長い1日の始まり それは音駆けし中から…
『激戦炸裂ホビースピリット!!』はこの下スグ!!
サイトはそのままだ!!
※この物語はフィクションであり、登場する人物、地名、団体名などはすべて架空のものです。
玩具などで叩く、投げつけるなどの行為は大変危険です。
玩具の使用は用法を守り、安全な遊びを心がけましょう。
やるべきことは分かっていた… あの時にやるべきことは確かに分かっていた…
でも、それに気付かないフリをしていた…
何も分からない、何も知らないもう一人の自分を作り上げることによって…
ごく自然に、頭の中からやるべきことを忘れさせていた…
誰も傷つけたくなくて… 何よりあなたを傷つけたくなくて…
時の流れに身を任せ続けていた…
………………
ホビィーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
ファーーーーーーーーーーーーイト!!!!!
ホビーファイトォ! それは玩具を用いて行われる異種玩具間対戦遊技であァる!!
玩具を手に持ちィィィイ…
…え!? 何だってェ!? もうその解説は何度も聞いたから速くストーリーを進めろっていうのかい!? そういうせっかちボイスを受けちゃグズグズモチモチしてられないよな!!
ならば、今こそ今スグに! ホビーファイトをいざ見せん!!
いつものアレを!! ボクと一緒に叫び上げよう!!
『ホビーファイトォオ!!!!』
『スピリットォオオ!!!!』
『クラーーーーーーーッシュ!!!!』
音と言う名の圧倒的な空気の振動がその空間を支配していた…。
空気だけでなく、自分の周りの物体全てが振動しているのかと思えてくるような迫力で、音は三次元的に拡散と膨張を繰り返す。そしてその音は、リズムと規則性を加味されることにより音楽へと化学変化し、周囲一帯の人の心を捉え得る存在となる。
ここは、某学園の体育館…
舞台上に存するは、ギター、ベース、ドラム、キーボード、アンプ等の演奏用の楽器や機材、そしてそれらを操り音楽を奏でる演奏者達。
そう、まさに今現在この体育館内は、音楽の演奏会…、『ライヴ』の会場と化しているのだ…!
体育館内には、音楽と言う名の特別な音に耳を傾け心で音楽と一体化する50~60人ほどの観客達。
奏者…、音楽…、そして観客という3要素が醸しだす得も言われぬ雰囲気は芸術的であると言える…!
「ああ゛~。 なんか耳痛くなってくるな、これは…。」
観客の中、力ない声を発する者が一人、彼女の名は水乃真奈。
頭髪は、長い髪を後部で二束に分けたツインテール。眼と眉はやや釣り気味。
水色のタンクトップの上から、白のタンクトップを重ね着し、デニム素材の青いスカートを履き、それに巻き付けるは黒きガンベルト。
そのベルトには左右2つづつ計4つのホルダーが備えられており、黄色のハンドガンの様なモノが2丁、そして白と水色と青に塗り分けられた曲線的フォルムを持つライフルの様なモノが2丁、収納されていた。
そして、頭部に巻かれたバンダナは、目覚めを促すが如き深紅と純白の2枚の布を、前方から見て「赤1:白2」ほどの割合でツギハギした様な独特のデザインであり、彼女のトレードマークたらんとしていた。
「演奏は上手いんだけどさぁ~、流石に音デカすぎだっつーの…。」
既に何曲もの曲が演奏され、長時間に渡って大音量の空間に晒されたことにより、彼女の耳は参ってしまった様である。一般的にライブというのは音量が大きく、長時間の視聴は慣れていない者にとっては耳奥を圧迫されるような苦痛を感じることがある。
「うーん、この学園の軽音部の人達には悪いけど、今やってるチームの演奏が終わったら抜けさせてもらおっか…?」
そう提案したのは、大人しそうな目付きをした真奈の親友、戸松巴心。
頭髪はショートカットで、頭頂部では数束の髪を赤い紐で纏めてある。灰色の長袖のカットソーの上から、肩部に穴が開いた桃色のロングワンピースを着、腰には白い帯を巻いていた。
彼女もまた、ライブの音量には慣れていないようである。
途中退場しようかと話し始めた真奈と巴心。 それに対し、慌てて介入する者が一人。
「チョイ待てって! この次なんだよ、この次が、俺のダチの『サトル』って奴がやってるチーム『ラブアワーハンズ』なんだって!せめてそのチームの曲だけは聞いてってくれよ、マジで!」
やや早口でそう言って2人を引き止めようとするは、日に焼けた肌の上に太いツリ眉毛とやや細い眼を持ち、表情豊かそうな大きな口を広げた男子であった。
白シャツの上から黒いフード付きジャンパー、そして黒いズボンに黒いスニーカーと、全身はクールに黒で纏まっている。
そして、この男子のトレードマークたるは、海洋生物『エイ』を、頭を下、尾を上にして真上から見たようなシルエットのネックレス、そして頭部のカチューシャであった。
どちらも黒き衣服によく映える、鋭利な銀の光沢を放っている。
頭髪は、銀のカチューシャに押さえつけられたオールバック。だが、カチューシャの左右からは、髪が耳の付近に垂れ下がると同時に、二束の髪が後方に向かい斜め上にピンと立ち上がっている。それは、2対のアンテナか、はたまた風を切り空力を生み出すエアロウィングを彷彿とさせる…、かもしれない。
その黒尽くめの男子の名は針嶌玲。彼こそ、このライブへの参加を企画した本人である。
「頼むよ、あとチョットだからさ。」
「ん~。 まあアンタがそこまで言うなら別にいいけど…。」
玲の説得に、了承の意思を示した真奈。耳は痛いが演奏の質は中々のモノ。また、玲が必死に説得する様子を見れば、彼の言うチーム『ラブアワーハンズ』の演奏も少なからず期待できるというものである。
ふと真奈は、隣にいる無駄に分厚い帽子を被った、ステージを食い入るように見つめる女子に声を掛ける。
「…にしても彩祐佳。アンタ熱心だね…。アンタってこういう趣味あったっけ?」
声を掛けた相手は、虹衣雫彩祐佳、巴心と同じく真奈の友人の一人である。
セミロングの髪の上には、白と灰のグラデーションを映す弾力のある分厚い帽子をかけ、紺のシーンズを履いている。前髪を左右に分ける左右2つづつの分厚いヘアピンが目を引き、目を覆う眼鏡もこれまた分厚いフレームであった。眼鏡のレンズはほぼ透明だが、遮光のためか微妙に白く着色されており瞳の色を隠している。来ているシャツは元々白地だったモノを彼女自身が『食用の色素』で染めたのだそうだが、色が落ちまくり大部分が白地に戻っている…。そしてなんと、彼女の服は全て肌に優しい天然素材、それも食べれるくらいの天然素材だという。このような謎の拘りを持っているのは、彼女の実家が洋菓子店だからだろうか?
その彼女が呟いた…。
「ステージを照らしてる多色の照明が付いたり消えたりすることによって生まれる光の変化…。 それって、楽器や曲調に適合するように事前に細かく計算されてるのかな? どうしてこの照明なのか? どうしてアンプはこの音量なのか? どうして此処で配られる飲み物の種類がウーロン茶とオレンジジュースだけに限定されているのか? それらは全部『理由』があって、聴覚と視覚に加え味覚と嗅覚も関係する総合的な人間工学のうえに成り立ってるハズ。 真奈はどう思う?」
彩祐佳の視点は、『理由』という杭によってステージに縛り付けられている。やや理論派で何事ににも『理由』を求める彼女は、『理由のない事象』を認めようとはしないタチなのだ。
「『どう思う?』って言われても…。つーか、アンタ難しいことばっかり考えてて疲れない?」
彩祐佳の疑問に呆れ気味になった真奈は、再びステージに目をやる。
ここで、たった今まで演奏していたチームが全ての演奏を終え、チームの各メンバーが各々簡単な会話や挨拶などを始めた。いわいるMCだ。このMCが終わればチームが交代し、玲がリスペクトする『ラブアワーハンズ』が出てくる。
MCのあいだ、真奈、巴心はしばし大音量で消耗した耳を休め、玲は今か今かとラブアワーハンズの登場を待ち、彩祐佳は機材の構造、体育館の床の臭い、オレンジジュースの成分表示に注目していた。
各々の心境でライブを視聴する4人。
この日、4人は休日を利用し、他学園の軽音部のライブに足を運んでいたのだ。
事の始まりは3日ほど前に遡る…
………………
時刻は正午過ぎで昼休憩。学園のいつもの教室では、生徒達が各々弁当やパン等を口へ運んでいた。教室内には生徒たちの雑談が響き渡り、弁当のご飯の匂いやミートボールに掛かったソースの匂い、そして、惣菜パンの具の匂いや菓子パンの甘い香りなどが合わさり混じり合った、心地良い匂いなのか不快な匂いなのか判断が難しいが食欲を唆られるカオスな混合臭が立ち込めていた。
その中で、向かい合うように三角形に椅子に座り昼食を食す、水乃真奈、戸松巴心、虹都彩祐佳。この3人は仲が良く、昼休憩時は3人で集まって雑談をしながら昼食を食べるのが常である。
雑談の話題が一段落し、3人が同時に咀嚼を始めたそのとき、会話が途切れた瞬間を狙ったかの如く、1人の男子生徒が突然3人の輪に割って入ってきた。
「よ~う♪ チョイ邪魔すンぜ?」
近場の椅子を引きずり移動させ、真奈と巴心の間に座ったのは、手にタマゴサンドと小さな牛乳パックを持った針嶌玲だった。真奈は口に入れたご飯を飲み込み、言葉を返す。
「ん、玲? どうしたの?」
玲は、何かを伺い期待するような目付きで3人に口を開く。
「真奈、巴心、彩祐佳、お前らさあ。 今週の日曜…、空いてっか?」
その問い掛けに最初に答えるは水乃真奈。
「うん、空いてるけど?」
続いて戸松巴心、虹都彩祐佳も…
「私も、今週は特に予定ないよ。」
「『用事がある』って言わなきゃいけない理由はない。」
と返事を返す。
3人の返事を聞いた針嶌玲は「ウッシ!」と小さくガッツポーズを取り、心情を表すかのように声のトーンを上げ話を続ける。
「お前等、『ライブ』に行く気ねぇ?」
「『ライブ』?」
突然の『ライブ』という言葉にキョトンとし、思わず単語をそのまま返す真奈。
「今週の日曜な、俺の知り合いのショウって奴が通ってる学園で、軽音部がライブやんだよ。で、そのショウは軽音部でバンド組んでて、今回のライブに出るんだ。…で、ソイツに、『ヒマだったらチケット配って欲しい』って頼まれてさ。」
そこまで話し終えると、玲は胸ポケットから、そのライブのチケットと思わしき紙を3枚取り出した。
――ああ、なるほど。
チケットを見た真奈は、玲の言わんとする事…、つまり玲は、『知り合いの所属する軽音部のライブを視聴する客を集めるべく自分たちに声を掛けた』ということを察する。
「それでアタシ達にライブを見に来てほしい… と。」
「その通り! 来てくれるか? 来てくれるよな? 予定空いてんだったら、レッツのちにゴーの一択だろ?」
「うーん…、 アタシ達の他には誰が来んの?」
いきなりのライブ参加の意思表明を求められた真奈は、答えが浮かばず別の話題を振った。
「いや~、まだ誰も誘えてねぇんだよ。」
玲は頭を掻き、苦笑い。
「琉樹とかは、まだ誘ってないんだ?」
『琉樹とか』、その言葉は、火嵐琉樹、豊武良囲、藤・帝冠・空珠の3人組を意味する。
「ああ、琉樹、良囲、空珠の3人はさっき誘ってみたけど、外せねぇ予定があるから無理だってよ。何か、『マキ兄弟がどうたらこうたら』って言ってたかなぁ。」
「『どうたらこうたら』って…。」
会話内容をほとんど覚えていない玲に呆れる真奈。 玲は前かがみになり3人に詰め寄るように問いかける。
「それよりさ。 行くのか? 行かねぇのか?」
ここで巴心が口を開く。
「私は…、真奈が行くなら一緒に行ってみようかな。」
つまり、真奈に判断を任せるという意味合いだ。大人しく周りに流されがちな、ある意味巴心らしい回答。
続いて意思表明するは彩祐佳。
「断る理由はないかな。それに、『どうして琉樹君たちではなく、私達を誘うのか?』という疑問に対する理由も滞りなく答えられている。それは誘いに乗っていい理由になると思う。」
『理由』さえあれば納得する彩祐佳らしい回答だ。
2人の回答を聞き、真奈は再び思案を巡らす。
「うーん。 …まっ、その日は暇だし、巴心と彩祐佳が来てくれるんだったら行こうかな、ライブ。」
――玲の言う学園のライブの視聴が楽しいものかどうかは実際に行かなければ分かりようがない。しかし、友人が一緒に来るなら、たとえ、ライブの視聴自体を楽しめなかったとしても、彼等と共有する時間を楽しめばいい。
真奈は、そう考えた。
こうして真奈、巴心、彩祐佳の3人は揃って肯定の意思を示し、玲からチケットを受け取ったのだった…。
『激戦炸裂ホビースピリット!!』
次話も見てくれよな!!
ホビーファイト… スピリット・・・
クラーーーーーッシュ!!!!




