第37話 満月姉妹withゲーム ~キャラゲー・レースゲー編~
「さぁ、気を取り直して次行こ次!」
さっきのゲームで負けて悔しいピコリは、ガバエイムの誹りから逃れるため、話題を変える。
「次とは? 他にどんなゲームがあるのかえ?」
「えーっと、ソフトは四本あって、一つ目がさっきのFPSでしょ、他には、『騎人バスターアロウズ……」
「なっ、騎人バスターだとっ?」
ここで一つ解説を入れるとしよう。
騎人バスターとは、毎週土曜夜七時に放送されている特撮ヒーロードラマシリーズで、騎人バスターアロウズはその三十七作目である。
コーリンは劇場版を観に行く程のファンである。故にこの食いつきっぷりなのだ。
「よし、それをやろうぜそれを! ほら、入れろピコリ!」
「テンション高いな〜、も〜、はいはい、今入れます」
コーリンのハイテンションっぷりに若干引きながら、ピコリは3Dアクションゲーム『騎人バスターアロウズ バトルロイヤル』を起動する。
そのスタート画面は、原作が戦国時代をモチーフにしているためか和風で、同作の雰囲気に合っていた。
ただ、一枚絵が表記されるだけという、全体的に安っぽいデザインでもあった。
マジナは騎人バスターの決めポーズの集合画像が印刷されたパッケージを見ながら
「コーリン殿、これはどんなゲームかわかっているか?」
「知らん。けどどうせ戦うゲームだろ!?」
「逆に、このパッケージで戦わないゲームって予測できるのかい?」
コーリンはウッキウキでコントローラーを手にし、早速一人対戦モードを選ぶ。
十数人の顔写真が貼られたキャラ選択画面が表示される。
ここでコーリンは、眉をひそめる。
「ん、どうしたの? コーリン姉さん?」
「この写真『騎人バスターアロウズ サンシイッタイフォーム』だよな」
「いや、ウチそれに興味ないから、まるでわかんないんだけど」
「ここに普通のアロウズがいるんだよ。なのにどうして、その最終形態のサンシイッタイフォームが分離してるのかなーって……」
「さぁ? 劇中でもそんな風なことあったんじゃないの?」
「大人の事情だよ」
と、ユノスは告げる。
「大人の事情だぁ? 何だそれ?」
「多分、このゲームを作り終わった時期と、サンシイッタイフォームが登場した時期がほぼ同じだから、サンシイッタイフォームだけアップデートで後付けしたんだと思うよ」
「なるほど、わけわからんが何となくわかった。まぁいいか、ドラマでも最初っからサンシイッタイに変身してたことあるしよ」
コーリンは自キャラをアロウズサンシイッタイにし、相手は適当にランダムにし、バトルスタートする。
本作は四人でバトルロイヤルするタイプのゲームであり、コーリンは他三人を倒そうと、アロウズをぎこちなく操作する。
「おお、画がさっきの銃のヤツより派手で面白そうなのじゃ! コーリン、次はアタシにもやらせるのじゃ!」
「……」
「ルシェヌ殿、今コーリン殿は熱中しているのだ。だから、あまり声をかけない方がいいと思うぞ」
違う、コーリンは絶句しているのだ……
「アロウズはこんな乱暴に剣を振り回さねぇし、ミーツロックの蹴りは回転するし、ブラッグドの声も何か違うぞ……?」
……キャラゲー特有の問題点、『原作再現不足』に。
別にコーリンは、重度の騎人バスターファンというとそうでもないが、かといって些細な詰めの甘さを見逃せるほど、馬鹿ではない。
コーリンはこのゲームの粗を、プレイすればするほど目の当たりにし、同時に不満を溜めていった。
ついでに、ゲーム内において、必殺技ゲージも溜まった。
(流石に、必殺技ぐらいはまともになってるだろう、な……?)
『食らえー!』
ゲーム内にて、アロウズは極太ビームを放射する。なお、原作においてアロウズサンシイッタイフォームの必殺技は、剣による刺突である。
これにより敵一体は無事やっつけられたが、アロウズが必殺技を撃ち終えた直後、他二人がアロウズを囲んで叩き、そしてHPを削り切った。
「……ピコリ、次のゲームを」
「え、もう終わり?」
「終わってんのはこのゲームの方だ! さぁ、早くこいつをゲーム機から抜き出せ! さもなくばゲーム機が腐る!」
「はい、ただ今!」
目を三角にするコーリンの前で、ピコリは大慌てで騎人バスターのソフトを取り出す。
「コーリン殿、凄まじい怒り様だな」
「原作無視って怖いんだよ、サバキお姉ちゃん」
「えーっと、じゃあ次は、これ! 『イセカイカート』!」
イセカイカート――様々なキャラクターを、様々な車に乗せ、様々なコースで、様々な妨害要素を挟みながらレースをするゲームである。
「これは六人でも出来るから、全員で競争しようよ」
「競争なのじゃ? なら、このルシェヌが絶対に勝ってやるのじゃ!」
「全員で遊べる、か。ありがたい、見ているだけなのは少々退屈であるからな。さっきのゲームは特にそうだったし」
「……サバキ、お前にしては気の利いたこと言うじゃねえか」
六人はそれぞれコントローラーを握り、キャラクターと車をチョイスする。
「ルールは『八コースやって、各コースの順位でポイントがつく』奴ね。一番ポイントをためた人が勝ちね!」
「「「「「了解!」」」」」
『スリー、ツー、ワン、GO!』
そして、手に汗握るレースが開幕する。
真っ先に頭一つ抜きん出て、暫定首位を得たのはピコリであった。
「おいおいピコリ、君先走りがえぐいよ。何をきめたんだい?」
「さぁ? 性能差じゃない?」
と、ピコリはシラを切る。
スタートダッシュというテクニックを言わないという、勝ちたい一心の意地悪である。
だが、その程度でぶっちぎれるほど、このゲームは甘くない。
「いだっ!?」
背後からボーリング玉を転がされ、ピコリのキャラは怯む。その隙にサバキのキャラが追い越していく。
「見事命中したか」
そのボーリング玉は、サバキがアイテム補給所で得た物だ。
「ねぇ、サバキ姉さん! 人の車にボーリング玉ぶつけるとか、犯罪だよ! そんなことしていいの!?」
「『ルール無用のレースバトル』と、このパッケージに書かれてあるが、何が問題なんだ?」
「……騙されなかったかー」
数分後、レースは中盤に差し掛かり、サバキが一位、ピコリが二位、
「おいルシェヌ! またお前踏むと痛いブロック置いたな!」
「分かれ道だね。どっちが早かったかな?」
「また石鹸だ。今欲しいのは前を倒すのに使うボーリング玉なのに……」
他四人はその二人の後ろで、てんやわんやしていた。
「このままだとまずいね。場合によっては私がビリになってしまう……ん?」
マジナは気づいた。道路外の所々に、意味深なジャンプ台がある事を。
「ははん、そうか、ここがソー……石鹸の使い所か!」
マジナはそのジャンプ台を向いて、石鹸を使う。マジナは勢いよく滑り、ジャンプ台よりジャンプする。
俗に言う、ショートカットだ。
「うわっ、マジナ姉さんがショートカットに気づいた!?」
「なっ? 姑息な真似を……だが自分の一位は譲れん、それもマジナには特になぁ!」
と、気勢を張るサバキではあるが、実際の所は、かなり不安がっている。
(ピコリとマジナ、両者と自分の間隔は車体一台分でかなり狭く、ゴールが近い。ここで局面をひっくり返されるとまずい。
……もう少しでアイテム補給所がある。それで軽く脅しをかければ、勝利は盤石となろうか)
サバキはアイテム補給所を通り過ぎ、ダイナマイトを得る。
「よし、これでもくら……!?」
サバキがダイナマイトを道路に転がそうとした刹那、そこへサッカーボールが転がり、それと激突する。
「おっ、オレのサッカーボールだ。サッカーボールはそこまで飛ぶのか。なるほど、いいこと知ったぜ」
「こ、コーリ……!」
「うわっ、まずい、起爆する!」
「ちょっ、ピコリ、車を止める方ほ……」
衝撃が加わったダイナマイトは鮮やかに炸裂。所有者であるサバキと、近くにいたピコリとマジナを爆炎に飲み込んだ。
その隙に、一にユノス、二にルシェヌ、三にコーリンがゴールする。
「テクニックがわかってよかったかな」
「ふん、二位か、まぁ良い、後々盛り返してやるのじゃ!」
「おーい、大丈夫かー? マジナ、サバキ、ピコリ?」
「「「……うん」」」と、三人は三人を、心底恨めしく思いつつ、遅れて不格好にゴールした。
それから、六人は大真面目に一位を目指し、熾烈なレースを続けた。道中、ピコリ以外の五人もコツを徐々に掴んでいき、実力差が均一化していく。
そして、溜まったポイントがほぼ同等になったところで、八コース目――すなわち、最終レースが始まった。
最初に一位に落ち着いたのは、サバキであった。諸々テクニックを使うのはもちろん、両手に装着された断退警察のマシンを用い、最適ルートを計算しているためだ。
「おっと、その一位は、さっと頂かせてもらうよ、サバキ」
すぐ後を、マジナが、サバキとほぼほぼ同じルートを通って追いかける。
コントローラーを操るマジナの脇には、彼女の黒竜『lrrynCrash』がいて、アドバイスを送っている。
もはやみんな、『ルール無用』の意味を拡大解釈してしまっているのだ。
「生憎、私も計算はできるんけぇ」
「ふっ、だが自分は勝つ!」
マジナの後ろでは、ユノスとピコリが三位を取り合っていた。どちらもアイテム運とテクニックが同等のための結果である。
そしてその後ろではコーリン、大きく間を開けてルシェヌがいた。
前者は、やたらと入り組んでいるかつ、落下ゾーンが多い、カーブテクニックがとやかく問われるこのコースに苦戦している。
後者はコースの悪路っぷりに加えて、他五人が置いたトラップアイテムに散々やられているのだ。
「あー、ユノス! 今貴様のキャラがガッツポーズしたのじゃ! 今のも貴様のワナじゃなー!?」
「知らない。今集中してるから黙って」
「むむむ、黙るのはそっちの方じゃー! 食らえ、『重き地のガバナンス』!」
ルシェヌは、コントローラーを握るユノスの手に重力をかけ、まともな操作を出来ないようにする。
「おいルシェヌ! お前ゲーム如きに魔法つかうのかよ!」
「うるさぁい! それが嫌なら全員止まってアタシに一位を譲れなのじゃ!」
と、ルシェヌがコーリンへ言っている合間、ユノスのベレー帽からアザレアが出て、ユノスからコントローラーを拝借。主に代わって操作する。
「おい虫けら! 貴様どの面下げて代わりしてんのじゃ!」
「ですが私は、マスターの一位獲得をなさなければならないのです!」
「ぐぬぬ、ならば貴様にも魔法……」
「おっと、手が滑った」
と、いいつつサバキは、ルシェヌに、彼女が魔法が使えなくなる程度の少量のルマをかける。
「ああー、力が抜けるのじゃぁ……」
「……さぁマジナ、これにて邪魔者はいなくなった。いよいよ決戦、と、しようじゃないか」
「OK! けど、どうせ最後に一位を頂くのは、この私だろうけどね!」
「いーや、オレだぁ!」
と、サバキとマジナの背後に接近してきたコーリンが言う。そしてコーリンのキャラは、何故かキラキラと輝いていた。
「くっそー、コーリン姉さんが、まさかこの場で『無敵化&速度アップ』のレアアイテムを引くとは……本当にラッキーすぎるでしょ……」
「申し訳ありませんマスター、コーリン様にやられてしまいました……」
コーリンにはね飛ばされてしまったピコリとアザレアは、残念そうに言った。
「わりいなピコリ、ユノス……オレはさっきの騎人バスターのゲームのせいで、心底腹が立ってるんだ。だからこっちでとことん発散させて貰う!
マジナ、サバキ、お前らもどけ! さもなくばピコリとユノス同様、タンポポの綿毛みてーにはね飛ばしてやらぁ!」
マジナとサバキは、必然的に、同時に思った、このままではまずい。無敵化したコーリンに跳ね飛ばされる。と
直後、二人は思い出した。
この先にあるゴール手前のエリアには、特に距離や難易度の差のない分かれ道があることを。
(もし自分たち二人が別れて進んで……)
(コーリンが都合のいいどっちかに行ってもらえれば……)
((あちらはコーリンにやられて、こちらは無事一位になれる!))
例の分かれ道にて、マジナは右へ、サバキは左へ別れた。謎のフィーリングである。
(よし、これでコーリンがマジナの道に行けば、自分が勝てる!)
(サバキがやられればそれでいい! さぁ姉御、どっちの道に行くんだい!?)
「しまっ、ここ分かれ道だった! やべぇ、ハンドル切らねぇと!」
「「そもそも!?」」
コーリンは慌てて自キャラを曲げる。しかし、反応に遅れたのと、どっちに行こうか迷った結果、壁に一直線で突っ込む。
すると、壁が壊れ、ジャンプ台が姿を出す。コーリンはそのままの勢いでそれに乗り、大ジャンプからの一位ゴールを果たした。
「そこの壁、一定のスピードで行くと壊れるんだよ……有名な隠しショートカットなんだよね、これ」
「ははは、そうかピコリ! なら、今のはとことんツイてたなオレ! さっきの騎人バスターとでプラマイゼロって感じだな!」
「「……」」
マジナとサバキは、ただただポカーンとするばかりであった。
「しめしめ、今のうちにアタシが、せめての二位を……」
「あ、それはさせないよ」
「然り、少なくとも三位は頂く」
かくて、八コースを回した結果、総合優勝はコーリンとなり、ブービーはルシェヌとなった。
なお、サバキとマジナの総合順位は、まさかの同率二位だった。
「わーすごい。仲いいねー、ダブル姉さん」
「「……」」
【完】




