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第四十一話 三河なりきり店

 三河なりきり店は、依頼人をすっかりその気にさせることでストレスを解消してもらおうという企画で出来た店だ。店長の三河基彦以下、子供一人を含む全員で10名の合名会社の形をとっている。メンタル面のケアを生業なりわいとする店で、この手の店がまだ世間ではないため結構、評判はよく、営業利益もそれなりに出していた。初老の三河は今日も机に座りながら店員達に笑顔で指示を出していた。全員が元芸能界出身者で、それなりの演技力は持っていたが、諸事情により一般社会へ降臨した者達である。三河自身も元有名劇団員で、店ではただ一人、軽く世間に知られた男だった。

「よし! 多木君は奥様役。で、奈月ちゃんはその娘。期間は今日から一ヶ月。勤務時間は朝6時から夕方の5時まで。ただし、奈月ちゃんは紙に書いてあるとおりで結構です。で、翌月にはまた、ここへ出勤して下さい。給料はそのとき、キャッシュでお支払いします。先方にはお昼の休憩を含む休憩時間と週一日以上は休ませて下さいとは言ってあります。労働基準法があるからね。いつものように私が両手をたたいた瞬間から、君達は三河なりきり店の店員を離れます。いいね!」

「はいっ!!」「はい…」

「奈月ちゃんは相変わらず、返事がいいねっ!」

 娘役の鹿山奈月はニッコリと笑った。三月に満13才となり、労働基準監督署の許可を得て四月からこの店に入った人気者だ。

「皆川家はやや上流の家だから心するように。で、これが住所と家の詳細。これが非常用の諸経費です。今日はお休みです」

 三十半ばの多木緑と13才になった奈月は三河から何枚かの書類と諸経費の入った袋を受け取った。

「店長、私、今の学校でいいんですか?」

「ああ、いいよ。先方には言ってあるから…」

「は~~い!!」 

「他の人は、今日もよろしくお願いします。では!」

 10名全員が円陣を組み、片手を重ね合った。そして、店長の三河の掛け声とともに全員が声を出して団結感を共有した。その後、緑と奈月の二人を除く全員は店を出ていった。

「では、叩くよ!」

 三河は二人の前で両手を叩いた。その瞬間、二人の態度は豹変した。

「じゃあ、行きましょう、奈月ちゃん」

「はい、ママ!」

 三河は両腕を組み、いい調子! とばかりにニンマリと(わら)った。三河なりきり店は営業を開始した。


                        完

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