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第三十四話 がさつ

 平口は、がさつな男で知られていた。彼が行動を起こすと、どうも物事がきっちりと収まったためしがなかった。ただ、本人には自分ががさつだという自覚がない。いつもやることは一生懸命やっているつもりなのだが、コトが終わったとき、そのコトは収まっていないのだった。要は失敗である。

 この日も平口は、がさつにも暗闇の中で落として割ったコップをなんとかしようと試みた。コップの上だけが欠けた程度だったから、これは研磨工具で割れた部分をけずれば、また何かに使えるだろう…と、一端はゴミとして新聞紙に包んで捨てたものをゴミ袋から取り出し、作業を始めたのである。だが、工具を回転させ、コップを削ろうと接触させた瞬間、コップにひびが入り、破片が飛び散った。明らかに失敗したのだった。その後、よくよく考えれば、ガラス物は溶かして成形し直すか、あるいはタングステンカーバンドの超硬合金加工の刃を使用して切断するかの方法しかないのだ。いづれにしても安直な発想では駄目なのだが、開口は安易にやってしまった挙句、失敗したのだった。厚目のガラスなら上手く削れるのだろうが、物は薄いコップなのである。平口はその判断を欠いていた。実は以前、同じように上部の一部だけ皹が入ったコップを削って直せたのだ。その記憶が潜在意識として、どこかに残っていたのであろう。上手く成形し直せたそのコップは厚手のガラスだった。がさつな平口が幾つか成功した事例の、数少ない一つである。

「弱ったなぁ…」

 割れてしまってからでは遅い。あんぐりした顔で平口は両腕を組み、思案に暮れた。救いの神は存在するものだ。そのとき平口にふと、名案が浮かんだ。そうだ! このコップ、底は厚手だ! 平口はゴミ袋にまた捨てた割れたコップを再々度、取りだした。新聞紙にくるまれた割れたコップをペンチで底部近くまで欠き、いびつになった周囲を研磨工具で慎重に削った。幸いにも、がさつにならず、上手くいった。平口はホッ! として溜息をついた。頭の中に描いたのは、ちょっとした付けダレ入れである。トンカツとかのソース、刺身の溜まり醤油などを入れ、付けて食す…という構図である。平口の頭の中に陽が射し、平口はニンマリと笑った。


                  完

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