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第4話 噂話

「まぁ、あちらの了承があるならいいんじゃないか? 相手が辺境伯の三男なんて、こちらの家からも願ったりかなったりなんだから」

「……うん」


 私は家に帰って夕食を食べながら、今日あったことを両親に話していた。もちろん私のアホ行動はすべてぼかして話した。反対されるかと思ったが、両親は意外にも婚約に楽観的だった。


「それにしても懐かしいわねぇ。そういえばあなたと同い年だったわ」


 お母様は遠い目をしながら、ワインに口をつけた。この人、毎日お酒飲んでない?


「お母様はクリスが男って知ってたの?」

「逆にあなたが知らなかったことが驚きだわ。まぁ昔はあの子も背が低かったし、間違えないことはないかもしれないけど」

「そっかぁ」


 私は本日何度目かわからない溜息をついた。


「あら、ノアはクリスくんとの婚約が嫌なの? 昔はあんなに仲良くしてたのに」


 もちろん、そんなわけではなくもない……というか、なんというか……。


「前に仲良くしてた時はどっちも同性の友達として見てたのに、急に婚約者とか結婚はなんというか……どうというか……」


 どう考えても、男と思っていた私のプロポーズ(もどき)を了承したのは成り行きだったような気しかしてならない。


「じゃあ、また辺境伯とも話をつけておくから」


 そこで無理やり話は打ち切られ、私は部屋に戻り、ベッドへともぐりこんだ。

 けど、私はすぐには眠れなかった。明日からのクリスとの関係、これからの人生。考えることが山ほどあったからだ。私はいつもよりは少し遅い時間まで目がさえて眠れなかった。



「ノアくん、おはよう」

「おはよ」


 次の日から、私の学院生活はクリスの挨拶と共に始まるようになった。今日はクリスは髪を下ろしていた。髪を下ろすと昔の面影がさらに濃くなり、私は隣にいるのが本当に昔会ったクリスだということを実感してしまう。


「今日は髪、結ばないの?」

「ちょっと寝坊しちゃって時間がなくて」

「そう」


 おそらく嘘だろう。クリスの家は辺境伯なので、うちよりもたくさんの使用人がいるはず。それでいて、寝坊したり髪を結べなかったりすることはないはずなのだ。ましてや、まだ遅刻の時間ではなく授業まで30分ほどある。本当に寝坊して髪を結んでもらう時間がないなら、こんな時間に学院には来ない。

昨日の失敗から、私は発言には気を付けるようになった。また適当なことをほざいていたら足をすくわれかねない。


 教室に着くと、まだ半分くらいしか席が埋まっていなかった。みんなクリスの横に座りたがるんだろうな。そう思いながらも私はいつもの席に座った。ここが一番寝ていても注意されにくい。クリスは結局、昨日と同じ席に腰かけた。あきらめ半分で授業の準備を始めたとき、クリスが黒いリボンを私に差し出した。


「ノアくん、髪結んでくれない? 三つ編みできないんだ」


 教室の空気が凍り付いた。それもそう、一生添い遂げると決めた人以外の髪を触ってはいけないというのがこの国、というかこの世界共通のルールなのである。


「え、ちょっとそれは……」

「駄目なの? 俺たち、婚約するのに」


 かなりの衝撃発言に教室中がざわつく。そもそも決まったことでもないのだが。

 私はほぼやけくそになって、ふわふわしたクリスの髪を三つ編みに編み始めた。ご丁寧に、その髪はきれいに梳かれていた。


「えええ! あのお2人、どのようなご関係なのでしょうね!? 昨日あったばかりですのに」

「ノアさんはみんなの貴公子ですし、クリス様もお姫様みたいですからお似合いですわ!」

「でもさぁ、ノアはともかくクリスってやつ、今まで婚約してないってどういうことなんだろうな。女にもモテそうな顔してんのに」


 クリスはそんな噂話が聞こえていないかのように、窓の外を飛ぶ蝶を目だけで追っていた。待って、さっきはどっちの髪を上に編んだっけ。


 私自身、三つ編みなどしたことがなかったので少し不格好な三つ編みになってしまった。ちょっと緩いところもあるが、今日1日は何とか持ちそうである。クリスは三つ編みを肩から前に持ってくると、うれしそうに顔をほころばせた。


「ありがとう」

「どういたしまして」


 これ以上会話が続きそうにないので、私は自分の席に戻って肩から力を抜いた。その時。


「ノアさん、クリス様とはどのようなご関係ですの!?」

「いつ仲良くなりましたの?」

「もしかしてクリス様が引っ越してこられたのって、ノアさんに会うためだとか?」


 私たちは同じクラスの令嬢たちに質問攻めにあった。

 私はクリスがこの学校に来たのは偶然であること、私が昔クリスと遊んだことがあったこと、昨日カフェテラスで意気投合したことなどを話した(もちろん鎌をかけられたぽんこつのことは死んでも言わない)。しかし、かなり噂は回っていたようである。


「あら。では昨日、カフェテラスでプロポーズしていた男子生徒って……」


 その瞬間、昨日のぐだぐだプロポーズを思い出したクリスが盛大に吹き出す声が聞こえた。あと、男子生徒って私じゃない? 制服のスカートを履いてるのに間違えるのは本当にやめてほしい。

 まぁ、クリスも他のクラスメイトとたくさん話して仲良くなれたようなので、悪い気はしなかった。

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