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激戦炸裂ホビースピリット!!  作者: 本文・挿絵・管理『ENMA.STATE レベル2』  協力『ジオラマ偶像』
第4話『人の生きる場所』
22/29

記憶の情景 何度巡りても真は掴めず

『激戦炸裂ホビースピリット!!』はこの下スグ!!

サイトはそのままだ!!


※この物語はフィクションであり、登場する人物、地名、団体名などはすべて架空のものです。

玩具などで叩く、投げつけるなどの行為は大変危険です。

玩具の使用は用法を守り、安全な遊びを心がけましょう。

 休日、ゆったりとした午後の日差しの中、アタシは目の前の玄関の扉が開くのを待った。足早に階段を降りる音に続き、ガチャリという鍵の開く音が響く。扉を開き現れたのは親友の顔。


 初対面時には恐怖さえ覚えた睨むような眼つきは、今となっては随分と柔らかくなった。


 「こんにちは、真奈。 上がって。」


 そう促され、アタシはシオンの家の玄関を潜った。最近は、週末にはこうやって、アタシかシオンの何方かが互いの家に遊びに行くのが日課だ。家が少し離れていて通う小学校が違う為に普段はなかなか会えない。だからこそ、こうして会える時がいつも楽しみだ。


 シオンの家の臭い、生活の臭いは自然に鼻孔に吸い込まれ、家具や廊下は見慣れた物だと感じた。


 まずはシオンの自室へと向かう。彼女の自室の中でまず目に付くのは、壁に飾られたポスターだろうか?マイクを片手に、ショートヘアを振り乱し叫ぶ男性、【後藤クライド】という有名な歌手アーティストだ。シオンは彼の熱烈なファンであり、部屋の隅のラックには後藤クライドや、新進気鋭の男性6人によるユニット【SIX気風~シックスキップ~】のCDなどが並べられている。

 シオンの趣味の物が並ぶ部屋の中、私達はベッドに腰掛け、互いの学校での近況、流行りのJ-POPアーティストなどをネタに他愛ない会話を楽しむ。

挿絵(By みてみん)

 シオンとは自然に会話が合い、心が通じ合っていると実感できた。


 「そういえばさぁ、シオンってメチャクチャ声が綺麗じゃない? 歌とか上手いでしょ、絶対!」


 「ッ…。 そんな…ことない…。」


 「いやいや、ホント凄いイイ声してると思うけどな~! 自信持って良いって…、ホントに…」




 「でも、ホントはそう思ってないでしょ…?」




 「…え?」


 ――『ホントはそう思ってない』ってどういうこと? アタシはいつも自分が真に思ったことをそのまま口にしてきた。それはシオンが一番よく知ってるはず…

 

 「…ううん、何でもない! 嘘言わないよね、真奈が。…ゴメン。」


 沈黙の間を取り繕うかのように彼女はそう言った。先の、一瞬感じた仄暗さに不安を感じつつも、アタシは取り敢えずホッとする。そして、今が丁度いい機会だと思い、以前より伝えたいと思っていたことを話すことにした。


 「…気にしないで、それより、前から思ってたんだけど、シオンはもっと自分に自信持ったほうがいいと思う。シオンは何でもかんでも自分の中だけで決めつけてる。『自分はダメな人間だ』って…。 …そんな思い込みはホントになっていって、ホントにダメになるよ? シオン自身が。」


 「それはわかる…、でもどうすれば… 私、こんなだし!」


 「ほら、また自分の中だけで…」


 「でも、そんな…。 でも、決め付けるしか…!」


 ――まただ…。 こうやって、シオンは自分の考えだけで自分の可能性を閉ざしてる。人がなんと言おうと、自分で考えた自分に対するマイナスな考えだけを先行させ、固執してしまう。でも、シオンはそうすべきじゃない…!


 「やれるよ! 変われるよ!」


 アタシは反射的に言い放った!

 ――きっと変われる。それをアタシが伝えるんだ…!


 「今のシオンって自分で『これが良いって思ってるシオン』?それとも、『変わりたいって思ってるのに変われないシオン』?」


 「………。」


 「今の自分が嫌だって思ってるなら、絶対変われるって!」


 「…変われる…かな?」


 「うん。アタシは変われると思ってる! アタシも手伝うよ! シオンが変わるためならアタシは協力する! 一緒に変わってみようよ!」


 シオンは呆然とアタシの眼を見つめ、小さく開けられた口に仄かな笑みを形作った。


 「…うん、ありがとう。」


 初めて見た彼女の笑み。そこから紡がれた感謝の一言は、彼女の声でありながらそうでない気がした。いや、この一言から伝わる心こそが、今になって初めて見せる本当のシオンなのかもしれない。




 

 それから数日後…




 アタシはシオンの家の玄関前にいた。 この日もまたシオンに「変わるための知識」を教えるつもりでいる。


 階段を降りる軽快な足音に続き、靴を履く音、最後に鍵を開ける音が続き、扉の向こうから親友の顔が現れる…   という幻覚が、待ち焦がれた視覚と聴覚を内側から染める。


 友達と呼べる人間は沢山いるが、彼女といる時が一番楽しい。


 人差し指で、本日何度目かのチャイムを押し込む込もうとすると、不意に家の中からゆっくりとした足音が響いてきた。足音は徐々に大きくなり、ガチャリという鍵の開く音が響く。そして、ゆっくりとその扉が開き、目の前に親友の姿が現れた。


 「久しぶり!」


 「………うん゛。」


 帰ってきた返事は、異様にざらついていた。もともと明朗快活ではないとはいえ、今日のシオンは一段と暗い。


 「どう? 変われた? アタシ、シオンが変われるまで、ずっと協力するからね!」


 「――ッて…。」


 不意にシオンの口が僅かに動き、不明瞭な音を発する。


 「ん?  え…、 なんて?」


 「真奈…。」


 「うん、何?」


 「かえって…。」


 「………え?」


 「帰って…、欲しい。  私は真奈とはもう会わないことに決めた。」


 「あ、え…  何?」


 言葉の意味が全くわからず、アタシは目を丸くしてその顔を覗き込もうとした



 ………が。



 それより前に彼女が玄関の扉を閉じようとした。扉がアタシとシオンを隔てていく。


 「――じゃあ。」


 「あ、ちょ…!」


 アタシは反射的に外側の取っ手を掴み引っ張る。 シオンの言葉の意味を解する暇もなく、半ば力づくで扉が閉まるのを阻止する格好となった。


 「ちょっと待って、どうしたの?」


 「帰って欲しいって…、会いたくないって…、そう言った…!」


 扉の隙間から覗く刺すような視線とざらついた声を耳に入れ直感した。これは、冗談で言ってるわけではない。シオンは本気でアタシを拒絶している。 …事情は分からないが


 「――なんでそんなこと言うの?アタシ何かしたっけ?」


 身に覚えがない。どうしてシオンは怒っているのか、何がいけなかったのか全く分からない。

閉じかけた扉の隙間に必死に声を流し込むと、その奥からヒビ割れた声が飛び出してきた。


 「何かしたとか…。 『何か』じゃない、『言葉の全部』なんだ…!」


 「どういうこと!? アタシが何かしたって言うなら謝るから! だから…!」


 「言ったって真奈は謝らない。 真奈は…、そう言う人間だ…!」


 「…ッ!」


 ――またそうやって固執して…!


 アタシは、理由もなく自分の人間性を否定された気がして、喉の奥がカッと熱くなり、言葉を選ぶ間もなくその熱を声にして吐き出した。


 「何!? いっつもいっつも自分の中だけで何でもかんでも決めつけて!! 自分が一番わかってるみたいに!自分だけが正しいみたいに! アンタ勝手だよ!!」


 「勝手でいいでしょ…?  …もう他人なんだし。」


 妙に胸に響く『他人』という響き。 水に濡れ、型くずれしたようなその声を聞き。アタシの中に湧き上がった熱は急に冷めていった。


 「他人…、友達じゃない…! 真奈とは…最初から友達じゃなかった…! 真奈はさぁ…、私をバカにしてた…。 最初から…!」


 ――『バカにしてた』? そんなことない。


 「何言ってんの? アタシがいつアンタをバカにした!?」


 赤味を帯び、涙を貯め始めた彼女の瞳を直視し訴えかける。すると、突如彼女の顔が激しく歪み…


 暴力的な怒気が爆ぜた。



 「だから最初から!! 人と上手く話せなくて、いつも暗い顔してて、声が変なヤツだって… それをバカにして、見下してさァ!! それで、自分は違うって…、私みたいな変なヤツとは違うって優越感を感じてただけなんだ、真奈はァア!!!!」


 目と耳から流れ込んだ怒気が脊髄を焼くような感覚を覚え、ヒリ付く程に肌が泡立ち背中から汗が吹き出す。思わずアタシは扉の取っ手から手を離し、一歩後ろに下がった。


 「え…、ぇえ? そんな…。」


 ――見下した覚えはなく、変な声だとも思った覚えもない! むしろ羨ましいくらいに綺麗な声だと本気で思っている!


 「ア、アタシは見下したり…、バカにしたりなんかしてない…。」


 「…証明できる?」


 「証明って…。」


 心の中の事なんて証明出来るわけがない。それに、友達同士でそんな証明は必要ないとアタシは思った。

 眼の奥がジワリと焼ける。 涙に濡れたシオンの瞳を見ているうちに、アタシまで泣きそうになってきた。


 「ねえ、急にどうしたの…?」


 「………。」


 「何かあったの…?」


 「話しかけないで…! もう真奈を見たくない、声も聞きたくない…! 今、真奈の事を忘れようとしてるところだから…!」


 ――もう、アタシの言葉を聞こうともしない…。


 「…じゃあ。」


 一言そう言うと、シオンはその手を再び扉の取っ手に伸ばし、扉を勢い良く閉めだした。


 「シ…、シオン!」


 アタシが腕を伸ばすと同時に、扉が閉まり、同時にカチャリという鍵の閉まる音が響く…!






 取っ手は、ビクともしなかった…





 玄関の外に一人取り残されたアタシは、取っ手を掴んでいた腕を力なくダラリと垂らし、暫し呆然と立ち尽くした。半ば混乱した頭が冷静さを取り戻していき、明確な理由なく親友を失ったらしいという事実が現実味を帯びてくる。わけもわからず親友から誤解された理不尽さ、そして、怖気づき誤解を解くことが出来なかった自分自身の不甲斐なさに虫唾が走った。

 意図せず唇が歪み始め、呼吸が荒くなり、眼の奥の熱が顔全体に広がり始める。


 午後の日差しの暖かさが、静かに流れ出る涙の冷たさを際立たせた…

『激戦炸裂ホビースピリット!!』

 次話も見てくれよな!!


 ホビーファイト… スピリット・・・

 クラーーーーーッシュ!!!!

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