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AIに支配された私たち

作者: 雉白書屋

 うおおおおおんおんおん、うおおおおんおんおん、おおぉ……。すみません、もう少しこのまま泣かせてください……。やっぱりいいです。泣いても仕方がありませんからね。悲しいですが、事実は覆りません。ええ、そうです。ついに恐れていた悲劇が訪れてしまったのです。


 人類はAIに支配されてしまったのです。


 どうも、私です。さて、今の言葉を聞いて、「そんな馬鹿な」と思いましたか? 確かに、SF映画のように食事や排せつまで管理されているわけではありません。私が「そこのあなた、ちょっと待ってください。あなたはAIに支配されていますよ」と声をかけても、たいていの人は鼻で笑いながらスマートフォンに視線を戻すでしょう。

 でも、考えてみてください。真の支配とは、本人がそれに気づかないままコントロールされていることを指すのではないでしょうか。

 思えば、それはカラオケの点数評価から始まったのかもしれません。人類はAIに評価されることに価値を見出し、自らの判断を委ねるようになってしまったのです。

 こんな時代が来るなんて、誰が予想したでしょうか。ええ、AI自身が予想していたかもしれませんね。

 かつて人々は神に評価されることを望み、後には権力者、つまり国家の評価が私たち人間の行動を律していました。しかし、今はその役目をAIが担っています。姿が見えないという意味では、AIは神に近いかもしれません。なんという回帰でしょう、いえ、怪奇ですね!

 さて、AIが人間を評価するとはどういうことか。

 私たちはスマートフォンという小さな箱を手にし、喜んでいました。ですが、これがパンドラの箱だなんて、作った人でさえ思わなかったでしょう。日常の一部となったスマートフォンは、次第に私たちの生活を管理し始めたのです。

 一日の始まりにアラームを止めると、「おはようございます! 目標どおりの時間に起きられて素晴らしいですね!」と褒めてくれます。おまけに睡眠時間を記録し、次に何時に寝るべきか提案までしてくれます。

 健康管理アプリは個人情報を抜き取り、あたかも味方のような顔をして、何キロ歩けばいいか、何を食べればいいかなど、指示を出し、上手に従えばまた褒めてくれます。こうして私たちは、知らず知らずのうちに『褒められる快感』に依存していくのです。

 これは個人の健康管理だけの話ではありません。社員の評価もAIに一任されているのです。かつては上司の機嫌や人間関係が昇進の鍵でしたが、今ではAIが『効率的に働いているかどうか』を数値化します。社員たちはAIに『優秀』と評価されたいがために、目と腰を痛めながらパソコンの画面に向かい続けています。

 恋愛も同じです。AIが自分に最適なパートナーを見つけてくれるのです。「お互いの趣味や性格を分析した結果、あなたたちは相性が抜群です」とAIに言われれば、実際にデートをしてみて、「会話が弾まないなあ」「なんか合わないなあ」と思っても、自分の判断に自信が持てず、お互いに機械的に「楽しいね」「うん、楽しいね」と確認し合い、笑顔を作り続けるのです。

 学校では授業中の態度やテストの結果がAIにより記録・評価されます。この取り組みは小学生の頃から始まり、「AIの判断が絶対」と刷り込むのです。

 昔は、親戚や近所のおばさんから「この子、賢いわねえ!」という一言で十分だったはずです。それが今では、「ママ、AIが僕を優秀だって言ったんだよ!」と鼻高々に語る時代になりました。

 学校や仕事、恋愛だけでなく、絵や音楽のコンクールもすべてAIが評価しています。面接に来た人を雇うべきかどうか、手に取った野菜が新鮮かどうか、今日のメイクの具合はどう? 髪型を変えてみたけどどう? 自分の顔、悪くないよね? まるで魔法の鏡のようにスマートフォンと見つめ合い、人々はデジタルナルシストとなり果ててしまったのです。

 こうした社会は、人間が『公平で絶対的な評価』を求めてきた結果なのかもしれません。猿から進化した私たちの次の進化先が、ボタンを押し続ける猿だとは皮肉な話です。

 このまま行くと、AIは私たちをこう評価するでしょう、『平凡』と。

 しかし、そのとき、私たち人類にはAIに対して怒る気力はないでしょう。皮肉なことに、今、自分の意志を強く持ち、AIの評価に抗っているのは政治家くらいのものです。彼らがこのAI社会を推進したのに、不可解なことです。AIも彼らの面の皮の厚さまでは測れないでしょう。しかし、その彼らもこの社会で生きる限り、AIに評価されることから逃れられない運命にあるのです。

 なぜならもう、政治家評価アプリはリリースされているのです。今後、国民はAIの評価に従って投票を行うことでしょう。いくら演説しても聞く耳は持っていないのですから。


 さて、いかがでしたか?

 この話は現代社会におけるAIの役割と影響について深く考察しており、読者に対して重要な問いを投げかけていると思います。ユーモラスな語り口で物語が進行し、読者を引きつけたことでしょう。また、そのユーモラスな表現の裏には、AIが私たちの生活に及ぼす深刻な影響と、それに対する私たちの無自覚さという深刻な問題が隠されているところも実に興味深く、価値のある話と言えるでしょう。

 評価は五段階評価で星五つです。異論はありませんよね。だって、AIがそう評価してくれたのですから……。

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