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激戦炸裂ホビースピリット!!  作者: 本文・挿絵・管理『ENMA.STATE レベル2』  協力『ジオラマ偶像』
第3話『旧友の歌声』
16/29

私に向けられた暗い眼差し 

『激戦炸裂ホビースピリット!!』はこの下スグ!!

サイトはそのままだ!!


※この物語はフィクションであり、登場する人物、地名、団体名などはすべて架空のものです。

玩具などで叩く、投げつけるなどの行為は大変危険です。

玩具の使用は用法を守り、安全な遊びを心がけましょう。

 『ラブアワーハンズ』のリーダー、ショウは壁にもたれ、腕を組み語り始める。


 「シオンの歌唱力はレベルが高い。だが、言葉で表現するのは難しいが、俺たち5人で合わるとどうしてもアイツの奏でる声だけが『浮遊』してしまうんだ。決してズレているわけではない…、シオンの声が、俺達の奏でる音楽という混合物から分離している、と言えば分かるだろうか?これはシオンの技術云々というより、恐らく精神的な問題だと…。 シオンの俺たちに対する『心の壁』が、無意識に歌声に影響を与えているのだろうと俺は考えている。 …まあ、確証はないが。」


 流石、チームリーダー。メンバーに対する洞察の姿勢は深い。


 そのとき、風に薄い紙切れが押し流されるように、部屋の中にヒラリ入る人影一つ…!


 それを見たサトルは、その人影に声を掛ける。


 「あっ、シオンさん! 今、ショウさんの知り合いの人達がいらっしゃってるんスよ。」


 『シオン』という言葉に、真奈は反射的にその人影の方へ顔を向ける。その視線の先の人物、シオンは歩きながら目線を合わせることなく乾いた声をサトルに返す。


 「ショウの知り合い? あっそ…、とりあえず機材の片付けでも――」


 言葉の途中、シオンの視界に真奈が入り、一瞬驚き口を閉じる。そのままの姿勢で真奈を凝視するシオン。一呼吸分の沈黙の後、その沈黙を破るは真奈。


 「シ、シオン…だよね? アタシ、水乃真奈。 えーと…、覚えてる…、よね? アタシのこと…。」


 かつて交友を絶った相手との会話。『再び拒絶されるかもしれない』という不安、そして緊張で、いつもの達者な口が上手く回ってくれない。


 対するシオンは何も言葉を返さない。ズンとした静寂が場の空気を重くする…


 そして一瞬、暗い目をしたかと思うと、シオンは、フッと真奈から視線を外した。 そして無言のまま、部屋の外へ向き直り歩き始める。その後ろ姿を見て、真奈は、押さえ込んでいた不安に――再び拒絶されたのかもしれないという不安に心臓を圧迫された。


 「…ッ! 待って!!」


 そう、叫び終わったときには既に、我知らずシオンに走りより、その手首を強く掴み引き止めていた。


 「…久しぶりだね。 今日、ライブ見たんだ。 シオンの歌…、聞いたよ。 メチャクチャ上手くなってて驚いた…。」


 「…だから? 腕、離して…。」


 ついにシオンから真奈へ向け発せられた第一声。だがその声は小さく、重かった。


 「シオン、アタシの事覚えてない? 真奈だよ! 昔、一緒に遊んでたじゃん!」


 「…ッ!  離してよ…!!」


 シオンは、直視する者に恐怖さえ与えるような剣幕で(にら)み付け、力づくで腕を振りほどき、真奈に正対する! 周りの者は、シオンが発する重い空気に気圧され沈黙。


 「覚えてる、忘れるハズない…! 忘れてんのはアンタの方…。 私は言ったハズだけど…、あの時。 『アンタは友達じゃない』って。」


 「シオン…。 アタシは…、もう一度アンタと話がしたい…、だから…!」


 「よくそれを言う。今更…! 私はもう、アンタがどんな顔で何を言っても信じない。 アンタと話すことはもう…、ない!」


 「………。」


 「アンタの顔が見えるというだけでイラつく…! 分かる?この感じ。 アンタのことが一片でも思考の中にあるだけで、不快が沸き上がる。 …全く、鬱陶(うっとう)しいにも程がある…。」


 言い終わるが早いか、シオンはバッと向きを変え足速に部屋の外へ歩き出す。真奈にはもう、去りゆく彼女を再び引き止める勇気は無かった…。


 真奈は、シオンの後ろ姿を呆然と眺め、想定の甘さを痛感した…!

 壊れてしまった友情が、時の流れの中で修復されている事を密かに期待していた自分が馬鹿に思えてくる。割れた皿は何年間安置しても元に戻ることは絶対にない。同様に、壊れた友情が自然に修復することなどあり得ないことくらい、自分でも分かっていたはず…。

 それでも、理屈は分かっていても…、それに目を向けたくは無かったのだ…。


 シオンが見えなくなった後、巴心は、顔に影を落とした真奈に声を掛ける。


 「真奈…。あのシオンって人、さっき『昔の友達』だって…。」


 「うん、そう…。言葉通り『昔の』友達。 今は…、友達じゃないんだ。」


 「…何かあったの?」


 巴心は、真奈とシオンの関係が気になり問う。 だが、次に発せられた真奈の一言はあまりにあっけないものだった。


 「それがさ…、よくわかんなくて…。」


 「えっ…?」


 真奈は無理やりにでも笑顔を作った。必要以上に心配をかけたくないために。


 「何があったのかわかんないんだ…。 突然、シオンが『友達じゃない』って言って来て、一言も口を聞いてくれなくなって…、それ以来、会うのが怖くなって、今まで一度も会ってなかったんだ。 だから今日、ライブでシオンの姿を久しぶりに見たとき、どうしても、もう一度話をして確かめたくなった…。 なんでアタシのコト嫌いになったのか…。」

 


 「…何が『わかんない』ッスか…!」



 突如…、ボソリと呟き声。それを発したのはバンダナで左目を隠した男子、ラブアワーハンズの『サトル』だった。小さいながらも鋭さ…、そして苛立ちを秘めた声に、皆の視線が集まる。


 「アナタ巫山戯(ふざけ)てるんスか…?シオンさんがあんなにアナタのことを嫌ってて…、当のアナタが何も心当たりが無いなんて、『わからない』なんて、よく言えるッスね…。 自分の言ってること、おかしいと思わないんスか…?」


 サトルの言葉に、真奈の神経が僅かに逆立つ。


 「何? アンタには関係ないんだけど?」


 「有るッスよ。シオンさんは俺たちのチームメンバーなんスから。 そもそも関係無いのはアナタの方じゃないッスか? アナタとシオンさんは仲間でも友達でも何でもない。」


 「だから、『昔の』友達だッツってんじゃん…!」


 「昔は友達だったというのもアナタの思い込みじゃないッスか? チーム組んで沢山練習積んできた俺達にも打ち解けてないシオンさんが、アナタみたいな人に心を開くハズがないッス。」


 真奈の言葉の全てを(ことごと)く否定するサトル。敵対心を見せる彼の言動に、真奈はさらに苛立ちを募らせる。


 「アンタこそ、今のシオンしか知らないクセに、昔のことまで勝手に決めつけないでくれる?」


 そして、真奈の苛立ちはサトルの苛立ちも更に強める。 若干冷静さを失ったショウは声を荒げる。


 「嘘臭いんスよ、アナタの言ってること全部! そもそも…


 「まあまあ待て待て…! こんな所で口論をしてどうする。」


 突如、サトルの言葉を遮るショウ。 彼の一声で、2人の口論が遮断。 サトルは真奈から目を逸らし小さく鼻を鳴らすと、再び鋭い眼差しを向けた。


 「とにかく、アナタ達は直ぐに帰って下さい。 大した用もなくここに居られちゃ邪魔なんスよ!」


 その言葉を捨て台詞に、サトルはツカツカと部屋を後にする。


 「サトル!」


 ショウの呼びかけにも反応を示すことなく、彼はその姿を消した。サトルの姿が見えなくなると、ショウは小さく溜息(ためいき)をつき、真奈の方を向く。


 「…悪い。 サトルには後で俺から言っておく。」


 「いいよ、アタシも喧嘩腰になっちゃったから…。」


 互いに、済まなそうに声を掛け合うショウと真奈。 そのとき、巴心が真奈に近づき、そっと(ささや)く。


 「真奈…。そろそろおいとまさせてもらったほうが良いんじゃないかな? やっぱり、あんまり長く此処にいると悪いと思うし。」


 「うん、確かにそうかもね…。」


 一瞬間を開けた後、真奈はゆっくりと、そう答えた。


 「ショウ、アタシ等そろそろ帰るわ。 何か悪いね…、場の雰囲気悪くしちゃって…。」


 「まあ、気にするな。」


 「また、いつでもいらして下さい。」


 別れの言葉を返すショウとミソラ。 スーは、静かに椅子に座り、相変わらず瞑想を続けていた。そんな彼等を見ながら、真奈、巴心、彩祐佳、玲は部屋を後にする。



 ………………



 「………。」


 本校舎の最上階の、屋上へと続く階段に彼女はいた。灰色の冷たいコンクリートの階段に腰を降ろし、視線は何を見るともなく斜め下。

 校舎の屋上に出るための扉にはいつも鍵がかかっており、生徒は特別な要件がない限り屋上へと出ることはできない。その為、これは誰も登ることがない不要の階段なのだ。そして、その階段の、踊り場を挟んだ屋上に近い方の階段は、踊り場で階段の向きが逆転するため廊下側から位置的に視認できない空間なのである。長時間座っていると尻が痛くなるのと冬には冷えるのが欠点だが、夏は涼しく、誰の視界にも入らず誰とも接触することのない『屋上への階段』は、彼女のお気に入りスポットの一つであった。


 不意に階下より近づく階段を登る足音。この日は休日。学園内にいるのは、一部の教師、用務員、ライブに参加している軽音部員、そして観客くらいのもの。シオンには足音の主が誰なのか検討が付いた。


 「やっぱりここッスか。」


 ――やっぱりコイツか…。


 シオンの目下の踊り場に現れたのはサトル。彼は以前、興味本位で屋上に上がろうとした際、この場所で偶然シオンと鉢合わせになったことがあった。そのため彼だけは、シオンが居なくなったときには大抵この場所に居る事を知っているのだ。


 ――また別の『誰もいない場所』探そうかな・・・。


 そんな事を考えながら僅かに目を細め、サトルと目が合わないように視線を逸らすシオン。その様子を見れば、彼女の機嫌がよろしくない事は推し量れるが、サトルは、思い切って、やや控えめな声で会話を試みた。


 「いったい何があったんスか?あの人と…。」


 声は控えめだが質問内容は単刀直入、第一声としてはあまりにもストレート。無駄口や会話誘導などを彼は好まなかった。


 「何? どうすんの、ソレ事聞いて。」


 サトルはシオンの居る位置までゆっくりと階段を上がってゆく。


 「俺、あんなに怒ったシオンさん見るの初めてだったッスから。 だから…」

挿絵(By みてみん)

 「別に怒ったわけじゃ、っていうか変に詮索しないで。どうせ、単なる好奇心と求楽心(きゅうらくしん)でしょ、動機は…。  …そういうの、趣味悪い。」


 「そんな、俺ッ… 俺は…。」


 サトルは、言葉が続かず声を途切れさせてしまう。


 ――表情や声には現れていないけど、きっと俺の事を鬱陶しく思ってるんだろうな。


 …と、サトルは考えた。しかし、ここまで踏み込んだ以上引き下がるべきではないと思い、シオンが座っているのと同じ段まで階段を上がり、隣に腰を降ろす。


 ――さて、これからどうやって会話を進めようか…? 隣りに座ったサトルは、微妙に重量を増した空気を感じながら、急いで次の言葉を検索する。


 …が、サトルが座り込んだのとほぼ同時、シオンは次の言葉を待たずしてスクと立ち上がった。サトルは慌ててシオンを見上げる。


 「…シオンさん?」


 サトルの声に振り返ることなく階段を降りていくシオン。


 「速く戻らないと…。もう皆、機材の片付け始めてる頃だから。」


 「…ああ、はい。 ですよねー。」


 確かにもう片付けが始まってる頃だろう。自分たちだけサボるわけには行かず、サトルは立ち上がり、シオンの後を追うように階段を降りていった。

『激戦炸裂ホビースピリット!!』

 次話も見てくれよな!!


 ホビーファイト… スピリット・・・

 クラーーーーーッシュ!!!!

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