Ep1:誕生
――宮世紀、中期
“おあ”あ~、おぎゃぁ、ああ――、ぅあ“ぁ~、ほぎゃぁぁ――”
「そう、お前の名前は“ライズ”と名付けよう」
「明かりを灯す意を込めて。よい名ねぇ」
天と地のなにかも感じられずひとつの名前を持ち上げられていた。
俺はイシュペータス王国の領土、アクスドリーマヌ村の平民区アーシュリーで産まれた。
フォングラン家の長男で赤みがかった髪の毛であり、その名前はライズという。
「あなたの父か、私の母と暮らせなくなるわねぇ、ふぅ・・・」
「兵士になるか、病になるか・・・生きる事を選ばねば・・・」
俺が産まれて間もなく祖父が別居した。その理由は平民区一世帯につき4人で生活することを決められており、それも支給される食糧が月に20人分と決められている為だった。
俺は未だ歩くのが精一杯で、その俺を支える両親家族が貧困の渦に呑まれている。周りもそうやって生きているがいつか限界が来るだろう。だが、そんな中でも両親と共に暮らして1年経つ。
僅かな支給される食材でさえ生きて居られている。そう信じて居られたのは、他でもない家族のお陰だと言いたい。
“ばあ~い、トテトテトテ――きゃっきゃ!”
「フルレ、父さん、ライズは元気な子だよ、」
「まったくだ。食料が少なくても遊んでいるよ」
“トテトテ、あぅっ!ポテッ―ン・・・”
「あ!ライズ―っ、だ、大丈夫?―“タタッ”」
「キョロキョロ・・・あ、うぅだぁいじょおぶ?」
「スッ―、ふぅ、良かった。それにしても今さっき“大丈夫”って言えたね?」
「お前は“言葉を選ぶ事が上手”なのねライズ。じゃあ、お婆ちゃんの花はどう?」
歩きたての俺に家族が言葉を教えていると、俺もそれに応じるよう、言葉を覚え学びゆく。だが、それでも食糧庫にある在庫に厳しい現状に在る。ただし家主の敷地内であれば如何なる食材を育ててもよく、それ等は王国側の食糧管理大臣の調べで十分足り得ていると考えての事。それで、そのような規則を立てられたのも唯一の救いだと家族はそう言っていた。「せめて一人で歩けるまでだ」と。
「ライズ、偉いぞォ~。もう少し歩いて自然を満喫しよう!」
「リディズ、あなた・・・食料は・・・」
「大丈夫だ。行先で何とかしよう、」
そういった愛を育むことを俺は“水遊び”だと覚えていた。その理由は何故だか懐かしい響きである。そして、この大地はパヘクワードと呼ばれる。自然沈下から逃れてきた“空中”と謳われていて“完成された世界”を意味する。だが、空中に浮いているのに、まるで湧き水の様に流れる河もある。一体、水源は何処なのだろうか、と思う人も居れば関心のない人も居たのだった。
◇
――河川漁区
「何をしている?」
「いえ、私はこの子と河という“不思議な現象”を教えたい一心で・・・」
「その言葉を待て。この漁区はイシュペータス王国の有地だぞ?お前は子供に河を荒らさせるか!」
「そうではないのです!子供は大人を見て河の空気、心地よさを憶えるので・・・」
大人が大人を叱る。
「そんな事を憶えさせる為だけにッ――、この王国の・・・、ここの漁区を――、河の生態系を・・・ッ!壊すというのかァ―――ッ!!?」
なんとも奇妙なことだろうか、
「はっ、いえ・・・っ!この子は――、この子だけでも生かさなくては・・・せめて他に河があれば――、と・・・」
俺の父として見上げているのに、だ。
「あぶっ?おおおおお~~~、だァい、ちゅきィィ!!」―バチャ~アッン
「はっ、ら、ライズッ止めるんだ!、あ、す、すみません私の息子を許して・・・」
でも、大人が大人を許す。
「言い過ぎた・・・せっかく生まれてきた子だ。危ない所には行かせないようにね」
「あ・・・はぁ、すみません。水遊びがしたくて、魚も欲しくて来たので・・・」
そこでようやく訳を聞く。
「へぇ?じゃあ、そんな事でここまで来たのか??呆れた~仕方のない親子だぁ、」
「おぅ、父さぁん?・・・ばわぁ~~い!きゃきゃッ」
そこは平民区の離れである河川漁区だ。
この川の水位は低く20センチと浅い。
その代わり流れはやや早く、魚も泳ぐし岩場へ産卵をする。
こうして漁獲が成されると商農製造業区で選別、加工、イシュペータス王国への献上が成される。そこで獲れる魚は月に1万5千匹程。
長さ50センチ、太さ15センチもあり一匹で大人4食分となる。食材加工されると二回りも小さくなる。そしてアクスドリーマヌ村の人数は653人と足りていない。随分と困窮しているのである。
――――
“ジャバッジャブジャブジャブ、バシャァ――グイ、”
「ほら、でかいだろう?」―パタ、パタ―
「おァっ、それは?」
「シャニン魚だ。あげるよ」―ピチ、パチ―パタッ―
虹色のウロコ、銀と青の表面、赤紫系色の瞳をもつ。それは空の太陽の光に反射して艶を出す。肉質も断層がありその細い骨には血管が通っており脳から全体へ届く。そして内臓は一個に纏められており管が上下二本だけ付いて珍味として食べられる。その生育法は特になく虹の鉱石の苔、微細生物を食べ、それで身が紅系色に変化すると後に分かった。
「い、いいんですかッ!?」
「特別だぁッ、そ~うれっ!」
“バシャァ――ァン・・・パチャン、ビチパタピチバタ”
「5匹ともう2匹でいいか・・・。大きく育ててもらえよ、元気な坊や!」
この人は単純に漁区の責任を王国から任されているだけで、悪く言っていたのではない。
父が時折ここへ向かうと漁師から魚を分けて貰えた。その水源については王国の内部情報として扱われているので教えられないとの事だった。俺が大きくなったら水源を調べられる時代がやってくる事を願いたい。
そして、いつか・・・、貧困を救いたい・・・。




