Ep13:切実に
全ての生徒の数は少なく、教室はそれぞれの学科ごとに別れている。
その教室とは数式、語学、科学、天文学、採掘学、社会学、王学、貴学という学科ごとに分かれており、他にも兵術、美学、芸術、宿学、その他学科ごとに仕切られている。
俺は剣術が使えるという事で、主に語学と兵術を専攻する事になっている。王学は将来性を見込まれて入れてくれる事になったが、大体が貴族出身の家柄が多い。
「貴殿は平民区出身と言っていたね?」
「はは、俺はそれほど上手じゃないよ」
君はどうなんだ?と尋ねそうになったが、その風格と服装から平民区とは違うという目線を感じた。その目線はミヘルとそっくりで鋭く追いかけて来る様だ。どうやら剣技のほか、多くの学科を経験し、礼儀作法など貴族の嗜みとして習っているらしい。
逆に俺は―――、
「平民と言って、貧困に佇む事はない。常に同じく勉学だけでは叶わない事を知っているから」
「あ?・・・ははは――アっ。何を言いだすかと思えば、自慢話もほどほどにしておくことだ・・・だが、君のそういう眼差しは決して嘘を言っていないね?」
「ありがとう」
「私と君は今後、友として生きてゆく。分からない事があれば教えるし、教えて欲しい時は声を掛けるよ・・・たとえば・・・生い立ちなんかを聞きたくなる時はねぇ」
―――無礼なる挨拶。名門と言われたアンジェル高等学校で、俺は自らの生い立ちを語る事になる。それは友情という形ではなく、偏見と差別によって象られている。貴族とは何だ?王族とはどういう繋がりがあるのか?何せここは、貴族と王族が訪問する学校なのだ。だからといって怯むわけにはいかない。
一つでも勉強になる事は知っておかないと今後の人生に左右されるだろうから。
――社会について教師より。
初授業が始まった。
「貧困区の住民は料理も畑も出来ないという。ただし――、」
―コソコソ―
“おい、それなら平民区も貴族も王族も?”
“人を遣うようにしている、本当か?”
“いや――、俺の親は人なんて雇ってないぞ?”
「そこから・・・ん――?さて君は、“役に立つ”という事がどういう意味を告げるのか理由は解るかな?・・・理解、という意味を――、だ――」
「あ――、はい!」
聞いている分はいい。聞かない事に越した事はない。平民区は貧困区を囲う様に守らなくては成らない事を、王国から御触れが出ているのに、一向に支給手段しか執っていない。
とても適当で適切な判断とは思えない。一体、どこにそんな余裕があるのか、元はと言えば同じ民から産まれ出でた赤子だった筈が、立場が違えば物事を動かすにも許可が要るなどと、どの立場が“モノ”を言っているのかと感じた。このアンジェル高等学校は教えようとしているのかも知れない。
それでも改善されるのか、教育内容によって変化するが、一体どういう風の吹き回しなのか、と俺も考えた。
「使用人にする、仕事を与える、与えてダメなら兵士の配給係・・・色々とありますよ?」
「座ってよし。例えばだ、兵士として雇われたが我が国で指定している、危険生物に兵隊が襲撃され、折角会得した剣技で牽制できなかったとする。そして、片腕、片足、片目を失ったとする。それ等を助ける行為は我が国では禁止事項とされている、なぜか?」
「はい!」
「うん、ミユーラ、答えてみせろ」
「我が国では自ら立ち上がれない者は、人に乞えと教えられています。ですが、兵士が貧困区へ移送された時に支給手段が、片手だけでは補えないと云いますが――間違っていると思います・・・」
“ザワザワ・・・何を、言っているんだ?”
“コソコソ・・・兵士から貧困区に移送されたら”
“もう仕事は草花を育てる以外ないんだぞ?・・・ヒソヒソ”
「はい!」
次々と手を挙げて、自らの資本となるべく言葉を口にする生徒達。自らでなく周りから得た評価・価値等で決定する道理が何処に在るのか、と思うのだが・・・どうして貴族はこうも失った者へ対する自尊心が無いのだろうか・・・。ジグルだって自ら立ち上がったというのに・・・。
「よし、ライズ・フォングラン。君はどう思う?」
突如として俺に意見の言葉を述べるように教師が言い当てる。
「ライズ、返事は?」
「――はい。俺は平民区出身です。しかも貧困区の者と同居していました。彼と同じ食事や暮らしをしている内に、同じ場所で同じ時を過ごす事を約束します」
「すると、君は王族、貴族が助けるなと言えば、将来、支援をする人物に相当するのかな?どういう事か分かるかな?君は約束すると言った・・・だが、それは逆らうという意味でだ」
「見過ごす事は出来ません。ですが、分りません。そのような知恵を与えられた者達に対して、王族と貴族へ向かって行く事で立場が逆転すると、急激に貧困なるパヘクワードと評され、自ずと均等な世の中など、新天地など得られない。だから変わるべきなのです」
“サワサワ・・・彼は、平民区でおかしくなったんだ”
“ヒソヒソ・・・だが、言っている事は分らんでもない”
「主題は、これから発つ君達へ王たる存在は如何なるべきであるのか、という問いである。貧困なる者が、均等なる者へ、均等なる者から王となるのかも知れないという流れをこの時間の授業で語り合った。どうかな――、今後の方針に変化をもたらしたかな?」
授業は社会学という名で取り締まった。皆、社会に出るまでに世の中の流れ、歴史を理解しておかなくては今後、如何なる立場にも成らない。年齢が経つほどに建設的なだけでは務まらないという意味も込められていた。俺もたった今、貧困を救う意味をもっと噛み締めなければいけないのだ。
切実に。




