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第3話 「結婚しよう」

「あー、まぁクリスって中性的だったよね」

「ノアくんこそ、前にあったときは俺より背が高かったから。あと眼鏡してたし」


 お互いに謎のフォローをする。結局、他の人もクリスと話したりして、クリスとちゃんと話せたのは放課後だった。カフェテラスで2人で紅茶をすすりながら、昔のことも少しずつ話し始めた。結局は、どちらも中性的だった自分たちの名前が悪いという結論に至った。

 曰くクリスは私が「ノアくん」ではないかと少し勘づいていたらしいが、確信が持てなかったらしい。眼鏡が分かりにくさの大きな原因だったようだ。私は全く気付いていなかったとは口が裂けても言えないため、外した眼鏡と一緒に墓場まで持っていく所存だ。


「いや、でもクリスはすごいね、頭も良いし」

「そっちも去年と一昨年の武術大会で優勝したって聞いたけど」

「あはは、知ってたんだ」

「女子みんな言ってたよ、ノアくんはかっこいいって」


 にこにこと楽しそうに話す様子は前と変わらない。私は今日何枚目かわからないクッキーを口に入れ、紅茶を口に含んだ。


「そういえば、覚えてる? 将来結婚しようって言ったよね」


 今日の時間割を聞くくらい気軽な問いに、驚いて紅茶を吹き出しかけた。危ない危ない。紅茶を何とか飲み込む。急いで飲み込んだからか紅茶が変なところに入りかけた。


「もちろん覚えてるよね?」


 たぶん今すごく目が泳いでしまっている。もちろん覚えていない。でも、これ以上覚えていないことだらけでいるわけにはいかない。さすがに失礼すぎる。今、私もクリスも婚約者がいない。それならなんとかなれ!!!!

 私は椅子から立ち上がると、クリスの前に膝をついた。そしてクリスの青くて大きな瞳をじっと見つめる。


「もちろん覚えてるよ。ずっと覚えてた。そのために薬指も空けてる。結婚しよう」


 すっとクリスの手を取る。周囲から歓声が上がった。っしゃああ! きまった!!

しかし、クリスは「あははははっ」とお腹を抱えてすごい勢いで笑い始めた。なんでなんでなんで?


「え、大丈夫?」


 そう聞いてもずっと笑っている。それからクリスは30秒ほど笑い続けて、やっと一旦止まった。苦しそうな顔のまま、言葉を絞り出した。


「…いや、やっぱり、ふふノアくんは面白いね、ふふふ」

「何か変なこと言った?」

「だって……ははっ。そんな約束してないから、ふふ。お互い性別間違えてたんだよ……」


 周囲の視線が痛い。私とクリスの間を冷たい風が駆け抜けていった。また、クリスは「あはははっ」と大笑いをし始めた。残ったのは鎌をかけられて謎のプロポーズをした哀れな女だけである。私は自分のアホさに恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしているしかなかった。


 そして10分後。笑いきってもう笑い声が出なくなったクリスは、何とか落ち着いて砂糖がたっぷり入った紅茶を1回飲んだ。その目には笑いすぎて涙がたまっている。まぁ、嬉し涙ならよかった。


「……じゃあ、婚約者からでお願いします」

「え?」

「『え?』?」


 もう1度カフェテリアでは歓声が巻き起こった。

今日の投稿はこれで終わりです。

おやすみなさい。

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