Ep2:食べるという事
骨は出汁になるというが、残った形は本当に微生物が分解し切れるのか?と誰かが訪ねたそうな。焼いても漬けても崩され切れぬ骨。内臓は塩に漬けておけば臭くても食べられるようになるのに、骨はどこへと向かえば辿り着くのか?
「困っているなら助けてやれよ!」
「だって俺だって自営するのに!」
「待てよォ責任とる奴居ただろ!」
――更に1年の時が経った。
フォングラン家に双子が生まれた。それは世帯数が増えれば増える程に、支給食材が増えると王国側から町や村の方に通達が届くのだ。実際は余っているがその内容はこうだ。
『アクスドリーマヌの領内各区域の民達には、大変苦労を重ねている事を承知の上で、以下の提案をする。それによって傷付けあう行為を目撃した場合は王国の条例の元、処分対象とするので、あまりに無謀な意見を述べない様に心掛けてほしい』
―以下、提案―
各所、各世帯人数分として食材を分け与えている。
一つ・条例135、貪る者は食うべからず。
その食材は大人と子供の栄養を均等に割っての分量だ。
一つ・条例58、集まる者こそ勇敢だ。
それ等を分け与えるのも独占するのも自由。
一つ・条例209、飲食同時に行う事は罪とする。
子供を作る為にはお腹を空かせないよう工夫しろ。
一つ・条例89、餓鬼は困難蒸留とする。
年老いても知恵を得るなどして再び支給を待つように。
一つ・条例41、未知を広げよ国民よ。
―各国代表、代理大臣ヴォ―ラム・エキル―
栄養を鑑みるなら授乳期間は1年間にしかならない。その栄養は豆だけじゃない。野菜も魚も足りないなら肉でも無理なのか。作農したところで3の月日が必要なので足りない。
「リディズ・・・私達ならともかく・・・どうします?」
「うん、これではイルンとエーシャが育たんな?ならば」
次男のイルン、その下の妹エーシャも含めて俺達は7人2世帯で平民区間に住んでいる。俺は両親と住み、次男と妹だけは祖父母と暮らす。
主食として肉なら馬半分で重さ¹16zn、麦マメなら大皿10杯2zn、塩は大袋1個3zn、蜜は子袋1個0.5znと一食当たり3人の消費量平均0,2znだ。水は河川区で好きなだけ汲ませてくれる。それで量を調整するから何とかお腹を空かせずに済む。※¹1zn=9kg
俺達、兄妹はまだ5の年以下だから。その規則はこの村だけに限った事ではないが、対価が存在しない以上、仕方のない事なのだとか。
「我が家に赤子が出来てねぇ。また分家だよ」
「王国エイドカントリーズなら沢山あるのに」
「・・・兵が居なくては、領土が成り立たん」
「兵でなくとも食を運べるというのに・・・」
水源は在るはずなのに、なにも完成されていない。各国とも人員不足といいながら配給するべき食材が少ないのだ。
噂によると城下に4千人ほど暮らすと大人から子供へと伝わるし、そんな尽きぬ悩みが流々と諸説されてゆく。
小さな命でさえ灯すことなく消えるというのに子供を増やせともいうが、そこにあるのは貴族と貧困という名の定めが置かれているだけだった。
子供が成長するとこのように気に病む。俺は2の年になるというのに友達とひたすら走って遊ぶしかないのだ。
“トテトテ、まってよぉ~エイプル、トタトタ、はやい・・・トタタタタ”
“ライズにも香草の豆菓子を持たせてぇ~~・・・ふぅ、ライズに渡そう”
◇
――そんな噂がランガスモーの孤島から流れてきたとは。
我々は虹の鉱石によって運ばれてきた人では無かったのか?
「滅んだランガスモーに怪魚が棲むと聞いた」
「いっそ、でかい魚を獲りに命を捧げようか」
「我々は職をも狭め、食っている。新天地で」
「水源はランガスモーで自然は新天地なのか」
ここは遥か昔の金世紀に創られた空中大陸、“新天地パヘクワード”とされている。
皆、どこかへ移民をしたいと考えていたし明らかに食料が足りていないと感じていた。
創世紀、地上大陸ランガスモーのある時代に生命が人類へと変化したとき虹の鉱石を発掘し、それを岩や樹木へ埋めつけた。それが移民という形で新天地を築き上げ言葉を得たのだ。水源は虹の鉱石の浮力を経て送られる。それなのに文明とはこうも崩れてゆくのか。
“²マルアリって、たべたら美味しいの?こ~んなにちっちゃい虫なのに?”
“バカ、それ食べたらお腹の中に卵を産むのよ?ライズったら何でも食べたがるのね~”
※²0,2ミリの非食性の丸い昆虫。
「王族の事を“政治”という!」
「その政治を決めるのは騎士だと言っていた」
「騎士って剣技を極めると聞くねぇ~」
「実は甲冑姿の食い物だったのだろう?」
アクスドリーマヌ領内で飛び交う“真意を正したい”との声。その声を聞くものは王国の執務で政治という名の元に構成されている。その政治をするのは議員なのに内容はほんの2行に変えられ大臣へと届く。それを判断するのが国王でなく王直属の騎士である故に誰も逆らえない。何故なら猛獣の肉を捌けるのは騎士の位でなければ大きな剣をも扱えず、体力すら奪われるとされているからだ。
このような構成となったのも、各国とした総主たちによって王国エイドカントリーズを設置建造して以来である。だから村でも町でもあらゆる目的や意見が話し合われている。しかも、そんな大人を見るのも子供の役目だった。
“エイプルぅ~おれの花はいったいどこへ消えたのかなぁ?”
“ええ?頭にかぶっているソレは?花冠、いらなくなったら土を掘って還して、”
「みんな大人になったらさ、別れちゃうんだ」
「でもいつか一緒に居られるよ、それまでね」
隣の家のミブダは「お父ちゃん、ボクも兵士になりたいな」と言い始める頃に、親は兵士という職は危ないから“教育者になりなさい”と伝えると「隣の男の子がごはん沢山食べられるって言っていたからだ、兵士になるんだ」などと理由を述べる。
河の付近に住むエリダルは「どうして学者でなくて兵士を選ぶの?」と聞かれ「私はそうねぇ、果物を作るわ!」と答える。
この村には子供も沢山居るのだ。
食事と体を治すという意味で食料を沢山欲しがるため、皆多様な夢を描くのである。俺もそうした思想に駆られると“王国で働きたい”と願う。
“ねえ、ライズは将来何になりたくて大人になるのか、知ってる?”
“しょうらい?おう様におくりものをするんだろう、って父さん、きかれた”
その時が訪れるのなら・・・
祖父母よ、親よ、弟妹よ、
そこへ動くよ・・・!




