だからこそ、誰よりも知る
『激戦炸裂ホビースピリット!!』はこの下スグ!!
サイトはそのままだ!!
※この物語はフィクションであり、登場する人物、地名、団体名などはすべて架空のものです。
玩具などで叩く、投げつけるなどの行為は大変危険です。
玩具の使用は用法を守り、安全な遊びを心がけましょう。
サトルが落下するシオンを受け止め、グラウンドに降ろすのを視界に収めた真奈は、ハイドロスラスターの下方弱噴射でホバリングをしながらグラウンドへとゆっくり着地。玲もまた、ゲイラカイトに乗って降下、真奈の隣へと着地する。
真奈は荒い呼吸を整えながら、グラウンドに座り込むシオンの方へとゆっくり歩き出した。
歩み寄る真奈を見、シオンは慌てて立ち上がろうとするが、ヨロけて上手く立てず、やむなくその場に座り込んだ。背後からのゼロ距離連射の直撃が彼女に与えたダメージは、計り知れない。
歩み寄り、何の色も映すことなくなく見下ろす真奈の瞳を直視したシオンは、その刺さるような強い眼差しに圧され、グラウンドの土に目のやり場を求めた。それでもなお感じる真奈の圧力が、先ほどの攻防で聞いた言葉の数々を想起させてゆく…。
『人を疑い続けて、壁を作り続けて、 …そうやってアンタは、どれだけの人を傷つけて来た!!』
『人の気持ちも考えないで…、自分を守るために人を疑って、人に付けた傷を見ようともしない!! それが…、アンタだっつーんだよ!!』
耳に焼き付いて離れないの言葉の数々が、自らを否定するように反響する。その不快を払うように目を泳がせ彼女は呟いた。
「人を傷付けてきた…、私が…? ハア…、ハア…。 でも…! 人を傷付けようとしたことなんて…。」
シオンは途絶えそうな声を絞り出した。対して真奈は抑揚のない顔で言葉を返す。
「それでもアンタは、どうしようもなく人を傷付けてしまう人間なんだ。」
「そんな…、 違う…! 私は違う…!」
「何が『違う』っての?」
――自分を守る為だけじゃない…! 私が人と仲良くする方が、もっと皆が傷付くから…。 人はみんな私の事が嫌いで不快に思ってるのに。 私が近づいたら皆に迷惑が掛かる!
「『違う』ならアタシに言ってみろっつーの…。」
――何が『言ってみろ』だ…。 真奈だって本当は私が嫌いなクセに…! 『情に熱い人』を演じてるだけのクセにッ…!
「オイ、真奈。 お前…?」
『言い過ぎだろ?』と胸中に続ける。 真奈はシオンと仲直りしたいのではなかったのか? 今の真奈は、シオンを精神的に追い詰めているだけではないのか?
そんな、玲の心配を他所に真奈は更に続ける。
「…こっちから誘っといて今更悪いけど。やっぱアンタとはもう友達になれそうにないよ。 アタシだって傷つきたくないから…。」
「ッ………!!」
その瞬間、シオンの中で何かが音を立てて崩れ、強張った口元から声にならない息が漏れた。眼の周りが紅潮し、顔の筋肉が震え出し、崩れた心から滲み出した体液が、彼女の意思に反して瞳に溜められていく。
だがその時… 突如、何者かの怒声が大気を震わせた…!
「そんな言葉やめろォオオオ!!!!」
声の主はサトルだった。 皆がサトルに注目する中、彼は荒い息を吐きながら真奈を睨みつける。
「何も知らないで… 上辺だけ見て… 勝手な事だけ選んで並べるな! 確かにシオンさんは俺達と打ち解けようとしない。でも、見せないだけで本当は、優しい人なんスよ!」
荒々しく肩を上下させるサトルを、シオンは半ば驚いたような眼で呆然と見つめた。幾分か声を落とし、サトルは続ける。
「昔、まだ俺がバンドやってなくて、シオンさん達の事も知らなかった頃の事ッス。俺が上級生と喧嘩して、ボロボロにやられて歩けなくなってたとき、偶然通りかかった知らない人が。何も言わず肩を貸して保健室まで連れていってくれた!! …それがシオンさんだったんスよ。」
吐き出す様に一頻り叫ぶと、サトルはゆっくりと呼吸を整えた。彼には、シオンと長い間面識が無い真奈が、半端な見識でシオンを規定する言葉を並べた事が許せなかったのだ。それは水乃真奈よりも自分達『ラブアワーハンズ』の方がシオンを知っているという確信ゆえの怒りであった。
無表情を崩さない真奈と、険しい目付きのサトルの視線が交わったその時、今度は鈴の音のような声が… ミソラの言葉がグラウンドに響き始めた。
「私が、作曲が進まず悩んでいた時、彼女は彼女なりに様々な意見を仰って下さいました。それに、彼女がこのチームの作詩担当として日々心血を注いで下さっているのを私達は知っています。口には出さなくとも、彼女には、少しでも良い曲を作ろうという強い想いがあります。」
彼女は強い意思を瞳に込めて真奈に語りかけた。そして、それに続くように、ショウが口を開く。
「シオンはいつも俺たちの事を少なからず気にかけてくれている。シオンが壁を作っていることが事実だとしても、俺たちはシオンに仲間でいて欲しい。壁を作るのならその壁も全部含めてシオンという人間だと認めているからだ。だから水乃真奈、お前のそれらの言葉は俺達にとって聞き捨てる事が出来ない物だ。」
サトル、ミソラ、ショウ達の言葉は真奈への反論として放たれたものでありながら、どこかシオンに伝え聞かせるような言葉にも聞こえた。
呼吸を整えたサトルは、座り込んでいるシオンと眼の高さを合わせるように彼女の隣に屈み込み語りかける。
「俺達は、シオンさんの良い所も知ってるから…、悪いところも認めてるから毎日の練習が楽しいんス。ずっと一緒に同じチームで頑張って行きたいって思えるんスよ。」
シオンは固まった。『どうせ良い人間だと思われたいだけの嘘だ、自分を利用するための演技だ』そういった言葉で簡単に片付けられない何かを彼らから感じた。故にそれらの言葉をどう受け止めればいいか分からなかったのだ。それ程に、彼らの声は、これまでに聞いた誰の声よりも真っ直ぐだった。妙に暖かくなった胸と、腫れるように熱い目頭が、彼女をさらに混乱させてゆく。
暫くの静寂が流れた後、ラブアワーハンズの面々の反論を眉一つ動かさず聞いていた真奈は、不意にシオンに背を向け、歩き出した。
「アンタ…、やっぱ自分勝手で最低な人間だ。一緒にバンド組んでるクセに、アンタはソイツらの事をまるで知ろうとしないで、自分の中で『ただのチームの構成員』って決める。 ソイツらの顔を正面から見てみなよ。もし、それでも信じられずに疑い続けるって言うんなら…、 アンタにバンドは無理だと思う…。」
シオンは、右手で眼に溜まった液体を拭い去り、ショウ達ラブアワーハンズの面々をゆっくりと順々に見つめ始めた。 『アイツらの顔を正面から見ろ』という真奈の言葉を頼りに、彼らの瞳を、その内奥までも覗き込もうと懸命に眼を凝らした。彼等も、一変足りとも眼を逸らすこと無くシオンの眼差しを受け止めた。
…彼らの瞳は暖かかった。 他人を見たら無条件で敵だと決めつけてしまう自分の捻た瞳が恥ずかしくなってくる。
シオンの口から濡れた声が漏れ、眼には再び液体が溜りだす。止まらなくなったその液体…、 『涙』が眼から溢れるのを隠すように彼女は俯いた。
どうして、今こんなにも涙が溢れでて来るのか自分でもよくわからない。これから、自分はどうすればいいのかもはっきりとは分からない。しかしシオンは心の中で、一言… 強く言い放った。
――私の心は… みんなを分かった… ありがとう…!
この日、シオンこと久楽迕詩音は――
『仲間』を感じた――
『激戦炸裂ホビースピリット!!』
次話も見てくれよな!!
ホビーファイト… スピリット・・・
クラーーーーーッシュ!!!!




