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第三十二話 未納です…

 やっと年金の支払いが終ったか…と満年齢の還暦を迎えた吉倉はホッ! と胸をで下ろした。だが、その読みは、かなり甘かった。吉倉を待ち構えていたのは、馴れない手続きの日々だったのである。

 現在の制度では満65からが本当の支給対象となる年齢で、吉倉のように還暦の60から支給を請求すれば、老齢基礎年金の繰り上げ支給ということで減額されることを知らなかったのだ。

「未納です…」

「ええっ!! そんな馬鹿な! ちゃんと役所の窓口で支払いましたよ。しかも、もう納め忘れはありませんか? って尋ねたら、係の人に、はい、これで大丈夫です、って太鼓判を押されました」

「はあ…。当方もデータの書き換えミスとか、いろいろトラブルもございましたから…。なにか領収書とかは?」

「そんなものは残ってませんよ。なにぶん、今の勤めの20年以上前ですからねぇ」

「はあ、そりゃそうでしょうね。知っておられるとは存じますが、年金に加入された日が即、保険料を納められた日とは認められないということなんです。お気の毒ですが現状は、未納です…」

「はあ…。でも、たった数か月ですよ。前後は長年、きっちり納めてるんですから…」

「この書類にお書き下されば、こちらで調査は、してみますが…」

「お願いします…」

 その場はそれで引き揚げた吉倉だったが、日本年金機構から調査結果の封書が舞い込んだのは数か月あとで、しかも、判明せず…という惨憺さんたんたる結果だった。

「ははは…お前は甘いよ。相手は消えた年金問題で一時は世間で超有名人になった悪名高い元社会保険庁だぜ」

 吉倉の親友である多賀は、笑いながらそう告げた。

「いや、それは俺も知っていたさ」

「まあ、巧妙な官僚の頭脳 詐欺さぎにあったと思ってあきらめることだな。相手は国と政治家だ。俺達がさばける相手じゃない」

 数ヵ月後、吉倉が思い描いていた額の約三割が減額された。さらに未納期間分が減額され、吉倉の年金支給額が決定したのである。三割といえば、40年かけた内の約12年分が消えたことになる。そこへ加えて、未納の年金記録である。吉倉は国を信じられなくなっていった。実は吉倉には本人も自覚していない隠されたオーラを発する力があった。吉倉の活力が落ちた途端、国力が減衰し始めたのである。政府や日銀は国力減衰の事実をひた隠そうとした。いつしか日本国債の国際信用度は下落し、国民が国債を買う余裕がなくなってからというもの、外国債として海外投資家が日本国債を購入するようになっていった。結果として、日本経済は破綻はたんの道を余儀なくされたのである。

「ミノウ、デス…」

 日本国はついに債務不履行におちいり、国際社会に対し破産宣告をして経済終戦を迎えた。


                  完

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