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第十三話  湧く弁当

 ここは、とある男子高である。

「おい! あいつ、また食ってるぞ。さっき、食ったばっかじゃねぇ~か!」

 よほど腹が立ったのか、同じクラスで悪ガキの首領ドン、石田が校庭のベンチに座って弁当を食べている畑口を野次った。その声に教室の生徒達は反応し、全員が校庭を見下ろした。そんなことはまったく知らない畑口は黙々と弁当を食べ続けた。石田が言ったとおり、二時間ばかり前、確かに畑口は弁当を食べたのだった。それが、また食べている。石田には同じ弁当に見えた。ということは、少し食べて、またその続きを食べているんだ…と、石田は単純に、そう思ったのだ。だがその考えは間違っていた。

 授業開始のチャイムが鳴り、皆が席へ着いた。畑口が教室へ駆け込んできたのは数学教師の谷村が教室へ入る直前だった。息を切らして起立し、礼、着席するのが畑口のいつもの日常で、他の生徒達は、またか…程度で、さして気にすることもなかった。ただ、畑口が、なぜそんなに腹が空くのか? という疑問だけは皆の心に残った。畑口の弁当は食べても食べても尽きない食べ物が湧き出る弁当だったのである。畑口は腹がいて食べている訳ではなかった。食べないと、弁当のふたが増えるおかずや御飯で押し上げられ、かばんが食べ物だらけになるからだった。

 ある日、石田が、ある計略を手下二人とはかった。

「お前は畑口を釘づけにしろ。で、お前は見張りだ。その間に俺は奴の弁当を食べる! いいか、奴を机へ近づけんじゃねえぞ!」

「分かりました…」

 二人は返事をしてうなずいた。

 三時限目が終わるチャイムが鳴った。いつもは教師が出たあと畑口は駆けだし、校庭で弁当を食べるのだ。だが、その日は違った。石田に命じられた手下の一人が畑口を呼び出した。

「お前、職員室で谷村先生が呼んでるぞ」

「有難う…」

 二時限目が終わって少し食べておいたから、まだそう増えてないだろう…と思える心の余裕が少し畑口にはあったから、言われたとおり職員室へ向かった。そのすきに石田は畑口の弁当を小脇に抱え、体育倉庫へ向かった。誰もいないことは調べさせていた。体育倉庫で畑口の弁当の蓋を開けると、驚いたことに手つかずだった。いや、それより幾らか蓋が押し上がっているように思えた。ギクッ! とした石田だったが、腹が空いていたから、まあいいか…と、瞬く間に弁当を平らげ、教室へ戻った。そして、何もなかったように畑口のかばんへ空にした弁当を入れた。そこへ、足止めされた畑口が首をかしげて戻って来た。

「先生、呼んでないって言ってたぞ」

「そうか…おかしいなあ。あっ! 今日じゃなかったんだ!」

 石田の手下は、なんとなくぼかして席に着いた。

 昼になった。皆がそれぞれ好きな場所で昼食を食べ始めた。だがその頃、悪ガキ三人は、恐怖の冷や汗を流していた。眼下の校庭には弁当を美味そうに食べる畑口の姿があった。


                    完

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