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Ep4:幼馴染


 このアクスドリーマヌの離れ、イヴスアローの領域には“ある、お嬢さん”が居た。

 そこへイーター・アマテという暴れん坊と遭遇し、俺は着々と言葉を濁すように遊びたいと言えなかった。

 その子と俺は相対する関係だったので意見がよく分かれる。


ばぁい(わーい)らいじゅ(ライズ)ゥ~~タタタ・・・はな()ぁ~~」

「おれで遊ぶなよ。おまえは自分の手で¹ヘビスを取るんだよぉ~」

木の棒で出来た到達印。太くてたくましい彼女の腕によってヘビスの棒が折れてしまう。

「あ“あ”ぁ~~アマテのおばさん、ヘビスが折れちゃったぁ~!」

だぁい(わーい)だぁ――ィ(わぁ~~い)いーたー(イーター)かちゅィ(勝ち)!」


 3歳の頃に出逢ったそれは運命だった。俺の思うより先に彼女は自らの足で手を動かしヘビスに到達したのだ。それはこのイヴスアローの領土での風習が宿されたと考えられた。

 この領土ではアクスドリーマヌ領と異なり住民世帯が4人以上住んでよいとされている。河川区域で獲れるアロゲン魚も1メートルで、そのまま支給され食材が不足する事もない。

 その代わり“支給食材を減らす、各区域で捕獲するモノなら食べてよい”のだ。


「くそぉう、おれの細い体じゃうまく走れないや・・・」

「あう?らいじゅ?グ、―ドンッ!」


 次にこの領地は他の領地へ食材を分けていい事になっている。貧困は貧困を助ける。だからアマテ家が心置きなく俺の家族へ食材を分けてくれ、生活的にも楽になった。それも父のリディズがイーターの父、アルツと養肉区域で仕事仲間になってからだ。


「さぁ、イーターごはんの時間ですよ」

「あうぅ~~?」

「あなたはまだ1の年だし沢山食べなくちゃね!」

「うわぁ~、ごひゃ~ん、あばぁ――い!」

「フォングランさん達も食べていく?」

「え、いいんですか?私達は・・・アクスドリーマヌ領の一民なんですよ?」

「いいの!エイドカントリーズのお偉い方もそこまで見ちゃいないわ?ささ、来て、」


 王国エイドカントリーズからの支給から更に2の年が経つ。そしてイーターもあの頃の俺と年が同じになり言葉も話せるようになった。父は言った。『お前が5歳になる頃には療育園に連れて行って勉強させてやる』と。

 それから河川区域で領民解放際が行なわれる様になると、釣りをする事も許され村の賑わいは加速する。それはイシュペータス王国から領内繁栄条例が下ったためだ。それが月に1度も訪れる!


「おぅい!釣れた、54センチのシャニン魚がッ!」

「いいか・・・竿の糸に食いつく、そこを狙うんだ」

「さあ魚よ、おれの餌に食いつけぇ~バシャバチャ」


“クイ、よし、網を・・・よしッいいぞォ!バチャバチャ、ビチ―、ピチ――、”


 こうして赤子も順調に生まれ、民は長い貧困の時代を乗り越えてゆくのだった。それに、イーターとの出逢いも悪いものではなかった。

 更に2年後にはお互い別々になるのだから――。


「ライズ?もう少ししっかり魚を捉えるべきよぉ~」

「まったくお前とは相対するよ。この食いしん坊め、それっ!バシャァァン」


出た、お前の最新記録は61センチッ、大記録だぁ~!


―――――

――²3の月が流れた。


 ある日、大きく年の離れた少年と出逢った。領土アクスドリーマヌ村のアーシュリーの平民区でだ。そこで共鳴を感じ取れたのも運命なのか、彼は俺に付いて来るようにその遅い走りを見せる。彼は常に足が遅いらしく言葉も不自由で、行動さえも慎重だった。


“おぅい~キミの足は速いねぇ~!”

“ちゃんと掴まえろよぉ~おれのボウルだぞぉ~?”


 俺達二人は丸い布袋の羽の詰まったボウル、“ランホテ”で遊んでいた。俺が投げたランホテが中々彼の手元に届かない。そこで角度を変えて遊びと手加減を入れてみた。それが友達なのだと思っていたからだ。

 それにもう、夕飯の時間もやってくる。別居中の祖父母、弟イルンに妹エーシャも同じ時間に食べている。



“―――タタ、タ、タッ、タン―ッ、ボンッ、パシッ”


「よぅし、キャッチしたぞォ~今日はこれで終わりだ」

「うん。ところでさぁ、キミはなんで僕と遊んでくれるの?」

「あのねぇ~~、おれとぉ、遊びたい顔してたから!友達だろ?」

「友達・・・、僕は抱えっこがお友達。それならキミもお友達かな?」

「そうだ。でも・・・名前を知らないんだよね~何て言うの?」


 彼の名前はジグル・ウィナートと言う。ここへ引き取られて14の年を生きてきたのだそうだ。あまり人懐っこい感じはしなくて少し寂しそう。だからか俺はランホテを使い、彼を引っ張ってあげるように遊ぶのだ。まるで親子や親友のように。


“ちょっとぉ~ご飯よォ~”

「はぁ~~っい!・・・確か、ジグルと言ったよね。少し待っていてね?」

「・・・うん」


 彼が常に闇を抱えていたのは、過去が原因だった。よくは知らないが両親の友達が元・貴族の出だった事も在り、ジグルはその領土へ引越したのだとか。更にどういう訳か両親は死んだと言っている。

 なぜ、どうして今このアーシュリーの貧困区だった土地で暮らしているのかと尋ねると、親戚に引き取られていると答えた。その家の名前はランビードという、ビュルセス養成学校の教師でもあると父・リディズから聞いた事があった。


“スタスタ、スタ・・・”

「まったく、ライズったらどうしたの?」

「ねぇ母さん、この子と一緒にご飯食べてもいい?」

「僕は、いいよゥ~どうせ貧乏だし・・・」


 俺が母へジグルを紹介すると彼は遠慮がちになる。養成学校の教師をしている筈の親戚が貧乏だからといって余り食材が支給されていないと聞いた。だけど食べなければ貧乏のままなのだ。だから俺は“共に食事をしよう”とジグルへ母から伝えてほしい事をお願いした。

 彼は言葉が苦手らしく本さえ殆ど読んだこともないと聞く。母の言葉が通じるのか。


「うふふ。いいわよ、食べていきなさい!」

「イルンとエーシャは?それとお爺ちゃんお婆ちゃん・・・」

「あの子達はエイダの家族と一緒に、焼き肉を食べると言っていたわ?」

「そうか、じゃあ、おれとジグルは兄弟みたいなものだね!」

「ふふ、フルレお母さんの特性料理を食べさせてあげるね~」



願ったり叶ったりだ。


母は食べてもよい事を彼にも教えてくれている。


なんて幸運なんだ、俺にも新しい“兄”が出来るなんてッ!



”やったぁ~、”


”いいのかなぁ・・・”


”いいよ・・・

それとおれはライズだ。”


”え?”


”ライズ・フォングランって名前だよ!”



 こうして稀に、ジグルが俺達家族と共に食事をしていくようになる。イヴスアローの領域に居るイーターもあと少しで4歳になるらしく、その頃には遂に貧困と平民と呼ばれる世間体の風習は無くなってゆくとも聞く。

 ジグルと兄弟のように暮らす、この3年という時を俺はきっと忘れたりはしないだろう。


※¹ヘビスは12mの樹木で加工しやすい

※²1の月は36日

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