ、そんなことを思っても仕方がないか…と思いなおし、山並はふたたび深いため息をきながら、とりあえずベッドを出た。

 それからの小一時間は山並にとって重かった。だが、身体が勝手に動き、いつの間にか山並は雪掻きを終えていた。ふと、腕を見ると、もう昼近くになっていた。山並が、やれやれ…と家の中へ入ろうとしたとき、天から声がした。

『疲れさせて、すみません…。でも、私も仕事なんですよね。降らせなさい! と上から命じられれば降らさねばなりません』

 山並は雪空を見上げ、耳を澄ませながら見回した。しかし、どこにもその姿は見えない。気のせいか…と山並は視線を地面へ落とした。

『ははは…私は見えませんよ!』

「あの…僕に何か用ですか?」

 山並は声を探しながら雪空にたずねた。

『いえ、そういう訳でもないんですが、少し時間が出来たもんで、声をかけたまでです』

「上って、誰ですか?」

『空を支配されておられる崇高すうこうな存在です。私達はおそばにも寄れません』

「ふ~ん…そうなんですか」

 山並は見えない存在と違和感のない普通の会話をしていた。他人が見れば、ひとりごとをつぶやくおかしな男と映っただろう。

「でも、僕だけになぜ?」

『それはあなたが、ため息を吐かれたからです。一度ならず二度までも…。私にも見栄がありますからね。一応、雪ですから』

「確かに、あなたは雪のようですが、それがなにか?」

『ですから、あなたに働いてもらったのですよ』

「と、言いますと?」

『私の仕事は人に働いてもらって、お幾ら? という存在なんですよ』

「言われている意味が分かりません」

『私も、あなたになぜこのようなことをお話しているのか分かりません』

 山並と雪の声は、ともに笑ったあと、深いため息をいた。


                   完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ