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激戦炸裂ホビースピリット!!  作者: 本文・挿絵・管理『ENMA.STATE レベル2』  協力『ジオラマ偶像』
第4話『人の生きる場所』
20/29

鱏と蜘

『激戦炸裂ホビースピリット!!』はこの下スグ!!

サイトはそのままだ!!


※この物語はフィクションであり、登場する人物、地名、団体名などはすべて架空のものです。

玩具などで叩く、投げつけるなどの行為は大変危険です。

玩具の使用は用法を守り、安全な遊びを心がけましょう。

 「そらそらそらぁああ!!」


 目にも留まらぬ急上昇と急降下を繰り返す平たい紺色の二等辺三角形!それは、右腕をガントレットで覆った男子、サトルの頭上に喰らいつかんと、上へ下へとバウンドするように暴れまわる!


 それを――ゲイラカイトを操るは…


 「止まらねェゼ! 攻めのマインドが俺の意義だと俺が決めたァ!」


 銀のアクセサリーを黒の衣服に栄えさせ、威勢良く声を上げる男子、針嶌(はじま)(れい)!ファイト開始以降続く彼の猛攻は止む気配を見せない!


 だが、その猛攻の隙を突き攻撃を差し挟んで来るは、サトルの右腕のガントレットより伸びる4本の糸電話である!それぞれの糸の先端の白いカップ状の部分は、羽虫の如く複雑な挙動で中空を飛び回り、カップの口を玲に向け、その内部より柿色の光粒をショットガンのように撃ち放ってくるのだ!攻撃のスキを作らせない玲の猛攻によりサトルの攻撃頻度は大幅に抑えられているが、その多角的攻撃を回避することは簡単ではない!



 「あの猛攻の中という状況下でも、中々にいい動きを見せる。」


 腕を組み、サトルの動きを見つめる長身はラブアワーハンズのリーダー、ショウ。その傍らには同じくラブアワーハンズのミソラがいた。


 「サトルの気が短い性質は表面的なモノ。性根は意外と冷静ですからね。」


 ミソラがそう評しながらショウの横顔を見つめると、その横顔は静かに口を開いた。


 「たとえ玲の猛攻により自身の攻撃頻度を削られようと、瞬間的な射撃の密度さえあれば、射角を一定以上の角度で交差させられるだけの砲台の位置取りと同時発射の隙さえあれば、相手にある程度のプレッシャーを与えることは可能だ。有線式飛行砲撃端末(ワイアードフライングフォートデバイス)とでも言うべきサトルの操る4本の糸電話は、左右や頭上など様々な方位に回り込み多角的な砲撃を、三次元(スリーディメンションズ)全方位射撃(オールレンジファイア)を仕掛けることが可能だ。相手にとってそれは、一瞬でも気を抜くと死角からの直撃を被る可能性を秘めていることは言わずもがな、射線と射線の交差角が生み出す回避運動方向の制限化は脅威だろう。」


 それは、眼前の全てを理論的に説明するを良しとする男の、無駄に回りくどい解説だった。

 それに対しミソラは生暖かい目を向ける。


 「あの、ショウさん…?」


 「どうした?」


 「言葉に無駄が多すぎて、何を言ってるのか、まるで理解の外… いいえ下…。」


 「………。」


 ショウのその長身が僅かにぐらついたように見えた…。 それを横目で見たミソラは微かに意地悪く微笑んだ。



挿絵(By みてみん)

 「やるじゃねぇかよ、オイ! 俺のゲイラカイトを(かわ)しながら…、そこまでよォ!」


 快活に敵を褒める玲だが、その実、内心で湧き上がる驚きと焦りを皮下に抱えていた。


 ――俺はこれだけハイテンポに攻撃を仕掛けてるんだ。アイツはそれを回避するだけで精一杯のハズ。その状況で、どうしてアイツは4つの砲台(カップ)を同時に操作するっていう複雑な芸当が可能なんだ?


 糸電話から放たれる様々な方位からの光粒を、走り、跳び、回避し続ける玲!だが、回避動作を取りつつもゲイラカイトの操作は途切れさせず、行き着く暇もない猛攻をサトルに浴びせる!

 玲がこれほどまでに、自身の攻撃を途切れさせずに連続して繰り出しているのには理由があった。


 彼の戦い方を表現する言葉…  其れは『攻撃こそ最大の防御』!


 この表現は玲本人と彼の操るゲイラカイトとの間の『距離』と、その『速力』に起因するものである。

 サトルの操る糸電話を遙かに凌ぐ長大な遠隔操作範囲。それを生かし、玲はゲイラカイトを常に、自身より離れた位置に滞空させているのだ。それにより、玲本人とゲイラカイトとの間に長い距離が生まれ、相手は、その2つを同時に視界に収め警戒することが困難となる。玲を攻撃しようと狙いをつければゲイラカイトが視界から外れ、それの超速突撃を回避することが難しくなる。だが、だからといってゲイラカイトを注視したままでは、視界外の玲に狙いを付けられないのは自明の理。

 玲のゲイラカイトが警戒せずに回避し続けられるほど甘くはない速度と精度を持っているからこそ、『本人~ホビー間の距離』が大きなアドバンテージとなっているのだ!

 つまり、玲の攻撃はそれ自体が、敵の狙いを妨げる牽制としての役割を持っており、『攻撃は最大の防御』という表現は、正に読んで字の如く。それを連続して繰り出せば、相手の攻撃の手が緩まざるを得ないのは必然であるのだ!


 だがその状況下でも、攻撃の頻度、テンポこそ玲に阻害され大きく削られつつも、僅かなスキに複数の糸電話を同時に操作し砲撃するという複雑な攻撃を仕掛けてくるサトルの能力は目を見張るものがある。


 「――大した集中力と空間・情報処理能力っつー事だけどよ…、いつまで持つモンだ? それ。」


 玲は、サトルとの攻防を続けながら呟き、口端を釣り上げた。玲にそうさせたもの、其れは『現在の攻防がサトルに与える負担は小さくない』という仮定である。『牽制としての役割も持つ』ゲイラカイトによる連続攻撃を回避しながら、4つの糸電話を同時に操作するという現在のサトルの動きは、並の集中力でこなせるものではない。それはサトルにとって決して楽ではないのだ。更に言うなら、玲も猛攻を仕掛けながらもサトルの攻撃による非ダメージは最小限に食い止めているため、サトルにしてみれば負担が大きく見返りが少ないのだ。このことも、サトルの精神を削る要因となっているであろう。

 …であるならば、早々にサトルの動きは精細を欠き、付け入るスキが生まれる筈である。

 また、仮にそうなる前にサトルが戦法を変えてきたとしても、其れは其れで玲の手の内…


 ――ジリ貧にビビッて打つ手っつーのは高が知れてる。無策な特攻か、ハイリスクな奇抜戦法かの何方かだ。 それが分かるからどうとでもできるんだよ…!


 口中に呟きながらゲイラカイトをサトルに突撃させた瞬間、サトルは斜め上前方に跳躍しそれを回避!そのまま放物線を描き空中から急接近を仕掛ける!


 ――無策に突っ込むか…、 なら!


 ニヤリと唇の端を吊り上げ、ゲイラカイトを瞬時に引き戻し、右手で尾部を握り構える。そのゲイラカイトの様は、まるで巨大な斧だ。

 格闘戦の構えを見せた玲に対し、サトルは落下しながら全身を前方に激しく回転させる!


 次の瞬間、玲の頭上に4つの糸電話がフレイルの如く叩き落とされる!落下と前転の勢いを載せた糸電話本体による格闘攻撃だ!

 円状に地表を伝い広がる衝撃波!噴火の如く天高く吹き上がる黄土の噴煙!糸電話が打ち付けたのは玲ではなくグラウンドの土だった!玲は素早く左にステップを取り、それを回避していたのだ!


 ――予想通り大振り…! 可愛いもんだ、焦ってやがる。


 一笑と同時、玲は右腕をなぎ払う様に横に振る!その右手に密着したゲイラカイトは紺の軌跡を残し、サトルに迫った!

 『―イケる!』

 そう思った刹那、高圧電流が放電したかのような閃光が眼前で爆ぜる!それは、玲とサトルのホビー魂の干渉によるものだった!大振りの叩き付けを躱され隙を見せたと思われていたサトルは、予想以上の速度で糸電話を操り叩き上げる様な第2撃を放ち、玲の薙ぎ払いと相殺させたのだ!ぶつかり合う二人のホビーから生まれた衝撃波が肥大化し、その広がりに合わせてグラウンドの砂が巻き上がった!


 ――良い反応…、いや、速すぎる反応だな。 つーことは、あの大振りは躱されることが前提…、カウンターは予測済みってわけか…!


 二人のホビーは鍔迫(つばぜり)り合いの如く押し合い、接触面から激しい光の奔流を迸しらせる!その時、玲は不意に微笑を漏らした。


 「…焦んなよ、じっくり楽しもうゼェ?」


 「なんスかアナタは…、  調子付イてェエ!!」


 サトルが叫び、右腕に力を込める!一際激しい閃光と共に、押し合っていたゲイラカイトと糸電話が弾かれ合う!そして両者は息つく暇もなく、互いのホビーを再び振りかぶる!


 「そらそらそらそらぁあああ!!」


 「てぇぇぇやあああああああ!!」


 肉薄する二人は、グラウンドを横断しながら互いに何度もホビーをぶつけ合わせる!激しい格闘攻撃の打ち合いと、それの相殺によるホビー魂の干渉が、連続して火花と閃光を撒き散らす!


 「――ッ!!」


 先にその動きを変えるはサトル!前触れ無く走っていた身体を不自然なほど急激に停止させる!直後、急にサトルが等速運動を変えた事により、玲はゲイラカイトを派手に空振りさせ、相殺するはずだった前方への運動エネルギーに引っ張られ、僅かに体制を崩す!


 「ぉわッッ!?」


 動くだけが回避ではない。等速運動を急停止することも、慣性の流れを変えるという意味では回避運動足りえるのだ!


 慌てて視線を動かし、不自然なほどの急停止を見せたサトルを見る。サトルの右腕からは一本の糸が、先程激しく打ち付けたグラウンドの一角まで伸びていたのだ。

 そう、先の『躱されることを前提とした大振りの叩き付け』で、糸電話のうち一つを地面に埋め込み、その地点と、自分とを繋ぎ止めていた。つまり、不自然な急停止は、グラウンドと自身とを繋いでいた糸を張り詰めることによって行われていたのだ!


 そのことを玲が理解するより速く、急速に伸びた一本の糸電話が、崩れた姿勢を立て直そうとし、僅かに次の行動が遅れた玲の足首に絡みつく!


 ――ミスった…!!!!


 玲の背筋を悪寒が走る!



 「『0<Delay=Loss≒Game(Death)(オーヴァー・ズィロ・ディレイ・イコール・ロス・ニアリーイコール・デェス・イン・ゲェイム)』…!

 ホビーファイトに関わらず、あらゆるスポーツにおいて動作の遅延は敗北に繋がる。それが、ゼロコンマ一秒の遅延であったとしても、遅れは敗北に――勝負における死に――直結するということだ…!誤ったな、針嶌玲。」


 見物人のショウ… 再び…  語る!

 そしてミソラは、その無駄にややこしい言い回し対し、『相変わらずこの人は…。』と眼を白けさせた。



 シオンのフロントキックを掠りながらも直撃を防いだ真奈のように、あの瞬間、仮に玲が体制を崩しながらも僅かでも回避運動を行なっていれば、絡みつく糸電話を避けられたかもしれない。だが、体制を立て直し、次の立ち回りを万全にしようとした結果、立て直しの間に、僅かに行動を止めることとなった。

 その一瞬の行動停止の発生をサトルは読み、それを逃さず攻めたのだ。もちろん、真奈のように体制を立て直す前に無理に回避運動を行ったとして、その次の展開が必ずしも有利に動いたという保証は無い。だが、先の一瞬の読み合いは、サトルに軍配が上がったという結果だった。


 「Special Moves(必殺技)…!」


 意味ありげなサトルの呟きと、足首を捕らえられた現状を鑑み、『デカい技が来る!』と玲は直感!次の瞬間に放たれるであろう攻撃に対応すべく頭をフル回転させる!


 「Activate―(発ど…



 「うぁあああ゛ッ!!!!」


 続くサトルの呟きは、遠くから聞こえた見知った人物の呻きと、大岩が落下したかのような轟音に塗り潰された!


 「――ッ水乃!?」


 反射的に名を叫び音がした方向を見る玲!その視線の先には、校舎の壁に張り付けられた真奈の姿があった!

 校舎の壁に叩き付けられたのであろう彼女の身体が壁から剥がれ落下していく姿を見、何事かと混乱する玲。だが、彼の視界の下端に、焦げ茶色の頭髪と、その奥のざらついた瞳が見えた瞬間、それは戦慄に変わった!


 「ンあ゛ァァッッ………!!!!」


 頭蓋が砕け首がもげるかのような衝撃が顎から脳天に突き抜ける!それは、いつの間にか懐に潜り込んでいたシオンの垂直蹴りの一閃だった!玲とシオンを中心に、空間が破裂したかのような衝撃が周囲の砂を巻き上る中、蹴り上げられた玲の身体は風を切り、糸電話を引き剥がし、天高くまで吹き飛んで行った!

『激戦炸裂ホビースピリット!!』

 次話も見てくれよな!!


 ホビーファイト… スピリット・・・

 クラーーーーーッシュ!!!!

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