Ep22:王国でのライズ・フォングラン
―パッカパッカ、ブルルルルゥウイ―
俺は、アクスドリーマヌ領での7日間を有意義に暮らし、家族や友、教師との別れを背にする。上空に佇む大地なのに山があり、その山を三つほど超えて王国エイドカントリーズへと向かう。荷馬車へ乗っている者達は、各領地を離れて荷物を運んでもらったり、王国へ勤めるなど、様々な目的を以って乗車している。しかし、目的に到着すると落着いたのか、馬は息を突き、休息をとる。
馬車主は王国へ着いた事を合図すると共に、荷物を降ろすことを手伝ってくれる。俺はこれから宿舎を巡り、働く場所へ挨拶をしなくてはならなかった。まず、布革の王国証明証を持ち、衣食住の為の身分証明を行う事が先だ。
護身用という、アンジェル高校の卒業祝いとして、長剣と短剣を携えている。勿論切れ味はエディーヌ・サリバン校長の鍛冶屋である友人の折り紙付きである。
――宿舎
「初めまして、こんにちは」
「あら、こんにちは。あなたは?」
「ライズ・フォングランです。ヴァン・マジェス・ディルタ王から召集指示を託されたのです」
「なるほど、あなたはアントマニーヌ鉱山で働くことを指示されているのねぇ」
「はい」
まず、宿舎へ入る条件として、パヘクワードがどのような環境で浮いているのかを知る事から始める。その為には指定された発掘現場とされる鉱山での労働を求められるので、そこでの知識や労働環境を知った上で、改めて王国内での新天地計画の為の人選配備を行うとの事だった。
「じゃぁ、王国からの指示が有るまでに、ここで暮らすことを許可するわ」
「あの、お名前は?」
「アン・クレードルよ。初めまして、ライズ!」
俺は宿主のアンから部屋へ通され、次に食事を頂く。それからエイドカントリーズのどの場所へ向かえばいいのかも教えて貰う。ここは構外の宿で、野生生物すら寄ってくることも無い場所。常に兵士が訓練等で警備している事から、安全且つ自由らしい取り組みが行われていた。
「これから鉱山で働くなら、剣技でなく、知識の方を優先されるわ。もし、体が衰えたと思ったら、近くの兵士にでも相手をして貰うといい」
「兵士と?そんな事も出来るんですか・・・」
「血で争う訳じゃない、彼等の意見はまとも。エイドカントリーズの情報だけでなく、各地の状況も聞けるから、何かと便利かも?野生生物が居れば血で争われるけど」
血の事は少し気掛かりな感じがするが、一体この宿舎で何が起きていたのだろう。そこに拘ることのないように、注意し、俺は礼を述べるにとどめる。
「ありがとうございます。では早速、構内の職場まで挨拶してきます」
俺はアンと一旦、別れることにした。それから、近くの兵士からエイドカントリーズの門番の場所を教えて貰い、王国証明証を見せてから構内へ入る事を許可された。そこは城門として機能しており、度々、馬車も通る事から他国との交渉事なども内容次第で通されるという話だった。
◆
一度、門を抜けると、木枠や煉瓦によって3階建てから遠くに7階建ての住宅地が並んでいる。
遠くには教会らしき形状のものからエイドカントリーズ城が佇む。そこから商業区のような横並びの建物を抜けると、森があり、その先に鉱山らしき形状の岩肌が見られた。王国エイドカントリーズ構内には多くの関門があり、王国証明証を見せては通過するという仕組みだ。だからか、分厚い布革で作られているのは・・・。
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【王国証明証:3項】
我が国、エイドカントリーズでは労働に当たり健康管理に準じた環境を選ばせている。
それも充分な栄養を与えられる環境を以って各自に暮らしを提供しているのである。
万が一、体に異変が見られた場合は、直ちに城の管理員へ話を通すように。
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(健康的には問題ない筈なんだ)
関門を通る度に証明証を見せなくてはならない。だが、働くための体作りが出来ていれば問題ないのに、これほど多くの関門を通っていると、息切れを起こす様になっている。これは一体どういう訳だろうか。
「誰かな?」
「王国から召集令を下された者です」
これが、平民区出と貴族出身の心構えの違いだろうか。鉱山の入り口の守備兵らしき人が立っていた。緊張が体に走るのを感じる。
「王国証明証の通りだと、労働環境の場に入る為にはまず、入国時には礼を乱さぬようにと印で書かれている。だが、君の場合は既に、姿勢が乱れ始めている。平民区出とは理由にならないから、落着いて体を伸ばす事を忘れぬようにな・・・」
「はい・・・」
意識が意志を呼ぶ。呼ばれた意志は姿勢に現われる。たった7の日時を過ごしていただけで、アンジェル高校での「貴族なりの答え」の姿勢を乱していたのだ。俺の造語に過ぎないが、心得ておく事で何かの場面で役立つと念じていた。
(気の使い過ぎもいい。でも、気を付けよう。ここは王国なんだから)
俺は、働くと言葉遣いも丁寧になっていた自分に出会いたかったのかも知れない。
(いつまでも幼く居たくはない。俺もいずれ大人になるのだから・・・)
そして、それが焦りだと思うのは初心だからと感じても居なかった。
俺の記憶の意識の奥底に眠る魂は、新天地である計画に則っているのだろうか、と時々、止まりつつもそう、思わざるを得なかったのだ。
(それにしても、なぜ、この地に留まる事をしない?)
目の前の鉱山で働き先ずは、王国で認められる事を考えよう。
「やっと、着いた」
先ずは、ここからだ。




