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第十五話  肩コリズム

 定年を数年先に迎える吉野は、この日も残業に明け暮れていた。片方の手でかすむ書類の字に目を凝らしながら、もう一方の手で首筋をんでグルリとひと回りさせた。そして、フゥ~~っと、なんとも切ない溜息を吐いた。どうにかこうにか書類は完成したな…と、帰り仕度たくを始めた。机の上を整えたあと、鍵をかけ、かばんを持って立った。そして、忘れ物はないな…と、吉野はもう一度、机の周りを確認し、凝った肩をグルグルと回した。どうも最近、肩の動作が増えたような気がした。課では、いつの間にか自分が一番、年上になっていた。課長も吉野に対しては尊敬の念で敬語を使った。というのも、吉野は現場が好きだった。管理職になれたものを固辞こじし続け、この年になっていた。社長や取締役さえ自分より年下になった…と、吉野はやや気弱になっていた。年老いたとはいえ、仕事は人並み以上にこなしていたから苦情は出なかった。その吉田が最近、肩こりに悩まされていた。だが妙なもので、肩がこると不思議なことに仕事がはかどり、結果が出た。契約もOKとなり、上層部の覚えもよかった。逆に肩が凝らないと結果が悪かった。吉野は、肩こりは嫌だが結果は出したいというジレンマな気分にさいなまれた。

 ある日、若手社員の関谷がしきりに肩をみ始めた。

「どうした、関谷君! 入社して二年目の君が…」

 吉野は関谷の席に近づき、軽く元気づけた。

「ああ、吉野さん。どうも肩が凝って困ってるんですよ」

「おおっ! 課長に言われた企画書は出来てるじゃないか!」

「そうなんですよ、それが不思議なんです。スラスラと企画が湧いて仕上げた途端、コレです」

 吉野は肩を片手で叩いた。そのとき、吉野は妙なことに肩がいつもより軽く感じた。俺の肩こりが関谷に? …そんな馬鹿なことはないな、と吉野は含み笑いをした。

「吉野さん、どうかしました?」

「いや、べつに…」

 関谷の問いかけに、吉野は軽く返した。

 それ以降、吉野の課では、誰彼となく肩こりが伝染するかのように課員達に移っていった。ただ、その前兆はなく、突然、現れた。それと同時に肩こりに襲われた者の仕事は100%の確率で結果を出した。いつしか、吉野の会社はこの現象を肩コリズムと名づけるようになった。


                完

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