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Ep14:始業前の挨拶

 初授業から7の朝日が昇った。教師が今後の行事について説明をする。学科ごとに組み分けされ、教室ごとに5名から10名に別れる時がある。どのような人物と組むのか色々と実技を試されて切磋琢磨する事になるのだろう。


―カッ、コッ、コ、コツ―


“ガラッ”


―スタ、スタ、スタ、スタ、パタン―


「さて・・・皆さん、おはよう」


“ザザッ、おはようございます!!”

「よい、挨拶だ・・・」


 皆、兵隊のように自らの意志と魂を込めて挨拶を行う。前回、前を向け、後ろを見守れという意見をこの教師から教わった事を忘れてはいない。


「よろしい。私の名はアイザルだ。早速で緊張をする。が――、私も無知だし、キミ達と同じ立場でモノを伝えるよ・・・」


 教師は暫くモノを言わんとする態度を見せ隠しする。それも高位たる由縁なのか、俺も浅知恵ながら態度を見守る形でその様子から学びを得る事となる。


「えっと――、教材が必要かね?私もキミ達と充分会話を楽しんでいけるか、不安が残るかも知れない。ただ、時間を灯する態度で接したいと思う・・・」


“ドヨッ、サワ―ザワ・・・先生ィ――”


「“ガタッ”な、何だい?」


 どうも「緊張を得て欲しい」という仕草を見せてくる。生徒全員が手を挙げてモノ申さんとする。その、手解きを是非とも教訓にしたいものだと、カッとする。


「先生は、アンジェル高等学校の生徒となるのですか?」

「・・・は、はははっ・・・あはは。それもいい質問だ。我が校アンジェル高等学校にて、お互いの質問に対して応答をすることが先決とする。だが、そこに夢がなくては何も働かないと、校長は伝えていた・・・ハア、気持ちのよい朝だぁ――!」


 無理をして勝手な仕草をしているのか?

 それともこれは・・・節度と道理??


「アイザル先生。貴方は校長に拾われ、この校へ担任教師となっていると聞く!だが、その緊張感のない態度は・・・夢が・・・ハァ・・・。いえ、失礼をお詫びします」


 俺達生徒は一挙に緊張感が解れる。なぜ、これ程までにして時の刻みを弱めるのだろうか、と考えた。その、一瞬だけだのに我が身の頬に一閃が貫いた。一体何が・・・?


「“新天地”を貫く一閃を、この校舎の外にある太陽から頂いた。挨拶は“夢”!これを語らずに何とするべきかを私は迷っていた。そこの、赤くも青い虹の道標となる髪の子、ラウズ・フォングラン君・・・キミの太陽は眩しいよ」


 俺が太陽だと?その教壇に立つ以前に登録名簿を調べてきたのか?早速にその名前を呼ばれた時に俺はハッと目が覚めた。この教師は只者じゃない、「器質」よりも鋭い何かを持っている・・・。教師、アイザル・ディナール・・・。皆一同にゴクリと唾をのむ。


「そうさ。“素質”は夢だよ?語り合おう、これから旅経つための夢を――ッ」



 あぁ、そうさ。


 俺は学校で自分の夢を語ったんだよ。


 それもあなたのお陰です――ッ!



「貧しき事柄を救う、平坦なる道――それを、冒険者という」


 アイザル先生、俺はきっと、皆を貧困から救うよ。先ずはあなたの生徒になれてよかったと、称賛を受けられる様にしたい。


「俺は民を救うための兵士、冒険者として活動したい!」


 願いは“一霧の千女”となる。一つ言葉を吹けば多くの女性から産まれた事を愛する。これは貴族の言葉だった。ミヘル、いい言葉だよ。


「もっと!いい声だ・・・。さぁ、夢を大いに語ってくれたまえ」

「はい!・・・俺は貧困なる生を受け与えられる事は簡単だと思いました・・・。ですが、一人は時を与えられると同じ道を探しました。“全く違う存在”であるのに、何故こうも“違う”のだろうかと・・・そう、古文書が宇宙の生命の頂きとは何か、と語る場面に遭遇したのです」


 ジグル、元気にしているか?俺は元気どころじゃない。そしてアイザル、あなたに出逢う事を心待ちにしていた。新天地という古文書が存在するなら宇宙はきっと「そうだ!」と称えて来る筈だ。


「ハア・・・何という事だ。キミはこうも貧しき時代に遭遇したし、産まれても来た。なのに出会いはチョットした気持ちの揺らぎが意志となる・・・『あぁ、美味しいと言えてよかった』と・・・」

「はい・・・、美味しいのです。冒険は皆の心を掴む道理を得ているのです!・・・そこには辛い旅を灯す仲間が居る事を教えてくれるのです・・・」


 ハッキリと言おう。そう言ってくれたのはイーターという存在だった。彼女は食べる事に喜びを得ていた人をどんなに愛した事だろう。俺は無理をしていたんだ。貧困なる王国の中で御触れを出された事に――、初めて河川区で魚を得られる父の苦しみに――・・・



“パッ・・・パチパチパチパチ”


“流石、平民区から立ち上がる術を学んだ程だけにある!”

“見直したよ・・・オレの親にそっくりだ・・・”

“わ、わたしの父も貴族の誇りをそう語っていたわ・・・”


 皆、称賛してくれている。これが、貴族と王族の間に入るべき姿なのか。俺はきっと皆の灯となるよ・・・。そしてアイザル先生、この生意気なる態度を許してくれて本当にありがとうございます!



“あっはっはっはぁ~いい・・・実にいい声だよォ~”



「いい声だ、ライズ君。発声練習はこの位にしておこう・・・」

(このアンジェルで、貴族の居る中で俺の発声を感じてくれていた・・・のか?)


 思えば、寂しがり屋のジグルに少女の様に育っていったイーターや貴族ミヘルとの交流によって、慎ましい礼儀作法を身に着けた。それによって王族とも話せるようになっていた。俺は慎ましくも礼儀の作法を覚えてきた。

 そう、皆のお陰だ。そう思っていたんだ。その筈、なのだが・・・ッ!?



「ハァ・・・ライズ君・・・一人目立ちは止めたまえ」


「はっ?」


「キミは語学だけでなく、礼儀を与えられた。そして数式を読み解く方法さえ教えられた・・・。晴れやかなる眩しき太陽に向かってその挨拶を告げることも出来ている」


“ザワ・・・ッ”


 これまで「こんにちは」と言っていたのが「ご機嫌麗しゅう」という感じで言葉の形が変わっていったのだ。もしも将来どこかの王国へ就くなら、最低限の礼儀は弁えておきたいものだとして、「俺は変わる」と決心をしていた。

 未来に向かう前に「貧困」という間違いを正したい。己が記憶を基にして・・・。


「今、12の時に刻まれた。秒針を見たまえ・・・ハア、緊張したぁ~・・・そう思わないかい?」


“ヒソヒソ・・・ぼくが来たのは9の時だった”

“サワサワ、私、挨拶したの10の時だった。なのに15分だけ?”

“ライズ・フォングランは1の時間で30の余分を・・・”


「なぁ?このアイザル・ディナールこそが、夢を語る“番人”だったんだよォ?キミはさぁ~平民区で一体なにを習ったんだ??」


“ぷっ、クスクス・・・”


「ライズ・フォングランッ、王族に失敬あり!」



“ワハハハハ!”



「ア・・・ル・・・」


 ―――アイザル・・・そう。俺が覚えた睨みの時間を与えた、ディナール王族の息子。アクスドリーマヌ領に、僅かな食糧を提供した張本人であり、各民の貴族と共に横領に加わった人物の息子・・・。


「静粛に・・・。そして最後に別れの挨拶だ。飯も食う時間を忘れてしまい“悔しい”と言ってみろ、ライズ。私は教師であり校長ではないのだよ?」


「くっ、悔しい・・・です・・・」


「はい。皆さん、始業式の挨拶はこれにて終了!さァ~て、と・・・私の授業は終わったァ~お腹空いたなァ~」


 なぜ、分らない?


「はい!先生のお帰りです」


―スタスタスタ―


 皆、苦しんでいたんだぞッ?


“ガラッ、タン”


 あなたを先ず説き伏せる!



 「素質」を以って!!


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