第7話 辺境伯邸へレッツゴー
今日も放課後はクリスと2人でカフェテリアでお茶である。運動した後には糖分が欲しくなる。私は珍しく、角砂糖を1つ紅茶の中に入れた。ちなみにクリスはいつも通り5個くらいは入れている。これ、底に砂糖がたまらないのかな。
「ノアくんはやっぱり強いね。なんか動きに華があるっていうか」
「まぁ、昔から鍛えてるから。そういうクリスだって、魔法も勉強もすごいじゃん。もう、この学院卒業しちゃっていいんじゃないの?」
ノアくんは大げさだよ、クリスは肩をすくめてそう言った。
しかし、実際には災厄級の魔法を使えるのならば卒業どころか宮廷魔導士に今から就職できるのではないだろうか。
「そういえば、なんで騎士団に入らないの? 先生にも勝てたんだから役に立たないってわけではないんじゃない?」
「なんというか、したいこととは違うっていうのか。私が守りたいのは国民全員とかそういうことじゃなくて、大事な人だけを守れたらいいっていうか」
「ふーん、じゃあ俺のことも守ってくれる?」
クリスに肘をついて上目遣いで見上げられ、私の心臓が一瞬飛び跳ねた。ちょっと格好いいことを言ってみようとしたのだが、言葉選びを間違えたらしい。そういえば目の前にいるのは婚約者(候補)だった。心臓に悪いから本当にやめて。
えーと、と目を泳がせているとクリスはくすくす笑って話題を変えた。からかっているだけ……だったのか?
「あ、今週末に王都の辺境伯邸で俺たちの婚約についての話をするって。今日、そっちの家にも手紙が届いてるんじゃないかな」
話の進む速度に私はぞっとした。昨日会ったばかりですよね、もう親を交えて話すんですか。
あと、クリスは本当にいいのかがずっと心に引っかかったままだ。ちょっと前まで同性と思っていた昔の友達と婚約とか。私はあまり問題がないし(そもそも私が悪かった節もある)のだが、クリスは家も辺境伯だしもっと良い人がいるのではないだろうか。それとも、もしかして……クリス自身に何か問題があるのか。
じーっとクリスの顔を見つめていると、不思議そうな顔をされた。
「どうしたの? 口に何かついてる?」
「いや、なんでも。あ、髪にクッキーついてる」
「え、どこどこ!?」
それはちょっと違う気がする。
◇
今週はいつもより早く過ぎ、いつの間にか週末になってしまっていた。私は両親と共に馬車に乗り、王都のロベール辺境伯邸へと向かっていた。まぁ、うちも王都の近くにあるので辺境伯邸まで馬車で20分ほどなのだけれど。今日の私はいつもよりちょっと良さげなワンピースに身を包み、これまた良さげな髪飾りをつけている。さすがに楽観的なお父様とお母様も緊張しているのか、馬車の中はしんと静まり返っている。
ロベール辺境伯邸は想像していたよりもずっと大きかった。たぶん子爵邸の4倍いや5倍くらいあるんじゃないかという広さである。1軒家が建てられそうな広さの前にはには色とりどりのバラが咲き誇っていた。
門まで迎えに来てくれていた使用人さんとその庭を歩いて突っ切ったところに、これまた大きな扉があった。扉の向こうではたくさんの使用人さんに出迎えられる。
「ようこそ、お待ちしておりました!」
ここまで来て少し怖くなってきて冷や汗が流れ始めた。
「ご主人様とお坊ちゃまは応接室でお待ちになっています。お荷物お持ちいたしますね」
「え、あ、自分で持てます!」
「それでは示しがつきませんから」
苦笑いをされて私は荷物を持ってもらうことになった。あわあわしすぎて恥ずかしすぎる。




