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Ep6:悪戯っ子

 この地、アクスドリーマヌ領では子供同士の遊びが盛んだった。特に、俺はいつも「ジグル遊ぶぞ」と言って両親と祖父母、弟妹きょうだいを他所に二人で遊んでいた。だが、時折悪戯(いたずら)をする者も居て、無事帰ってくるまでに怪我をする事だってある。そこには意志が宿っている事もさながら、魂の揺れを感じる。


「なぁ、ジグル・・・おれ達は何処から来たのかなぁ?」

「う~ん・・・僕は馬車から落ちた本を読んで居た。確か、この地は以前にランガスモーという大地から突き上がったという文面があって、宇宙から飛来した遺伝子・・・虹の鉱石が動かしたとも書いてあったね」


 俺はジグルを他所に草の上を寝転がる。


「そうなのかぁ~大人になったら王国に行こうかなぁ~」


 ジグルはそそくさと紙切れを見せる。


「この紙はね、本の切れ端なんだけど・・・ほら、エイドカントリーズって国が別の地を創った・・・人類が地上から発明としてパヘクワードを創った・・・水を運んだと」


 俺はその紙切れをジグルから渡してもらい、見てみる。


「じゃぁ、おれは空中で生まれたんだ。そしてエイドカントリーズで働くんだ」

俺達が二人で思いにふけっていると考えられないような事態に驚く。それは突然だった。

「何見てんだよ?」


 そう睨み付ける二人組がやって来た。


「うん、と紙切れだ」

「ふ~ん、ちょっと見せてみて?」


 その内の一人が俺の手からパッと拾い取る。


「何するんだよ?」

「いや、興味があったから!」


 そう言って、ジグルの持っていた紙切れを千切り捨てる軽い音が空を切った。


「やめろよォ!」

「遅いよ。帰るぞ、エリクル」


 するとジグルが寂しそうにガッカリと肩を落とすのだが、何時もと雰囲気が違った。その二人組は俺と違って立ち去るのでなく、宇宙の引力に引き寄せられる様に再び戻ってくる。


 ―――ジグルは咄嗟に「ブラックホール」という言葉を発していた―――。


 かつて自らの意志も魂も切り裂かれ、光の束によって救われるという伝説があった。それは闇を受け継いだ者の痛みにも近い状態だった。

 そういえばジグルは何時も俺の居ない時だけ「汚れて帰って来る」と母が言っていたが、それは虐めを受けていたという事だろう。ジグルは俺と違い、周囲に融け込む事はなく、道をふらりと歩く最中に落とし物を拾ってくる習慣を持っていた。

 その手に掴まれていたのは動物のフンであったり、或いは尿の籠った草花であったり、それ等を見ては落とし物の本を読み漁る。そんな時に限って「この貧乏人が!」と誰かに言われ、汚れて帰ってくる。それは雨の日も同じだった。


 そんな時に限って「弟のおれがお前を守る」と言った。だからか―――?


「おい、お前ら、いいかげんにしろよッ!」

「何だよォ、帰って来ただけだろう?」

「紙切れじゃ物足りないんだよ」


 喧嘩は口と手足、胴体を使いお互いをぶつけ合う。だが、今回は血が出るまで叩き合った。そんな事は始めてでも俺の意志は覚えている。仲間という者を引き寄せる為に使う方法だったからだ。最古の世界ではお互いの体を触れ合わせて交信を遂げるという、本書も存在していたが、現在進行形で俺はジグルの事で頭に痛みを感じていた。


「たった一つの悪戯が、虐めになる事は覚えがあるんだ」

「お~い、コイツ何か言ってるぞ?」

「何でそうなる?まだチビじゃないか」

「何だか分からないけど・・・そう、覚えがあるんだ!」


 “いじめっ子は俺が遊んでやる”とでも言わんばかりの言葉と体のぶつけ合い。ジグルは俺よりも大人なのに、手を出す事すらなかった。それどころか怪我をしていて何だか闇を抱えている様な態度で言葉を迫っていた。先程のこの二人を引き寄せた事といい、”ブラックホール”という発言をした事といい、何だかいつもと異なる様子を俺の前に見せていた。


「この領地で、研究と実験をすることは禁じられているんだよ?」


 ジグルは無垢な表情でこちらの喧嘩を見て、その様に告げる。

 まるで対立していたのが引き寄せられ、このような現象を生んだとしか覚えられなかった様だ。


「おい、また何か言ってるぞ?なんなんだコイツ等は、」

「いや、分んないけど・・・何だか怖いよ。パージル帰ろう、」


 思い留まった様に、一人が俺の手を払い、そのまま帰って行こうとする。

 もう一人はジグルをジッと見ていて、何やら謎を探っている様に見えた。


「何だか、僕達が悪戯をしているみたいだね?」

「おい、ジグル・・・何を言って・・・」

「お、お前ら・・・、おかしな事を言って・・・。ふん、もういいよ・・・」


 あっという間にエリクルとパージルという二人組は帰って行った。俺達は少なからずも怪我をさせられた。怪我といっても大したものじゃなかった。時折ジグルから闇の引力を感じていた。

 それは光を失ったように延々と生命体を開発する“畏怖の記憶”がそうさせたのだろう。


「あの時はおれの方が先に去ったなぁ・・・」

「え?僕はじゃぁ、後で去ったのかな?」


 空を眺めてそのような意見を言うのも初めてだった。

 一瞬、幻のような光景を感じ取っていた。

 どこから来て、何の目的で悪戯を阻止していたのかも分からなかった。


「あ・・・?おれ達、、、何を言っているのかなぁ・・・」

「僕も・・・変なことを言っていたね・・・」


 俺達の意志は何処かで交わり合った。

 そこで“親友”と“馬鹿”という言葉が似合っている気もした。

 親子の運命なる悪戯のように、虐めに屈しなかった。


―サワッ、ヒュウウゥ――


 突然、風が吹いた。

 何処かで休んでいた様だ。

 これも悪戯か?


 そう、あの時も・・・。


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