1941年7月27日:反撃の奔流~逆転のワルシャワ進撃~
【1941年7月27日・ソ連軍戦線(リガ方面)】
スターリンの号令は、待望の瞬間だった。リガから解き放たれたソ連機甲師団は、まるで雪崩のように西へ向かって進撃を開始した。T-34の履帯が荒野を噛み、機械化歩兵がその後に続く。彼らの進路に、ドイツ軍の抵抗はほとんどなかった。
「敵影なし! 進撃を続けろ!」
装甲車のハッチから顔を出したソ連兵が叫ぶ。リガ方面のドイツ軍は、ヒトラーの激怒に駆り立てられ、補給もままならないままドニエプル川へと無理やり前進させられた部隊ばかりだった。彼らはソ連の奇襲に完全に虚を突かれ、有効な反撃体制を構築できていなかったのだ。ドイツ軍司令部は混乱の極みにあり、散発的な抵抗は、ソ連軍の鉄の奔流の前になすすべもなく蹂躙されていった。
「ドイツの奴ら、補給線が伸び切っているから、まともな防衛線も敷けないのだ!」
ソ連将校は、この状況を冷静に分析していた。ドニエプル川での熾烈な攻防で、ドイツ軍が消耗している間に、ソ連は準備を整えていたのだ。リガ方面の荒野は、T-34の快進撃にとって最適な舞台となった。
【1941年7月27日・ソ連軍戦線(オデッサ方面)】
一方、南方、オデッサから進撃を開始した部隊は、当初、自分たちの破壊した鉄道網に苦しめられた。駅舎は破壊され、通信線は寸断されている。しかし、数日も経たないうちに、彼らは驚くべき光景を目の当たりにする。
「見ろ! 鉄道が…直っているぞ!」
兵士の叫び声が、疲れ果てた部隊に活気をもたらした。ドイツ軍工兵部隊が、前線への補給を確保するために、懸命に復旧作業を進めていた鉄道網が、ソ連軍の前にその姿を現したのだ。彼らが「無能」と嘲笑したソ連の破壊工作の「穴」が、今やソ連軍自身の進撃を助ける皮肉な結果となっていた。
ソ連軍輸送部隊の指揮官は、薄笑いを浮かべた。
「愚かなドイツの奴らめ。我々のために道を整えてくれたか!」
破壊部隊が意図的に温存していた鉄道の線路部分、そしてドイツ軍が必死に修復した区間を、ソ連軍は躊躇なく利用した。T-34を満載した貨物列車が、ディーゼル機関車の唸り声を上げながら、ワルシャワへと向かって一気に加速していく。機械化歩兵を乗せたトラック部隊も、整備された道路を快調に飛ばした。
前線でドニエプル川の要塞に釘付けにされているドイツ軍は、自らの補給路が、今や敵の反撃の動脈として機能しているとは、夢にも思わなかっただろう。リガとオデッサから始まったソ連の鉄の奔流は、ドイツ軍の虚を突き、その背後を深くえぐりながら、かつてのポーランドの首都、ワルシャワを目指して猛進していた。東部戦線の状況は、一瞬にして逆転しつつあった。




