表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やっぱり「物理」が最強!  作者: 和紗泰信
共闘のススメ
32/55

ミッション5クリア ルォシーの視点

登場人物が増えたので、ちょっと新キャラを整理


近接戦闘3体。ナオ【70】をリーダーとして、ナミ【73】、ナナ【77】。

遠隔攻撃1体。ヤオ【80】。

参謀・護衛2体。ヒトミ【13】、イヨ【14】。

情報分析2体ヒトハ【18】、フタバ【28】。

諜報・潜入2体。シイ【41】、ヨナ【47】。

補給・輜重2体。サヨ【34】、サヤ【38】。

今回はサヨ、サヤの出番はなし。あ、ヒトハとフタバもか。

 ユウキのサポートメンバーであるニーナから、支援が途切れるという連絡が来た。ユウキ達の方にもかなりの数の敵が現れたということのようだ。いつまでも頼るのではなく、そろそろ私も本領を発揮するべきだろう。ベイジン・シティの連中もこの戦闘は観ているだろうから、自分たちの産み出したものがどういうモノなのかを見せておく必要はある。見せつけることで、私に対する干渉をためらわせることが必要だ。何しろ、1ヶ所目のポイント攻略はユウキ達との連携は上手くいったものの、私のチームの力を100%出せていたとは言えなかったから。


「みんな、聞いての通りよ。あとは私たちだけで何とかするしかないわ。」


 みんなが肯定の意志を示してくる。急造なのは間違いないけれど、キチンと私の意図をくみ取ってくれる。良いチームに仕上がったと思う。


「ユウキ達が敵を分断してくれましたが、再編が早く、なかなか突破できません。」

「それと、後方からの増援が小まめにやって来ているようで、敵数の減少が鈍いのも難点です。」


 確かに。私たちの部隊とユウキ達の支援攻撃で1千体に及ぶ敵が破壊されているはずなのに、なかなか突破ができないでいる。展開していた敵が私たちの正面に集まって来ていることが突破できない理由だろうと思える。ここは何としてでもこれを突き破る必要があるわけね。


「時間が惜しいので、一気に中央突破を行い、目標ポイントに到達します。ナオ、ナミ、ナナ。私はこれから単身で中央に切り込み、目標ポイントを目指します。あなた達もそれぞれの部隊を率いて、私の切り開いたエリアを基点に敵を排除しなさい。」

「しかし、それでは押しつぶされてしまうのでは?」

「ですからヒトハ、フタバと一緒に作戦を考えました。ナオとナミは中央突破後に、向かって左側の敵の後に回り込み、これを包囲・殲滅してください。ナナはその間、向かって右側の敵を牽制して、左側の部隊へ合流できないようにしてください。」


 私は3人が頷くのを確認して、他のメンバーにも指示を出す。


「ヤオは配下の戦力を使ってナナの部隊を援護。ヒトミとイヨは私が突破したあとは、一緒に目標ポイントへと進出し、敵の追随を牽制してください。」

「私とヨナはどうすれば?」

「シイとヨナは目標ポイントへの先行偵察をお願いするわ。私の露払いをして頂戴。それじゃあ、みんな、やるわよ!」

「アイ、マム!」


 私はエアバイクを降り、レールガンを左右の手に1丁ずつ持った。そして加速モードに入る。本当はエアバイクを外骨格装甲モードで使いたかったけれど、加速モードに入ったにとっては、空気抵抗が大きくなる足かせでしかない。だから諦めることにした。

 とはいえずっと最高速度で加速したままだと10分もすると放熱が追いつかなくなって熱暴走してしまう。だから移動の時だけ加速し、その後はその場所で暴れるとする。囲まれそうになったら再び加速するということを繰り返していけば、熱暴走せずに長時間戦えるはずだ。ちなみにトウキョウ・シティで訓練ついでに能力把握をしたところ、私は最高秒速200mで走ることができる。時速だと720kmだ。半分の秒速100mでも、私たちがいた時代の世界記録保持者の10倍近い速さで走れるということだ。

 筋力も大幅にアップしている。インストールした中国拳法の動作と組み合わせれば、ガン・ドロイドの装甲を貫けるだけのパワーがあることも分かっている。どうせ相手は私を殺すことはできない。だったら無双モードになるはずよね。


 とりあえず秒速100mで敵のアンドロイド兵部隊の間をレールガンを乱射しながら駆け抜けていく。支給されたアクティブ・アウトフィットは、加速モードに入ると空気抵抗を減らすように形状変更してくれる。そのおかげでスムーズに移動が可能だ。また靴底もスパイク状になり、地面をしっかりと噛んでくれる。そうでなければ受ける空気抵抗で地面との摩擦が減り、走りにくくなる。この辺の何気ない気配りはどれだけ時代が変わったとしても日本という国の個性として受け継がれているのかもしれない。

 もちろん敵が密集している場所なので、スムーズに移動はできるけど直線的に走れるわけではない。それでも1分も走ると、幅50mほどの敵をなぎ倒した上で、元いた場所からは500mほども進むことができた。バッテリーと一体化されたレールガン用の弾倉の残りは半分くらいになっているので、ここらで味方が追いつくのを待ちながら、少し暴れるとしよう。


「さぁ、ショータイムよ!」


 まずは両手に持ったレールガンを向かって右側の敵部隊に向かってガンガン撃っていく。ナナの負担をできる限り減らしてあげないといけないから、できるだけ多く破壊しておく。固定砲台よろしく撃ちまくったおかげで、2分も保たずにすべての弾倉が空になる。じゃあ、レールガンは後続のヒトミとイヨに回収してもらうとして、ここからは格闘戦モードね。要は、物理的に殴ったり蹴ったりするだけなんだけど。

 私は再び正面に向き直り、接近してくる前衛のアンドロイド兵、そしてその背後に陣取っている後衛のガン・ドロイド達を見据える。まずは味方の邪魔になるガン・ドロイドを排除しよう。正面にいるのはざっと30体ね。


 再び加速して一気に前衛のアンドロイド兵達の間を突っ切り、後衛のガン・ドロイド部隊に切り込む。

 そして1体の背後に回り込んで思いっきり、殴る!


 ガン・ドロイドは正面装甲が厚い。特に制御中枢は複数の装甲に覆われているので、レールガンクラスでないと一撃で破壊するのは難しい。だけど、メンテナンス性や補給の容易さを考えて、バッテリーは背面の比較的装甲の薄い場所に配置されている。トウキョウ・シティにいる間、私は幾つかの種類のガン・ドロイドについて、バッテリーから本体へと電源を供給するコネクタの位置を頭に叩き込んで、撃破する訓練をした。おかげでこのタイプのガン・ドロイドなら、確実に一撃で破壊できるようになった。


 なんか魚を絞めるのに似てる。ちょうど良い位置に加速モードで移動し、一撃必殺のポイントを殴る。それを30回繰り返すだけの簡単なお仕事だ。前衛のアンドロイド兵はフレンドリーファイアを避けようと、撃ってこない。私に当たるとマズイという判断もあるんだろう。それに背後には味方が迫ってきているから、私だけの相手をしている場合でもない。だから、3分程で30体を撃破した。1体あたり6秒か。

 なんだろう、釈然としない。ユウキから聞いていた「無双モード」には爽快感があるという話だったけど、全くない。淡々と作業をこなした疲労感というか、面倒な事をやり終えて「ふぅやれやれ」という感じしかしない。敵との駆け引きがなかったからだろうか?


 そんなことを考えていると、一部のアンドロイド兵達が私に向かって何かを放り投げてきた。イヤな予感がしたので投擲物から距離を取る。すると投げられた物体は地面に落ちた瞬間、周辺に電撃をまき散らした。なるほど、ナオ達の相手をする部隊から一部を抽出し、私に対応する分隊を編制したのか。そして非殺傷兵器としてスタングレネードを使ってきたわけだ。確かに人間なら一撃で気絶するだろう。アクティブ・アウトフィットを着ている私たちにどれだけ効果があるのかはわからないし、そもそも改造された私には効かないかもしれない。それでも一瞬の隙ができる可能性はある。あれの効果範囲には入らないようにしないと。


 次々と投げられるスタングレネードを避けつつ、アンドロイド兵の密集する所に殴り込む。彼らは絶縁処理がしっかりとできているのか、スタングレネードに関しては味方が近くにいようと遠慮無く投げつけてくる。ライフルもスタンガン仕様に変更したのか、私に向けて遠慮無く撃ってくる。それを加速モードで避けつつ、1体ずつ懐に飛び込んで殴る。そして背後に回り込もうとしていた別の1体を回し蹴りで顔面を破壊する。

 続いてその横にいた1体の胸部に肘を撃ち込み、そいつを盾にして撃ち込まれてきたスタンガンの弾をやり過ごす。あ、なんかちょっと楽しくなってきた。


 その後もアンドロイド兵の顔面を殴る。側頭部にハイキックを見舞う。腹部に肘打ちを入れる。ローキックで足を掬ってひっくり返した上で、頭部を踏み砕く。

 スタングレネードの影響範囲を避け、場合によっては投擲直前に破壊された部品を、放り投げようとしている手首に向かって投げつけて足下に取り落とさせるなど、加速モードと通常速度を切り替えながら戦闘を続けた。


「マスター、お待たせしました。」


 そして遂にナオ達が合流する。無事に中央突破を行う事ができた。ここからは残る敵の殲滅を行う隊と、牽制を行う隊、目標ポイントに突入する隊とに分かれる。


「みんな、御苦労様。じゃあ当初の予定通りに。」


 今後の役割を再確認し、分散した。ナオとナミは西側の部隊を包囲殲滅。ナミはヤオと一緒に東側の部隊の足止め。私はシイとヨナがエアバイクで先行する通路を、ヒトミとイヨを従えて、同じくエアバイクで進んで行く。私が放置していたレールガンはヒトミとイヨが回収し、私のエアバイクに載せてくれていた。弾倉を補充できたので、また攻撃で使える様になるのはありがたい。


 侵攻中、一度だけ敵部隊が行く手を遮ったんだけど、その時はユウキが排除してくれた。


『任せろ、排除する!』


 突然の通信に驚いたけど、向こうも危機的状態は脱したらしい。何しろガン・ドロイドとアンドロイド兵の全戦力を私たちに振り分けてくれていたので、ユウキ達は少数で敵に当たらないといけない。結構大変だろうと思うけど、戦い慣れている彼らは問題なく敵を捌いているようだ。


 そして私たちは目標ポイント内に突入した。エアバイクを外骨格装甲モードに変形させ、ホバー機能を活かして目標だった倉庫内を移動していく。てっきり内部にも敵戦力が配置されていると思っていたけど、全くいない。すぐにサーバールームに到達し、シイ、ヨナとも合流する。


「なんか拍子抜けね。」

「そうですね。おそらくこれ以上の抵抗は無駄だと考えているのでは?」


 そんなに甘い相手じゃないと思うんだけどな。そうでなければあれだけの戦力を揃えて防衛していた意味がないと思う。


「ここを守りたい勢力が戦力をかき集めたのですが、私としては無駄な戦闘なので止めさせたいのですよ。」


 全員で突然声のした方向に向かって警戒態勢に入る。そこには1人の老紳士が立っていた。さっきまでは誰もいなかったのに。たぶん彼がユウキの言っていた「案内人」なんだろう。「嘆かわしい」という感じのジェスチャーをして、諦めたような表情をしている。


「もしかしてあなたが『案内人』なのかしら?」

「タカシマ様から聞いているようですね。その通りです。」


 確か彼に頼めば、サーバーは止めてもらえるということだった。本当かしら?


「ユウキからは『案内人に頼めばサーバーを止めてもらえる』って聞いてきたけど?」

「はい、停止させられます。すでに私の方でサーバーは止めております。」

「そう。じゃあこれでミッションクリアね。」

「本来ならそうなのですが、私のコントロールできない状態に陥っておりまして。」


 案内人は困ったような顔をしてそう言い放った。コントロールできない状態って、何?


「どういうことかしら?」

「どうやら防衛戦力をかき集めた勢力は、あなた方をこのまま帰すつもりはないようでして……」

「つまり?」

「外へ出た瞬間に、残っている戦力からの攻撃を受けるということです。」


 また、面倒な。仕方が無い。ユウキと相談するしかないわね。


「ユウキ。案内人の話はそちらにも聞こえた?」

『ああ。面倒だから、俺の方でまとめて敵を吹き飛ばすわ。』

「どうやって?」

『ああ、待ってくれ。【滅びの光よ、すべてを焼き尽くせ。アニヒレート・レイ!】』


 ユウキが魔法という名の攻撃呪文を発動させると、ノイズで通信がかき消された。しばらくはノイズだらけだったが、10秒ほどで元に戻る。


『近隣の敵を排除した。クミとクウヤへ迎えに来てもらえるよう連絡を入れたから、なるはやで戻ってきてくれ。とっととずらかろう。』

「了解。みんな聞こえた? 脱出するわよ。」

「アイ、マム。」


 私は案内人に向かって告げた。


「じゃあ、私たちは帰るわ。」

「はい、お気を付けて。またいずれ、どこかのシティで会いましょう。」


 なるほど。これが案内人ね。一体、彼は私たちをどこに案内しようとしているのかしら?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ