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第十一話  不運な男

 世の中には何をやっても不運な男というのがいる。この男、滑山も、その中の一人だった。不運が重なれば、おのずとやる先が分かってきて引き気味に物事を停滞させる。滑山もご多分にもれず、いつの間にか停滞し、アグレッシブさが消えた低いテンションの男になっていった。

 あるとき、滑山が会社帰りの電車に乗っていると、運悪く雨が降り出した。今日は降らないと天気予報が言ってたはずだが、また、これか…と滑山は思った。当然、傘は持っていなかった。電車に揺られながら、駅でやむのを待つしかないか…とも思ったが、やむ気配もなく、雨脚あまあしは益々強まり、本降りになってきた。長時間、待つのも嫌だな・・と思え、滑山は駅からタクシーで帰ることにした。運悪く、タクシー乗り場は混んでいたが、それでも40分待ちで、ようやく乗ることが出来た。滑山は後部座席に座ると、ともかくホッとした。

「よく降りますね…」

「えっ!? …はあ」

 滑山は間をおいて返した。

「どちらまで?」

「ああ、あのビルの方向へ」

「? 方向って、あんた…?」

 運転手は困惑し、不機嫌な顔をした。

「だから、あちらの方へ、ともかく走って下さい」

 運転手は渋々、十字路手前でウインカーを点滅させ、その方向へとハンドルをきった。

「で、どの辺りまで?」

 しばらく走ったところで、運転手は滑山にたずねた。

「ああ、僕が言うから、そのまま走って下さい」

「…はい!」

 ええ、走りますよ、あんたは客なんだから…というような気分で運転手は返した。滑山は助手席でいろいろと先を考えていた。自分の考えたことが、ことごとく裏目に出る。とすれば、決断した所で、その真逆に動けばどうなるだろう…と。

「次の通りは?」

「右へ」

「はい」

 タクシーは滑山の指示どおりの方向へ進んでいった。滑山は自分で思った逆を口にしていた。右へ・・と運転手には言ったが、滑山の思考は左へと命じていたのだ。そうこうして走っていたタクシーは、ついに工事中で通行止めの標識に出食わした。

「お客さん、Uターンしますか?」

「いえ、ここで結構です」

 そう言うと滑山は料金を支払い、タクシーを降りた。運転手は妙な客だ…と首をひねり、いぶかしげな眼差まなざしで車を反転させた。

 滑山は通行止めの標識を越えて歩いた。すると不思議なことに、その先には滑山の自宅があった。滑山は帰宅していた。


                 完

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