プロローグ:嗚呼、私の教師生活……
学園内に響き渡るチャイム。生徒達が笑いあう声。学び合い切磋琢磨し、そして生まれる恋……。そんな彼らの相談に乗り、「ありがとう、先生のおかげで助かったよ」と言われれば、生徒達に私はこう声を掛けるのだ。「ふふふ、そんなことは無いわ。全て貴方の力よ」と。
私は、そんな日常を見るために、ここにやってきたのに……。この惨状はなんであろうか。
私が声を掛けようとするれば、「ひっ」と言われ、正反対の方向へ走り始める。授業を教えようとすれば「糞ババア声小せえよ」とか「先生、分かりにくいです。これ以上酷いならば、私のお母さんよびますよ」と呼ばれる始末。私は自問する「どうしてこうなったのか」と。
私は、生徒に分かりやすいように擬音語と擬態語を組み込みながら、生徒に密着しながら教えているだけじゃない。まぁ確かに、時々可愛い男の子に寄り付きすぎたり、生徒の姿を妄想しながら絵を描いてたりもしてたけど、それだけの理由であそこまで責めなくてもいいじゃない。
「マルマノフ先生、聞いてますの?」
その声を聞き私は、自答を、空にほうり出したまま考えるのを止める。
「ノルフ教頭……えっと何のご用でしょうか」
そう言うと教頭は呆れて言う。
「いいですか、貴方がそんなんだから生徒の親御さんからクレームが来るのです。貴方の勤務態度がこの国を潰すかもしれないのですよ。だいたい――」
また教頭の永いお説教が始まった。教頭が言っている事も理解はできる。でも生徒を死地へ送る様なこの学校の制度に私は未だに納得がいっていない。
「――――聞いているの?、ですので貴方には来年Cクラスの担任になりますからね」
ん?いまこのおばあちゃんは何を仰ったのでしょうか?
「え……あの今何て仰いました?」
「だから、貴方には、Cクラスの担任をして貰いますっ」
「はぁ?冗談でしょう?なんで私がCクラスなんて教えなくちゃいけないのですかっ」
私は今世紀最大の怒声をこのおばあちゃんに浴びせる。
「その口のきき方はなんですかっ。生徒にセクハラしといてクビにならないだけマシだと思いなさい」
その言葉を聞いて私は声を少し詰まらせる。
「っで、ですからあれは不可抗力です」
「緊迫魔法で縛りつけ、魅了魔法を掛けておいて、不可抗力と申すのですかっ」
「うっ……」
その台詞を聞いて、私は沈黙せざる負えなくなった。
「まぁ、頑張って生徒を『教育』なさってくださいね。万が一、職場放棄や問題行動を起こした場合は即刻ここから出て行ってもらいますからね」
そういうと糞ババアはハイヒールの音をカツカツ鳴らしながら職員部屋からでていきました。
「これはめんどくさい事になったなぁ……」
私はそう言って溜息をつくのでした。