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激戦炸裂ホビースピリット!!  作者: 本文・挿絵・管理『ENMA.STATE レベル2』  協力『ジオラマ偶像』
第2話『魂の革新』
9/29

勝利への藻搔き

『激戦炸裂ホビースピリット!!』はこの下スグ!!

サイトはそのままだ!!


※この物語はフィクションであり、登場する人物、地名、団体名などはすべて架空のものです。

玩具などで叩く、投げつけるなどの行為は大変危険です。

玩具の使用は用法を守り、安全な遊びを心がけましょう。

 「ぐ…… 琉樹…!」


 洲葉の凶行により果てた良囲が、意識を取り戻し目を見開き、眼前の戦いを見つめていた。


 「良囲…!? 大丈夫なんか!?」


 空珠は慌てて良囲に近づき倒れるように座り込む。


 「ハア、ハア…。 問題ないぜぃ…。そんなことよりよう、洲葉のあの攻撃どうにかならねぇのかい?」


 ファイト開始時より、幾度(いくど)と無く発生する謎の攻撃。何も無い空間より出現するトランプ群による『ツーペア』や『フルハウス』などのトラップ技と、洲葉本人からのトランプ投擲による複合攻撃は圧倒的!反撃のチャンスを掴むどころか回避さえも困難となっていた。


 「あの攻撃が『設置型のトラップ技』であることは間違いあらへん。しかもその隠密(ステルス)技術もハイレベル。暗さのせいもあって視認は不可能や。」


 「『設置型のトラップ技』…?」

  

 洲葉の攻撃に翻弄(ほんろう)され、荒い息遣い琉樹は、耳に入った空珠の言葉を繰り返す。


 「『設置』…? 『セット』して…『置』く。 …ってことは!」


 琉樹は、真上に大きく飛び上がった!


 ――『設置』ってことは、何処かに『置く』って事だ! つまり、トラップは屋上の床に『置く』ことで設置している。 なら、床から離れればトラップには引っ掛からねぇ!!


 「シィ…!」


 洲葉は、飛び上がった琉樹に向け2枚のトランプを両手から投擲!しかし、琉樹は上体を捻って回避し、同時にお返しとばかりにメンコを投擲する!

 投擲されたメンコは洲葉の近くで爆炎を撒い広げる。洲葉は大きく横っ飛びをして爆炎の攻撃範囲から逃れながら胸中に毒づいた。


 ――単調な攻撃タイミング…、しかし、いちいち爆炎が広がる投擲というのは…、厄介、…苛立たしい!


 琉樹のメンコ投擲は、まるで近接信管の砲弾の如く、洲葉に飛来すると同時に爆炎を広げる。そのためメンコの投擲攻撃を回避するには、射線を躱すだけでなく、爆炎の効果範囲からも離脱しなければならない…、つまり、回避運動を大きく取らなければならないのだ。 洲葉はこれを苛立たしく感じた。

 そして、トランプの束を右手に持ち、それを琉樹に向け…



 「『ストレート』!!」



 右手の束からトランプが琉樹に向かい連続で高速飛翔!例えるならばそう、マシンピストルのフルオートショット!


 だが琉樹、それを見越していたかの様に『ストレート』の発射と同時にエアダイブによる急加速で完全回避!間髪入れず、身体を横回転させつつ洲葉の頭上を越えるように更に前進加速!!


「もろた!!」


 空珠叫ぶ!


 ――相手後方頭上! 足を止めての速射の際の一瞬のスキを突いた完璧な位置取りや!


 琉樹の右手に収束・圧縮される炎。ここで出す技は、


 そう…!



 「『ヴァーティカル――――



 ――この状況この位置このタイミングでの『ヴァーティカルランチャー』! いけるで、直撃や!


 だがここで予期せぬ事態発生! 琉樹の頭上より突如トランプ群が現れ、3本のラインを描き琉樹に襲いかかった!


 ――――ラン うああ!!」


 完全に想定外…、回避不能! トランプの雨が琉樹の身体に降り注ぎ、彼のホビー魂を霧散させる! そして、直撃の衝撃で床に叩き付けられる!


 「ぐぁっ…! 何だ!?」



 琉樹には、何が起こったのか分からなかった…。


 洲葉は、床に叩きつけられた琉樹に見下すような視線を送る。


 「トラップ技『スリーカード』…! 床面にしかトラップがないなどと発言した覚え…、無し。 この私、空中という空間にも…トラップ設置済み…。」



 空珠は驚愕の表情を浮かべ、固まった。


 「有り得へん…!」


 「トラップ技を空中にも設置出来ることがか?」


 「いや、ちゃう…!トラップ技の空中設置が出来る人なら他にもおる。問題は、このファイトが始まってから、洲葉本人が『今のトラップの発動地点に一度も移動しとらん』ことや!」


 「『一度も移動していない位置から発動』…!?  ってこたぁアイツ…。『自分から離れた位置にもトラップを設置出来る』ってことかい!?」


 「そういう事になる。 せやけど…。」


 ここで違和感が(つの)る。洲葉はトラップ技を自分から離れた位置に、それもファイトの最中に設置したことになるが、彼にそのようなスキはあったのだろうか?


 トラップ技には一般的に『持続性』『隠密性』『攻撃効率』の3つの要素があると言われる。


 『持続性』、これはトラップを設置してからトラップに込めたホビー魂の拡散・減衰をどれだけ抑え、性能の低下を防げるかの指標である。


 『隠密性』、これはトラップがどれだけ視覚的に認識し辛く、またホビー魂の波長の発生を抑えることで、精神波的に感知されにくいかの指標である。


 そして、『攻撃効率』は、トラップに込めた限られたホビー魂で、どれだけの攻撃能力・命中精度を持たせられるかの指標である。


 このような多くの要素をバランスよく持たせなければトラップ技として有効とは言えず。そのようなデリケートな技を正確に遠隔設置することは非常に困難だとされる。


 しかし、洲葉はそれをファイト中に、しかも全くそのようなスキも見せず行ったのである。そうでなければ先程の状況は説明出来ない…。




 「さて貴様、分かるか? この状況、諦めという判断こそ…、適切!」


 洲葉が見せる圧倒的余裕…、勝利への確信。だが琉樹は諦めない。


 「ハア…ハアッ…。 まだだ…まだなんだよ…。」


 そう…! 諦めが適していると思われる状況など、諦めの心がその身体を支配しない限り存在などしないという事を…、琉樹は確信している!!


 「勝機はまだ…  消えてねぇんだよ!!」


 琉樹は再び攻める。しかし、格闘、投擲、どのように攻めても、何処から攻めても、ここぞという場面でトラップに邪魔され決定打に至れず。

挿絵(By みてみん)

 「何度攻めても…、同じこと!」


 「勝機はぜってぇ来る!!」


 「学習しない金太郎飴が!!」


 琉樹の渾身の攻めが続く。しかしそれは、各所より発生するトラップ技により無に帰すのみ。琉樹の攻撃の全てが虚しさへと変えられてゆく…。


 そのとき、洲葉のトラップの攻略法を探ろうと、トラップ攻撃の動きを眼で追い続けていた良囲が口を開く。


 「くそがい…!トラップ対策が全く見えねぇぜ!この廃ビルの屋上全体、それも、床面、空中も合わせて三次元的にトラップを張り巡らされたみてぇだ!

 あれだけ大量のトラップで場を支配されちゃどうしようもねぇ…。この一帯が完全に奴の手中になってやがるぜい…!」


 その瞬間、空珠が思わず呟く。


 「『有り得ない設置数』、『有り得ない遠隔設置とスキの少なさ』、『有り得ない完全三次元的設置範囲』…。」


 そして、空珠の脳裏に再生される、ファイト前、琉樹がトランプで脚を固められた際の音声…。



 【うう!? 脚が…!?】

 【火嵐琉樹。貴様の身体の自由…、予め設置しておいたトラップ技により、私の手中にあり。】



 「『予め設置しておいたトラップ技』…!? くっ…、何で今までこの事に考えが至らんかったんや!! トラップは最初から仕込まれとったんや!!」


 「最初から仕込まれてた!?」


 「アイツは多分、このファイトが始まる前、いや、始めにここで戦った良囲も含め、ワイらがここに来る前に…、廃ビルの屋上一帯に、予めトラップ技を大量に設置してたんや!!」


 「『ファイトを始める前に設置』…!? それって反則だろ!?」


 「もちろんや。せやけど…。これは審判(ジャッジ)のいる公式戦(オフィシャルファイト)でもなければ、周りで観客(ギャラリー)が観戦しているわけでもあらへん。せやから…」


 「てやんでぃが…! 審判や観客がいなけりゃ何でもアリってか…!あの野郎の反則に気づけなかった俺達が間抜けってことかい!」


 良囲は昼間の出来事、けん玉使いのホビーファイターが倒されたときのことを思い返す。

思えば、何故あの戦いの場が路地裏であったのか、そして、このファイトの舞台が廃ビルの屋上なのか合点がいく。


 両方に共通していること…、それは人の出入りが無いこと。人通りが多い場所では、ファイト前に設置したトラップが通行人の動きにより暴発する可能性があり、なによりトラップ技の事前設置という反則を人に見られること事態避けねばならないのである。


 いくら強いホビーファイターであっても、戦う前から戦場に無数のトラップが仕掛けられていては勝てる道理などないであろう!


 そう、洲葉徹はこの『トラップの事前設置』によって、一度も負けることなく数々のホビーファイター達を狩ってきたのである!!


 「うおおおお、まだ…、まだだぁ゛!!」


 未だ勢いを落とさない琉樹の激しい攻め。しかし、次の瞬間それは終わりを告げる。


 「うう!!?」


 突然目の前に現れたトランプ群の壁。横、背後、頭上共に完全包囲。良囲が歯を剥き出し声を上げる!


 「やべぇ!! 『フルハウス』に捕まった!!」


 『ツーペア』『スリーカード』を越える攻撃力と包囲力を持つ紙の拷問部屋が、再びその凶暴なる牙を()く。そして洲葉、その口を三日月の如く釣り上げ眼を見開く!


 「『フルハウス』!!」


 部屋の中で一斉に舞を始めるトランプ!


 「うわあああ゛ッ!!」


 琉樹の悲鳴を舞踏曲にし、月下の屋上で華麗なる舞いを披露する紙のダンサー!恐ろしくも人の視線を釘付けにして離さない圧倒的『美』をその技は持っていた!



 「嗚呼ァッ!!  美しいィ…美しいぞ!! 私の愛おしきダンサー達よォー!!」



 「ぐぅううう…!」



 フルハウスを耐える琉樹。だがしかし、琉樹のホビー魂は限界に来ていた…。


 舞を披露したトランプ達は、それに満足したように洲葉の手の中へと還ってゆく。


 「勝機は…絶対にィ…!!」


 そして、拷問部屋(フルハウス)の解体と同時に…、遂に琉樹、倒れる…。 ホビーファイトにおける敗北… ホビー魂を一定濃度以上で纏うことができないほどに消耗した状態… すなわち…




 『スピリットダウン』である…!!




 「琉樹ィィーーーーー!!」

『激戦炸裂ホビースピリット!!』

 次話も見てくれよな!!


 ホビーファイト… スピリット・・・

 クラーーーーーッシュ!!!!

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