爆ぜる光… 見えない心… 『トビウオマーメイド』と『瞬爪のハーピー』
『激戦炸裂ホビースピリット!!』はこの下スグ!!
サイトはそのままだ!!
※この物語はフィクションであり、登場する人物、地名、団体名などはすべて架空のものです。
玩具などで叩く、投げつけるなどの行為は大変危険です。
玩具の使用は用法を守り、安全な遊びを心がけましょう。
『アンタも私が嫌いなの…?』
ずっと昔… 始めてシオンに出会ったあの時、彼女の瞳はそう言っていた…
目の前の人がどのような性質を持っているのか知りたいという好奇心、目の前の人を知らないという無知から来る疑念、そして疑念が生み出す恐怖…
様々な心理が重なり合いつつも疑念と恐怖が色濃く現れ、分別を知らなかったが故の幼い正直さが、それを直に瞳に投影した結果だろうか?始めて会った彼女の瞳に暖かみは無く、直視すれば眼がひりつくような疼きを感じた…
それは、眼の前の者を突き放すかのような、静かな攻撃性を含んだ瞳だった…
第4話『人の生きる場所』
………………
「行くよ、シオン!!」
緋に塗り込められし夕刻の空の下、水乃真奈は声を張る!
『かつての友人であるシオンに、そうであった頃の気持ちを思い出させる』
その意思が切掛となり、紆余曲折の末に開始された2on2のホビーファイト。グラウンドの中央でこれから戦いの舞を演じる4名…
長短二丁づつ、計四丁の『ウォーターガン』を携えた水乃真奈…!
二等辺三角形の高機動型凧、『ゲイラカイト』を操る針嶌玲…!
その2人と対するは…
この学園の軽音部に所属するチームの一つ、『ラブアワーハンズ』のヴォーカル、シオン…!
同じく『ラブアワーハンズ』のドラム、サトル…!
真奈はシオンへ、そして玲はサトルへと距離を詰める!
後方に向けた両手の長銃より、淡いエメラルドブルーの透明な光を噴出させ、高速で前進する真奈!
噴出する光は碧きバーニア噴射炎!其処から生まれるは超推力!その移動速度を例えるなれば、戦場という名の海面を滑空する飛魚の如し!!
これこそ真奈の標準機動形式…、『ハイドロスラスター』!!
ハイドロスラスターにより低空を滑るように高速移動する真奈と、その前方で棒立ちを決め込むシオンとの距離は急速に縮まる!
…が、シオン動かず。真奈はシオンからの射撃攻撃を警戒し、右左に軌道を振るように回避運動を織り交ぜつつ接近を続ける。
――動かないって? それは余裕? 策?
移動も攻撃も行わないシオンを見た真奈の脳内に一瞬浮かぶ疑問。だが、直ぐ様疑問を霧散させ力強く呟く。
「揺さぶってみるか…!」
後方に向けていた銃口を瞬時に前方へと移し、僅かな間も挟まず馴れた手つきで狙いを付け、長銃のトリガーを引き絞った!『推進機構』から『火器』へと役割を転じた2丁の長銃の先端、魚を思わせる曲線的フォルムの、『魚の口』となる部位が光を吐き出す!
水面を切り裂くような透明感のある高音と共に右腕の長銃、続いて左腕の長銃と、僅かにタイミングをずらして射出された淡いエメラルドブルーの2つ光弾は、同色の光の筋を中空に引きシオンに迫る!
それがシオンの胴を撃ち貫くかと思われた瞬間。彼女はそれを紙一重で…
――否! 真奈の光弾発射と同時、シオンは既に膝と腰を折り曲げ上体を落とし、光弾の射線上から逃れていた!シオンの頭上を掠め後方へ飛び去る2つの光弾!まるで、攻撃タイミングを読んでいたかのような動きを見、真奈は息を呑む。
だが『開戦直後の不用意な接近』というミスが逆に平静をもたらし、再び2丁の長銃を自らの後方に向け、『距離を離すため』に『前方への加速』に転じた!
現在の距離と移動方向では、前方への慣性を殺しながら真横や真後ろに加速するよりは、その慣性に相乗する形で高速直進し、シオンの脇を掠めつつ通り過ぎた方が効率的に距離を離す事ができる。
「やっぱり変わってない…。」
シオンの脇を掠める瞬間、真奈の耳に滑りこんだ呟き。だが真奈はそれに気を止めることなく直進し距離を離す!そして地に足を付け、慣性を殺しつつ滑走による180度の旋回とともにシオンに正対!対するシオンは、先程の姿勢のまま真奈の方に向きなおる事なく語り始める。
「わかった、何となく。何も変わらないバカは、あのタイミングで撃つって。」
「………ッ!?」
――予測されていた…! 予測出来たから棒立ちのままあえて先手を許し、アタシの攻撃を余裕を持って回避した…!? 舐められている…!!
「何も変わらないバカってェ!」
そう言うアンタは!?と、胸中に付け足し、真奈は両腕を胸の前で交差させ長銃のトリガーを引きながら押し開くよう両腕を薙ぎ払った!
発射と同時に銃口の角度を変えながら射出された二対の光は、横に大きく広がり、シオンの背へと飛来してゆく!
瞬間、屈んでいたシオンは勢い良く体を伸ばして地を蹴り、上空へと高く跳び上がる!直後その足の遙か下を、刃を横に寝かせた様な形の二本の碧光が通り過ぎ、そこから発せられた衝撃波がグラウンドの土を派手に吹き散らせた!
「そういう焦りはアンタの薄さ。」
真奈はシオンの言葉に内心で舌打ちしつつその姿を眼で追い…
「何アレ…!?」
上空へと跳び上がったシオンの姿に、その脚に真奈の視線は釘付けとなった。いつの間にかサンダルを脱ぎ捨てていたシオンの両足からは、鳥類の脚を思わせる『鉤爪』らしき物が伸びていたのだ! 両足の指に4つづつ挟まれた、計8つの『直角二等辺三角形の鉤爪』…!
――アレがシオンの…!? あのホビーは!?
思案一瞬、直ぐ様上空のシオンの背を狙い両手の長銃より追撃の光弾を発する!高速で飛翔する2つの光弾がシオンの背に喰らいつこうとしたその瞬間、鋭い高音と共に薄いピンクの光が一閃!それに接触した光弾が弾けるように霧散する…!
それは、シオンが急旋回し、真奈に正対すると同時に放ったバックスピンキックの、足先の『鉤爪』の軌跡だった。
『鉤爪』で光弾を打ち消した空中のシオンに対し、真奈は更に光弾を撃ち込むべくトリガーに掛けた指に力を込める!
…が、その瞬間『何か』が起こった…!
――えッ…!? なんでシオンがこんな近くに!?
真奈は自身の眼を疑った。ほんの一瞬前まで10メートル程離れた位置に居たハズのシオンが、直ぐ目の前に――自分から1メートル程の距離にいたのだ!真奈の眼にはシオンが接近する過程は写っておらず、いつ接近したのかもどのように接近したのかも感知不能だった…!
急接近したシオンの姿に眼のピントが合わさる間も無く、次の瞬間にはスピンキックが、シオンの左足の4つの鉤爪が真奈を打たんと目前に迫っていた!
真奈は反射的に長銃の銃身でシオンの鉤爪を受け止める!耳を劈く轟音と共に一瞬の閃光、続いて空気が破裂したかのような衝撃波が真奈とシオンを中心に周囲に広がる。ホビーの接触面からは、二人のホビー魂が干渉し合い、火花が爆ぜ、稲光が迸った!
「――ぅうう!?」
――なんて圧力!?
予想以上に重い蹴りの衝撃に顔を顰めつつ、真奈はシオンの双眸を見る。両者の視線が刹那に交わり合い、真奈はシオンの視線にある種の疼きを感じた。
――蒸される様なザラザラした視線…。 この疼きは… そうだ、あの時の…
小学生の頃…、シオンに、初めて会った時の…!
それは、怒気、殺気などといった直接的な攻撃性ではなく、
嫌悪、疑念、拒絶が入り混じった、静寂でありながら暗い視線…
「これで潰れてッ…!」
その、静かな攻撃性を持った瞳の主がボソリと呟く。それは、その瞳自体が訴えかけてきたかのような、非物理な圧力を真奈に感じさせた。
その瞬間甲高い破裂音と共に、シオンの蹴り足の4つの鉤爪が、まるで内側からスライドするかのように伸張し、強烈な閃光を撒き散らす!急激に強まった蹴撃の圧力に弾かれ、真奈は僅かに後方によろめいた!
鉤爪のスライド伸張した部位は、まるで力を蓄えるかのように、直ぐ様元の位置まで引っ込む。
そして、すかさず襲い来る二撃目の蹴り!その右足から放たれたシオンの蹴りを、よろめいた体制を立て直しながら左手の長銃で受け止める!
だが、シオンの圧倒的なパワーに、今度は受け止めることもままならず大きく弾かれ、「ぅあ…!?」と、苦い呻きが漏れる!
シオンは間を置かず即座に跳ぶように駆け、再三真奈に肉薄!体制を大きく崩した真奈に、駆ける勢いを載せたサイドキックを放つ!これ以上は連続して受け流せない!直撃コース!!
だがその瞬間真奈は、自身の左方向に向け、両手の長銃より力の限りの噴射を行った!エメラルドブルーの噴射光と共に、爆発的な推力が真奈を右方向へと高速で加速させる!そして、シオンのキックが――鉤爪と、それを包む光の白膜が真奈の左腕を掠り、一瞬の干渉波を爆ぜさせ、身体に纏うホビー魂を僅かに削り取った後、虚空に突き出され風を斬った!
「ッ…!!」
直撃だけは防いだものの、掠った瞬間をスローモーション映像のようにハッキリと目に焼付けた真奈は、ヒヤリと肌を泡立たせる。 シオンの蹴りは恐ろしく疾く、そして重い。回避動作に無理はあったが、こうでもしなければ危なかった。
――これマズい、とにかく一端距離を取らないと…!
掠った衝撃で崩れた身体の体制を立て直しながら、ハイドロスラスターにより全速力で後退を始める!
「逃げんだ、アンタは…。 ファイトを始めたのはアンタなのに…!」
ボソリと呟き、獲物を喰殺する荒い目で真奈を睨む。
ハイドロスラスターによる蛇行しながらの後退と牽制の射撃を繰り返す真奈に対し、シオンはその鉤爪を備えた脚で跳躍を繰り返し、射撃を躱しながら後を追う!
「逃げ腰で撃つ弾だから…!」
何発かの光弾を躱したところで回避を止め、自身の攻撃の破壊力を見せつけるように、再び蹴りの一閃で真奈の光弾を打ち消す!そして直後、その姿は掻き消え、再び真奈の目の前に瞬間的に現れる!
――真奈ッ…!!
その急接近により、シオンの視界の中の、その瞳に映る真奈の姿は、その顔は、急激に近く大きくなる。そしてシオン胸中に蔓延る不快感も真奈との距離に比例して大きくなり、眉がひくつく。
カビや藻が合わさった様な、腐敗した水の臭いが、目の前の真奈から流れ込み鼻孔に纏わり付くような不快感…。
虫唾の走る記憶の断片が、腐臭となって真奈から押し寄せる…!
「ドブの臭いッ…!」
そう吐き出しながら、不快感を撒き散らす目の前の人間目掛け、ハイキックを打つ!
辛うじてそれを受け止め、直ぐに後方に離脱することしか出来ない真奈。先程とほぼ同様の攻防に…、真奈の顔に焦りの色が浮かび始める。
「ぅうっ…、この流れ。いきなりヤバくなって来てる…!?」
攻め続けるシオンと、逃げ続ける真奈!焦り始めた頭を冷静に回そうと努めた直後、真奈はある事に気付く。
――そういえば、シオンの戦い方も、『見えない接近』も、分からないことだらけなんだ。
分かったことって言えば、シオンが鉤爪みたいに足の指で持ってる『伸縮する三角形に畳まれた紙』…。アレは確か、振ると伸張して音を出すホビー、『紙鉄砲』だ。まあ、それが分かった所であの動きを見切れるわけではないけど…。
そう…!
後手に回り、戦いの流れがシオンに傾きつつある現在の状況を引き起こすファクターの一つ…
それは、真奈とシオンとの情報量の差。シオンが、真奈のファイトスタイルをある程度知っているのに対し、真奈は、過去とは異なるファイトスタイルを確立した現在のシオンの動きを全く知らないのだ。
――兎に角アイツの動きを見極めないと…。攻め所が分からないんじゃ、受けに回りっぱなしじゃ…。そのうちすぐにやられる…!
『激戦炸裂ホビースピリット!!』
次話も見てくれよな!!
ホビーファイト… スピリット・・・
クラーーーーーッシュ!!!!




