想い秘めし開戦
『激戦炸裂ホビースピリット!!』はこの下スグ!!
サイトはそのままだ!!
※この物語はフィクションであり、登場する人物、地名、団体名などはすべて架空のものです。
玩具などで叩く、投げつけるなどの行為は大変危険です。
玩具の使用は用法を守り、安全な遊びを心がけましょう。
体育館を出て視線を上げると、傾き始め赤味を増した太陽の光が眼球へと刺し込み、真奈は反射的に眼を細めた。グラウンドに張り付く校舎の影は先程よりも大きい。 そろそろ夕方だ。
「約束通り、私が勝ったら『2度と私の前に現れないで』。」
「うん、わかってる。」
シオン、サトルと向かい合いグラウンドに立ち土を踏みしめる真奈。彼女のすぐ隣には『2on2』のパートナーとして指名した針嶌玲がいた。
戸松巴心はホビーファイターではないため戦えない。
いっぽうの虹衣雫彩祐佳は『スライム』を使うホビーファイターだが、この日に限ってスライムを所持していなかった。
本人いわく『もっと美味しくて使いやすいモノを作ってる途中』。
よって戦える者が玲しかいなかったのだ。
「ずいぶんと急な事になりましたね…。」
「ああ…。」
グラウンドの中央で向かい合うように立つ4人を見つめる、ミソラとショウ。
「――だが、今俺達に出来るのはシオンとサトルを見守ることだけだ。これはシオンと、あの水乃真奈という者の間の問題。言ってみれば俺達は蚊帳の外だからな…。」
「はい…。」
一方、巴心と彩祐佳は、これからファイトを行う4人を挟むようにして、サトル達と向かい合うように立っていた。
「『ホビーファイトの中で魂をぶつければ、仲が良かった頃の気持ちを思い出させることができる』って真奈は言ってたけど…。彩祐佳は出来ると思う?」
巴心は真奈を不安そうに見つめていた。彩祐佳はそんな真心を見てゆっくりと語りだす。
「シオンって人に、昔の思い出を思い出させることが出来たとしても、問題はそこから。シオンと真奈の間の確執…、直接的な『理由』が無くなるわけじゃない…。」
そう、『思い出』だけで繋がれるほど、人は単純ではないだろうから…
2人が見つめる先、その先には…
グラウンドの中央で睨み合う4人がいた…!
「さ~てぇ…」
突然、玲は空を切るが如く右腕を大きく振った!
「…ブッ走りたい気分だろうがよ。」
そして半身の姿勢で、その腕を前方に突き出す!
「羽ばたく意思! 瞬く意義! 空の剛力、風の万力、俺の空力、方程式!」
突き出された右腕に乗るは、薄く平たい二等辺三角形の物体。
人はそれを凧と… 否ァ!
『ゲイラカイト』と呼ぶ!
使用方法は凧と似ているが、ゲイラカイトはそれとは別のベクトルに存するホビー。一般的に、日本で正月などに上げる長方形型の凧とは全く違う独特の二等辺三角形。高い空中機動性能を誇るホビーである。玲のそれは、紺と灰色を基調とし、先端近くには鋭利に吊り上がった眼を思わせる2つの模様、そこから尾部にかけては背骨の様な模様が伺える。背骨模様からは肋骨のような鋭い曲線模様が飛び出し、鋭利な眼と相まって、全体にクールな印象を与えていた。
続いて動くは真奈!
小型のピストルのような物を2丁を両手に持ち、軽く真上へと投げる!投擲されたピストルは激しく回転し、周囲に円状のエメラルドブルーの刃を形成させた!
「この高揚感…」
回転しながら落下してきたピストルを再びキャッチし、素早く腰のベルトに装着!
「体を伝う意識のカケラ…!」
そして、今度はアサルトライフル程の、やや大型の銃2丁をベルトから取り外す。右手の銃を肩に担ぐ様に上に向け、同時に左手の銃を前方へと射抜く様に構える!
「心の動脈! ここまでバクバク! 清涼万端ノンストップ!!」
ベルトに収まる小型の銃は、ピストルの様な形状であり、銃身全体は半透明の黄色。
対して両手に携えた長銃は、生物的な曲線を多用したフォルム。白を基調に、グリップから銃身上部にかけては水色、そして、銃身前方、及び両側面に張り付いた魚の鰭を思わせる細長いヘラの様な部位は青に染まっていた。それはまるで、細長い魚、トビウオのようである。
小銃が2丁、そして長銃が2丁…。
これら4丁の『ウォーターガン』が、真奈のホビーなのだ!
今度はサトルが、その右腕をゆっくりと天に掲げる。右腕のみ肘のあたりから指先までが、灰色のガントレットのような物で覆われ、手首にはガントレットの上から4本の細い糸が何重にも巻きつけられている。そして、それぞれの糸の両端には8つの白い紙コップのような物が取り付けられていた。
「Open…。」
そう呟くと同時に、サトルは天に掲げ、固く握られていた拳を勢い良く開く!するとサトルの手首に巻き付いていた4本の糸が勢い良く解け始める!
「Standby…!」
4本の糸の一端は4つの紙コップとともに宙に漂いだし、もう片方の一端は残りの4つの紙コップとともに手首に固定されたような状態だ!その様はまるで、右腕から伸びる4本の触覚!そう、これこそが彼のホビー…
『糸電話』!
真奈… 玲… サトル… 3人出揃う!!
だが、シオンだけは動きを見せず、真奈の両手に握られたウォーターガンを見て呟く。
「あいも変わらずウォーターガン…。 あの頃から何も変わってないね、アンタ…。」
「へえ…、覚えてんだ。」
――『何も変わってないね』 …わざわざそう言うってことは、アンタのファイトスタイルは変わったの…?
「――それより、アンタ早くホビー構えなよ。もう始めたいんだけど?」
そう、シオンはまだ、ホビーを構えておらず、見せてもいなかった。彼女は鬱陶しそうに言い放つ。
「…五月蝿いにも程がある…、アンタ。 始めたければ勝手に始めて。」
「…『始めて』って、ホビーは?」
そう、始めろと言われても相手がホビーを出していなければホビーファイトを開始する事は出来ない。真奈の問いかけに対し、シオンは無表情のまま、相手の精神を揺さぶるように語りかける。
「…不安?戦う前に私のホビー確認しとかないと。」
「ッ………!」
それはシオンの挑発であろうか? 真奈は、一瞬苛立ちそうになるが、それを顔に浮き立たせることなく皮下に抑える。
「じゃ…、始めるよ?」
真奈の一言に、相手のシオンとサトル、そして味方の玲の表情が引き締まる。
そして、一陣の風が4人を巻き込み緩やかに流れ、グラウンドの砂を僅かに吹きあげた…。
サトルは身構えたまま、シオンに呟く。
「シオンさん、あんな奴らさっさと叩き飛ばすッスよ…!」
「それは、私が先に言おうとした…。」
対するシオンの返答は、どこか中空に向け発せられた独り言かの様だった。
同時、真奈は横目でチラリと玲を見る。
「頼むよ、玲。このファイト、マジで負けらんないんだから…!」
「誰に向かって言ってんだ? 常勝って意味わかる? それって… オ・レ・だ・よ!」
玲も顔を動かさず視線のみ真奈の方へと向け答える。冗談めいた口調だが、その顔はすでに臨戦時のものだった。
その後訪れる数秒間の無音の間… それは、戦いを前にした、緊張の間…
黄土に輝く土の上、赤味がかった空の下…
そう… 正しくそう… 今此処で…
戦いが始まろうとしているのだ…!!
そして4人がややゆっくりと、声を合わせるように同時に言い放つは、戦いの合図…
それ即ち、始まりの言葉…!
「「ホビーファイト…」」
「「スピリット…」」
「「クラッシュ!!!!」」
その言葉の直後、真奈と玲が前方へ飛び出す!
「玲!」
真奈が前方を向いたまま声を飛ばす。
「――アンタはサトルを!」
「そのつもりだ!」
玲はサトルの方へ針路を取り疾走。
同時に真奈は、体を前に向けたまま後ろに向かって前にならえをするように腕全体を、ピストルの銃口を後方に向ける。同時に強く地を蹴り、両足を地面から浮かせる。直後、後方へ向けた長銃の発射口から、エメラルドブルーの光がバーナーの如く勢いよく噴出!同時に真奈の体が、低空を滑るように高速で前方へと押し出された!
水乃真奈… 針嶌玲…
対するは、シオン… サトル…
学園のグラウンドでたった今開始された2on2ホビーファイト…!
勝負の行方握るは…
正しくチームワークッ!!
真奈の視界の下端に映る砂地は高速で後方へと流れ、中央に映り込むシオンの姿がみるみるうちに近く、大きくなる!
「行くね、シオン!!」
真奈はガンを握る両腕に一層力を込めシオンへと突撃していく…!!
やるべきことは分かっていた…
あの時にやるべきことは確かに分かっていた…
でも、それに気付かないフリをしていた…
何も知らない、何も分からないもう一人の私を作り上げることによって…
ごく自然に、頭の中からやるべきことを忘れさせていた…
誰も傷つけたくなくて…
何よりあなたを傷つけたくなくて…
時の流れに身を任せ続けていた…
でも…
本当に大切な事だけは、本当に分かっていなかった…
やるべきことが分からないフリをしていたのは…
誰も傷付けたくなかったからじゃない…
あなたを傷つけたくなかったからじゃない…
ただ…
自分が傷つくのが怖かっただけ…
それだけが最後の最後まで分かっていなかった…
それを知った今…
私には何が出来るだろうか…
『激戦炸裂ホビースピリット!!』
次話も見てくれよな!!
ホビーファイト… スピリット・・・
クラーーーーーッシュ!!!!




