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第十九話  任[まか]せる男

 なまけてはいないが、どうもアグレッシブに動かない坂巻という男がいた。正月があと10日先に迫っていた朝、この男はほこりだらけのマンションで九時だというのにスピ~スピ~と寝息を立てて気持ちよさそうに眠っていた。生理学的なのどの渇きからか、坂巻はハッ! と目覚めた。それもそのはずで、いつもは入れる加湿器のスイッチを忘れて眠っていたのだ。だから、喉は乾いていた・・と、まあこうなる。なぜ彼に加湿器が必要だったか・・は解明されていない。坂巻は目を開けると身体を動かさず左の足指を伸ばした。足指が触れたのは、カラクリ仕掛けの第一ボタンだった。坂巻がそのボタンに触れた途端、ゼンマイ仕掛けの糸が動き始め、その先端の金属皿を動かした。傾いた金属皿の上には金属球が乗っていて、コロコロと滑らかに転がり落ちて別の皿の上に入った。その皿は梃子てこ仕掛けで回転し、棒を動かした。棒の先には二股の自動式バネ金具がついていて、その片方が伸びてガスコンロに火をけた。コンロの上にはフライパンが乗っていた。もう片方のバネ金具の伸びにより油がフライパン注がれた。中には昨日の夜、坂巻が眠る前に割り入れた卵があり、ほどよい火加減で目玉焼きを作り始めた。坂巻は右手のハンドルを押した。すると、折り畳み式のベッドがほどよい高さまで上がり、坂巻は上半身を起こした形となった。だが、この男はまだ腰を上げようともしなかった。次に坂巻は側面のボタンを押した。自動でハブラシにチューブの歯磨き粉がセットされ、坂巻がハブラシを口にに入れると、これも自動でシャカシャカと歯を磨き始めた。磨き終わるとハブラシは引っ込み、変わって水の注がれたコップが坂巻の前に飛び出してきた。坂巻はそのコップで口をすすいだ。すると、コップは引っ込み、洗面台につながった自動吸引機付きの漏斗ロートが現れ、坂口はその中へ漱いだ水を吐いた。そんなことが続き、坂巻は何もしないまま、洗顔、朝食を終えた。

 坂巻は腰をようやく上げると、またボタンを押した。すると自動でクローゼットが開いた。その中から今日着て出る靴下、ワイシャツ、ネクタイ、背広などを好みで選択した坂巻は、あるボックスへそれらを入れると、自分も入った。坂巻が入ると同時に、その機械は自動で坂巻に衣類を身に着けさせ始めた。衣類が整った坂巻は、背広の中の手の平サイズの機械を取り出し、そのボタンを押した。しばらくすると、パタパタパタ…というような音が次第に大きくなり、どこから現れたのか、自動制御の無人飛行物体が一機、坂巻のマンションの前を旋回し始め、坂巻が見る窓ガラス前で飛びながら待機した。数分後、坂巻の姿も飛行物体の姿もマンションから消え去っていた。坂巻は異次元の職場へ移動出勤したのだった。坂巻がどういう人物・・いや、どういう生物だったかも、いまだ解明されていない。


                 完

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