表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

Ep11:名門!アンジェル高等学校

「よぅ、おはよう」

「おはよう!」


 俺の住む領地では温かくなると、どの場で生きるか?と尋ねられる事がある。それにどの学校へ向かうのか、それぞれの領区から照会の手紙が寄せられていた。それもポストの中に投函されていて、各々の親族から「名門校から通達が来たよ」と教えてくれる。

 各領地によって、そのような学校へ志願する者も居れば、突然と兵士として雇われる者も居た。


「へへ!父さん、母さん。以前に志願してた学校に行けるよッ?」

「よかったぁ・・・。兵士になればお袋を食わせてやれるよぉ・・・」


 ある者は身内に声を掛け、安心感を与える。ある者は自分自身に鼓舞し、どうにか先を見越せないか、と思慮をする。勿論、食事を摂るのも大切なことだ。

 俺の家では、朝2の時に父・リディズが先に起き、次に母・フルレが起きて支度している。数年も前にジグルも『“引っ越しする事になったんだ”』と言ってそれきり居なくなっていた。

 俺の新しい行先は以前よりも遠くなり、ランタンの灯る中でも3人揃って同じ食事をする・・・。その朝は温暖な時期でも寒かったから・・・。


「朝はね、卵とパンと重ねて食べては、温かいミルクを飲むのがいいんだ」

「それで父さんも、皆と一緒に大きくなったの?」

「そうだよ。支給食こそ少ないものの、だけどそれでも食べて生きている」

「へぇ~。俺もいつかそんな大人になるんだろうか?」

「先ずはアンジェル高等学校に推薦されたことを喜ぶべきだ」

「そうだね。あ、準備しなくちゃ!」


 3の時がやってきた。


 太陽の昇らない夜更けに、親元から離れるように荷馬車が多くの人数を乗せて迎えに来る。まだ早朝前だが、一緒に乗せて欲しいことを願い出てくれたのは親だった。

 俺も初めての場所へ向かいそして学んでゆくため、挨拶をした。一応は貴族の嗜みとなっている事を祈って・・・。


“ガタガタガタガタ、キュイ、ブルルルルゥ~・・・”


「君がライズだね?」

「はい。よろしくお願いします」

「お父さんから行先は聞き預かっている。アンジェルまで送ってゆくよ」

「ありがとう!・・・じゃ、父さん母さん、行って来るよ」

「あぁ、行っておいで」


 馬車の座る空間は木で出来ていて、滑らない様にと布を被せていた。天井を覆うような布も支え棒のような物もなく、25人の入る広さだった。俺を合わせて20人と荷物を含めると、詰めなくてはならずギリギリの空間だった。


「初めての場所だ。失礼のないようにしような?」

「分かっているよ。おれ達だって自分に言い聞かせている。そうだよな?」

「あぁ、勿論そうだよ」

(皆、遠い領区からも来ているみたいだ・・・)


“ヒヒヒ――ィ――ィン”


 馬の嘶きが響く!

 新しい人との出逢いをする・・・。

 緊張でドキドキする・・・。

 皆、声を潜める・・・。


「君がもし、卒業して推薦合格したなんて事があったら?」

「友達もそうだし親にも知らせるんだよ、」

「王国に行けば・・・旨い料理が食べられる?」

「バカ、まだ推薦されてないだろう!」


 馬の蹄の成る音と共に馬車は動いてゆく・・・。

 向かう学校施設の校舎へと進む音、籠る空気に肌を触らせながら・・・。


“ガラガラガラガラガラ・・・”


「なぁ・・・。新しい教材と巡り合えたら、ぼく等も兵士になれるの?」

「分からない。しかし、生きる方法なら沢山学べるだろう?」

「ゾワつく・・・」


 それも文化・交流の新たな形となるだろう、と信じて、待ち受けた様に太陽がはるか下の地平線から昇って来るのを確かめていた。


「日光が俺達を灯してくれるのかなぁ?」

「太陽が昇った。新鮮な気持ちになれるよ~フウ――スゥ――」

「河を通る・・・領区と王国の境目に入るんだね・・・」

「オぅっ!吐きそうぅぅ・・・」


 太陽が昇ると若干、温かくなってきた。馬車で河と低い山を越え、この空中大陸の大地、パヘクワードを巡るのだ。皆、親や兄弟などの親族を食べさせるだけでなく、その名を刻みたい“願望”がある。馬車に運ばれて・・・。


“ガタガタ――ガラガラ――”


「そういえば20人も乗っていると、寒さなんて気にならないんだなぁ~。一緒に乗っていると何だか暖かくて新しい道へ向かっている事が苦じゃない気がしてしまうねぇ~」

「寒い時だけ、温かいスープと煮物が食べたくなるよ。貧困区からやってきたオレからすると、次のガーラル地区には鉱物採掘の仕事人が欲しいとか。力仕事は直ぐ空腹になる」

「お婆ちゃんと離れるんだ。私は王国の鵜焼うやきが食べたいよぅ・・・クスン」

「泣くなよぅ。そりゃ、王国からの支給食も少ないし、私だってお母さんの手料理が食べられなくなるんだし、我慢しているよ?泣いちゃだめだ・・・」


 誰だって「貧困は嫌だ」というが、中には「貧困でも構わないので剣技を教えて欲しい」という者も居た。不思議とそれ等を受入れる王国側も王国らしい答えを持つ。


“ガタガタガラガラ・・・”


「俺は16歳になったばかりで、学校へと行くんだよ。その後に兵士になるだろうか、決めなくちゃならないんだ」

「いいなぁ、学校かァ・・・。僕はもうすぐ19歳になる。貧困区だから養育園の方へ向かう。1年間だけど兵士志望じゃなく、養育区へと回されるよ」

「王国の?」

「そうだよ。貰える食料は増えるし余るから、その分を家に送るんだよ」

「学校と違うんだ・・・」


 兵士よりも養育区が選ばれること。パヘクワード全土で不思議とそこへ惹かれる様に付いてゆく者だって居たほど、野性生物と遭遇する兵士よりも安全な職種だと謳われていた。

 まず、一年際に漁区が解禁され、養育区からも多くの食材が貰える。だが、このパヘクワードには金銭が存在しないし、空中大陸なので、滅んだ地上大陸ランガスモーから補給食など有る訳もなく、ここで生育した物しか手に入らない。各自、制限があると迷いは生じる。だけど俺はアンジェル高等学校へと進むことにしたのだ。


“ガタン、ヒヒヒ――ン”


「ほら、ライズ。アンジェルに到着だ。降りなさい」

「ありがとうございます、父にもよろしく!・・・じゃぁ、皆も・・・」

「言っておくよ、元気でと!」


 馬の嘶きと蹄が同時に走る。皆、それぞれの道へと向かうのに手を振ってお別れを言ってくれる。その姿を見終わると俺は校舎へと振り向いた。


「ここが、今日から俺の生活の場になる訳だ・・・」


 高さ14メートル、幅300メートルの三階建て。

 アンジェル高等学校には校舎と別に寮があり、遠くから来た者にはそこで働き勉強する機会も与えるのが、ここの校則だった。そして建物が全て木造で土壁に彩られている。ここで3年間は世話になるし、時折貴族や王族もやってくるらしい。


「お爺さん、お婆さん、父さん、母さん、イルン、エーシャ・・・俺はここまで来たよ」


 校舎の頂きを眺めそう言った。

 暫く家には帰れない。貧困から救うために俺はやってきた。

 その願望を胸に閉まって校長室まで挨拶へ向かう・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ