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やっぱり「物理」が最強!  作者: 和紗泰信
召還されたら無双したい
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第1回打ち上げ

 サイボーグ推しのミイを何とか説得して、パワードスーツで行くと押し切った俺は、どの様な機体にするかは後にするとして、まずは打ち上げを優先した。

 この時代で便利だなと思うのは、基本的に何でも転送機で済む事だ。俺の存在はトウキョウ・シティの機密らしく、拠点となる3階建ての建物を与えられ、基本的にそこから出ることはできない。だけど充分な広さを持つうえ、転送機で大抵のものは取り寄せが可能だ。打ち上げの食べ物や飲み物もしかりだ。


 俺は一度3階にある自室へ戻り、ポロシャツにチノパンというラフな格好に着替えた。3階には2LDKの家が20軒用意されている。俺とホムンクルス達が1軒ずつ使っているだけなので、あと7軒は空室である。まぁゲストルームにすればいいやと思っている。

 家の中には寝室と趣味部屋があり、あとはLDKという構成だ。趣味部屋というのは俺の時代でいえば仕事部屋かな。この時代には生活のために仕事をするという概念がないので、代わりに趣味を極めるための部屋があるらしい。これが一人暮らしをする上での最小構成だと言われた。

 そしてリビングは10人くらいが集まってパーティーができるくらい広い。他には風呂、トイレ、転送部屋だ。玄関もあるけど外出用の転送部屋があるというのがこの時代の家の特長なのだという。むしろ転送部屋がメインで、玄関は非常時に使うものだという認識らしい。とはいえ、こんな広い家に一人暮らしをするというのはまだ慣れない。前に住んでいたのはワンルームだったからなぁ。

 とりあえず玄関を出て非常階段だということになっている階段を使って2階に下りる。打ち上げを行う広間は2階にあるからだ。ちなみに拠点の2階には先ほどまで反省会をしていた会議室、食堂、これから打ち上げを行う広間、あとはトレーニングルームや情報分析室などがある。そして1階には装備を置いておくための倉庫やガン・ドロイドなどの整備用ハンガーがある。あとは転送機用の元素ストックヤードだと聴かされている。ちなみに屋上は緑化されていて、気候の良い晴れた日にはハンモックに揺られて眠ることもできる。なんだこのリア充建築物、と思わんでもない。


 2階の広間に入ると、メイド服姿のミイとミサが給仕用のアンドロイド達に指示を出してテーブルに料理を並べているところだった。13人分の食べ物なので、本格的なパーティーほどの量があるわけではないが、それでもそれなりの量にはなる。飲み物も持ってこないといかんしな。食堂だと電子レンジみたいな機械から食事がトレイごと出て来て、ドリンクバーみたいな機械でメニューを選んでボタンを押すと指定の飲み物がコップごと出てくる。これらにも転送機の技術が使われているらしく、メニューで選んだものが転送で送られてくるらしい。正確に言うと元素ストックヤードから必要な元素が必要な量だけ取り出され、料理データやドリンクデータを付け加えられて転送で電子レンジやドリンクバーから出てくるらしい。何でもデータかぁ……と思うと少し味気ない。


 そう思いながら彼らの働きぶりを眺めていると、広間に設置されている転送機からミクが現れた。うん、黒髪ロングの無表情メガネ娘は良いな。Tシャツとロングスカートの私服も似合っているぞ。ただTシャツにでかでかと書かれている「花」という漢字一字がちょっと残念な感じを醸し出してるけどな。なんで「花」なんだよ。俺、そんなセンスの性格設定したっけ?

 続いてボブカットの女性が現れた。あれはミナだな。白いワイシャツに、黒のパンツスーツ姿で、できるOLみたいな格好だ。というか「私服でね」って言ったのに、その格好かよ。相変わらず隙を見せないなぁ。

 続いて現れたのはクウヤとクミだ。おー、なんかカップルっぽい感じになってるぞ。クウヤいつもは前髪で目を隠すような感じなのに、今日は前髪をアップにしていて、チェック柄をベースにした服装だから不満そうな表情を除けば陽キャな若者で通じると思うんだが。ちなみにクミもお揃いというか、明らかにペアルックを意識した服装なので、潜入時に使う予定の服装を合わせていたのかもしれない。


「似合ってるじゃないか、2人とも。」

「でしょー。先行して潜入するときにはカップルで通用するようにと思ってコーデしてたんだー。」

「俺はこういうキャラじゃないから、ものすごく不満なんだけどな……」

「現地で別行動する時まで着てろって言わないからさー、それくらいは我慢しなさいよねー。」


 なんだかんだでクウヤがクミの尻の下に敷かれている感じが面白おかしい。ギャルっぽい性格と陰キャ性格なら、ギャルの方がぐいぐい引っ張るというのはラノベでもよく見るシチュエーションだけどな。


 そんな話をしていたら、暑苦しい格好の3人組が現れた。シロウ、ロイ、ロックの近接戦闘組か。なんで揃いもそろってTシャツに紺のチノパンとブルゾンなんだよ。仲良しか!?しかも全員ガタイが良いし、髪の長さも似たようなスポーツ刈りみたいな短髪だし、シロウが黒、ロイが赤毛、ロックが茶髪という違いくらいしかわからんぞ。もう少し個性を出せよ。俺の性格設定が甘かったのか?


「マスター、どうかしたのか?」

「いや、お前達3人、揃いもそろって同じ服装だなぁ、と。」

「あー、この間こういう服装は良いなって盛り上がっちまってな、その場で3人が同じものを注文しちまったんだよ。今日はそういう意味では内輪の会だから、まぁ良いかって話になったもんでさ。」

「まぁいいんだけどさ……。」

「それよりも、ヤヒチの服装にツッコミを入れる必要があるんじゃないか?」


 シロウに言われて転送機の方を振り返ると、甚平を着たヤヒチが現れたところだった。うん、黒の長髪を後でくくっているが、甚平も似合っている。


「ツッコミを入れる必要があるか?似合ってるじゃないか。むしろミクの方がな……」


 そこにいるメンバーでミクの方を見る。集まった視線に気が付いたミクがミナとの会話を中断し、こちらに振り向く。


「どうかしましたか?」

「いや、その『花』ってなに?」

「あー、疲れたら壁際にいようと思いまして。これなら立派に『壁の花』になれるかと。」

「『壁の花』ってそういう意味じゃないけどな……」


 はぁとため息をついた瞬間、大きな声が広間に響いた。


「遅くなりました!」


 ニックの声に振り返ると、長い金髪に白いワンピースのお嬢様と、同じく金髪で白いワイシャツにジーンズの弟といった組み合わせの2人が立っていた。うん、弟と思ってゴメン、ニック。で、そのお嬢様は誰?


「化けたなぁ、ニーナ。普段からそれくらい姿にも気をつければ良いのに。」

「やーよ、面倒くさい。打ち上げのパーティーだっていうから何とかしたけどさ。」


 シロウのツッコミに返事をしたその声はニーナのものだ。お前、ニーナか!いつものボサボサ頭にジャージの上下っていうファッションセンスはどこ行った?!っていうか、そういうのを持ってるんだったら、もう少しおしゃれにも気をつけようぜ!


「今回は私からお願いしておきましたから。」


 いつの間にかメイド服からゆるふわな感じのフレアスカート姿に着替えたミサが声をかけてきた。お姉ちゃん感がすごいな。うん、ミイもミサとのペアルックを意識しているのはわかったけど、キミの場合は同じ服装なのにそこはかとなく残念な感じが否めないのは何故だろうね。


「まぁいいや。全員揃ったみたいだし、そろそろ打ち上げを始めよう。」

「ではマスター。まずは乾杯の音頭を。」


 そう言ってミクがいつの間にかビールの注がれたジョッキを準備していて、それを俺に渡してきた。他のメンバーも給仕アンドロイド達からそれぞれ飲み物を受け取っている。基本的にアルコールのダメなメンバーはいないので、全員が何らかのアルコール飲料を受け取っている。ジョッキ組は俺とシロウ、ロイ、ロックにニックとミサ、ミナか。っていうかニックの高校生みたいな見た目で止めたくなる感と、ミサのゆるふわお姉さん姿とジョッキというギャップがすげぇ。

 他の連中はグラスを持っているから、カクテル類なんだろう。全員が飲み物を手にしたことを確認し、乾杯の音頭を取る。


「今回のミッション、お疲れ様。次回への反省点もまとめることができた。まずはみんなでクリアを祝おう。乾杯!」

「乾杯!」


 全員で杯を掲げた後、俺は一気にジョッキ内のビールを飲み干す。うん、鼻の下に泡の髭ができる良い注ぎ方だな。そう、これが良いんだよ。わかってる~。

 皆の様子を見渡すと、シロウ、ロイ、ロックの近接戦闘組は俺と同じように髭を作っている。イイネ。同じくジョッキを持っていたミサも飲み干している。髭を作っていないことから、何らかの手を打ったとみるべきか。ニックはまだ半分以上残しているな。

 他の連中も既に2杯目を取りに行っている者、飲む方はちびちびとやりながら、ちゃっかりと食べ物を確保している者と、いろいろだ。おっと近接戦闘組が食べ物を取りに行ったぞ。バイキング形式だから、こりゃ油断していると食べ物にありつけないパターンだな。俺も取りに行くとするか。

 

 今日の料理は基本的に俺の時代に存在した料理で揃えてもらっている。この時代では「THE定番」となっているらしい。「とりあえずは肉だ」と思ってミートボールや鳥の唐揚げなどを取る。あ、パスタも欲しいな。

 欲しいものを取っていると、横でミイが野菜を皿いっぱいに盛っている。そんなに野菜が好きなのかと思っていたら、俺に差し出してきた。


「マスター。肉ばっかりじゃなくてー、野菜も食べないとダメですよー。」

「それ、俺のために取ってたのか?」

「はいー。食べてくださいねー。」


 にっこり笑って押しつけてくる。お、おう、食べるよ。

 肉と野菜で両手が塞がったので、近くのテーブルに移動して、まずは食べることにする。白いテーブルクロスの掛けられた丸テーブルの席に座ると、向かいでは同じく肉と野菜の皿を前にしたヤヒチが黙々と食べている。


「ヤヒチ。楽しんでるか?」


 甚平姿のヤヒチは顔を上げて俺の方を見ると、口に頬張っていたものを飲み込み、左手の親指と人差し指を顎に添えてちょっと考えてから話し始めた。


「そうですな。食事など栄養が取れれば良いと考えておりました。しかしこういう料理も良いものですな。大抵は固形食糧で済ませてしまうのですが。」

「拠点でもかい?」

「ええ。片手で食えますし、どんな姿勢でも、それこそ寝っ転がっていても食えますからな。」

「それは横着しすぎじゃない?」

「そうかもしれません。性分なもので。」


 俺もミートボールを口に放り込みながら「食事はもっと楽しまないとダメだよ」などと話していると、ミサが両手に飲み物がなみなみと注がれたジョッキを持ってきて俺たちのテーブルに座った。俺たちの分か?ヤヒチはビールじゃなさそうなんだけど。

 すると、まずは左手に持っていたジョッキを口に当て、一気にあおった。ちょっとミサさんや。その飲み方はどうなの?


「マスタぁ、もっと言ってやってくださいぃ。ヤヒチさんってば、ミッション用のレーションばっかり注文するんですよぉ。」


 おっと、ミサさんや。結構酔ってますね?これ指摘した方が良いやつか?それとも……。


「あーっ、よってるって思ってるれしょ!こんなのまだまだじょのくちなんれすよ~。」


 今度は右手に持っているジョッキの中身を一気にあおる。ん?よく見ると泡がたってない。もしかして結構キツメの酒なんじゃ……。

 背中に冷や汗が流れた。他のメンバーに確認しようと振り返ると、近接戦闘組は俺を見て首をぶんぶんと横に振っている。ミクは宣言通りに「壁の花」になっていて「我関せず」という雰囲気を出しまくっているし、クウヤはクミにいじられている。ニーナとニックも食べるのに忙しそうだ。

 そうだ、こういう時はミナに頼もう。そう思ってミナを探すと、既にテーブルに突っ伏してすやすや眠っていた。


「きいてますか?わらしはよってなんかないんですよぉ……うふふふ。ますたぁだいすき~。」


 そう言って俺に抱きついてきた。好きだと言われたこととか、柔らかいものが当たってるのは嬉しいが、酒臭っ!これはダメだ。今日のところはこれでお開きにして、打ち上げの反省会が必要だな、と心に誓った瞬間、ミサがどこからか取り出した酒瓶を俺の口に突っ込んだ。俺の意識が途切れたのはその数十秒後だった。

そろそろ本格的に動き出します。

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