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やっぱり「物理」が最強!  作者: 和紗泰信
共闘のススメ
30/55

合同パーティー戦のつもりだったのに

 今回の作戦も地元シティ連合の協力を得ている。ただ、住宅地が周辺に広がっているため、迂闊に接近できないのがネックになっていた。そこで、航空機を使った降下作戦を中心に据えることとした。俺たちも輸送機から飛び降りる形を取っているが、シティ連合のガン・ドロイドやアンドロイド兵も落下傘部隊というか、逆噴射で降り立つ形にした。住宅地が多いと住民に被害を与える可能性が高くなるため、なかなか対空放火での撃墜をやりにくいだろうというわけだ。


 その中に混じって俺たちもM1道路が直線になるポイントで降下を行った。実際には道路上空50m以下にまで高度を下げてもらい、後部ハッチからエアバイクを変形させた外骨格装甲のホバーユニットを使って軟着陸を行う。というか着地せずにそのままローラーダッシュならぬホバーダッシュで一旦集合地点に向かう。集合地点まで100mもないので、いちいちホバーバイクモードに戻すのも面倒だということで、そのままだ。まぁ実際のところ、戦闘状態ではエアバイクモードと外骨格装甲モードでほとんど速度に違いはないしな。

 でもこのスタイルには納得してないぞ。これは魔法使いのスタイルじゃない。こんなメカメカしい外観の外骨格装甲に身を包んだ魔法使いなんているもんか! だからとっとといつものスタイルに戻したい!


 だが俺の不満は横に置いた形でミッションは進んで行く。実際、今回は物量で押しつぶす前提の作戦内容になっている。何しろ攻略ポイントが分散されている可能性がある。最大3ヶ所までは絞り込めたものの、どこが本命かわからないので、ターゲットとおぼしき場所すべての防衛戦力を無力化することになった。つまり「疑わしい場所は全部壊してしまえばいいじゃない」という、脳筋お嬢様が考えたような作戦になっている。よってぐだぐだ言っている暇はない。早くしないと味方にもシティにとっても被害が増えるだけだからな。


 集合地点で外骨格装甲モードからエアバイクモードに変形させた後、俺たちは37号線、50号線を経由してヤラビル・ガーデンズへと進んで行く。ここが攻撃を始めるにあたっての現地部隊との集結地点だ。本来なら35号線を北上するのが戦闘エリアへ直通するルートなのだが、このルートは敵から狙い撃ちにされる可能性が高いため、住宅地を経由することにした。誉められたルートじゃないけどな。もし敵からの攻撃があれば、周囲の住宅に被害が出る可能性もある。

 ただ良かったことに、空挺飽和攻撃が功を奏したのか、俺たちへの攻撃は全くないままヤラビル・ガーデンズへ進出できた。すでに現地のシティ連合軍の用意した新型ガン・ドロイドが集まっていた。なんと、俺たちのエアバイクと部品を共通化し、キャタピラではなくホバーダッシュが可能となったタイプだ。ガン・ドロイド2だと紹介された。名前……もうちょっと何とかならなかったかなぁ……。気を取り直していこう。


「よし、ここからはルォシーが前衛部隊を、俺が後衛部隊を率いて攻撃を行う。後衛が長距離攻撃で道を開くから、前衛はそこを突破しつつ、ナノマシンの散布を行って欲しい。」

「わかったわ。障害は物理的に排除して構わないわよね?」

「もちろんだ。だが進行方向だけに注力してもらって構わない。側面はロイとロックに現地のガン・ドロイド部隊を率いてもらう形で担当してもらう。中央はシロウな。あとナノマシンが散布されれば、俺の方でも何とかできる。」

「了解! じゃあ行くわよ!」

「イエス、マム!」


 今回はシロウ達近接戦闘組をルォシーに貸し出す。逆にルォシー組の長距離戦闘メンバーは俺の指揮下に入っている。

 ちなみにルォシーはサポートチームの用意を俺たちに丸投げしてきたので、俺のチームと同じ構成で、命名も適当に行った。またもや数字シリーズだ。

 近接戦闘組は3体。ナオ【70】をリーダーとして、ナミ【73】、ナナ【77】。

 遠隔攻撃はヤオ【80】。

 参謀・護衛はヒトミ【13】、イヨ【14】。

 情報分析はヒトハ【18】、フタバ【28】。

 諜報・潜入はシイ【41】、ヨナ【47】。

 そして補給・輜重はサヨ【34】、サヤ【38】だ。

 一応、全員が女性型なのはルォシーのリクエストに沿っている。


 そのため、今回の編成ではルォシーはナオ、ナミ、ナナ、シロウ、ロイ、ロック、ヒトミ、イヨを引き連れていく。ガン・ドロイド部隊もまとめてルォシーの麾下に組み込む。

 一方、俺はヤヒチ、ヤオ、ミク、ミナを連れている。遠隔攻撃を行うだけなら俺たちだけで充分だ。ちなみにヤヒチとヤオにも大型レールキャノン&大出力レーザー砲を装備させている。正確には彼らの乗るエアバイクに、だが。俺? 俺はほら、魔法使いだから。いつものスタッフですよ。バッテリーマシマシにしてるけどな。


 他にクミとクウヤはいつも通り輸送機操縦をお願いした。たぶん今頃はロイヤル植物園に強行着陸しているはずだ。

 またルォシー組のシイとヨナは一足先に潜入任務で現地に入っている。

 

 さて、今回の目標として設定されたのは3ヶ所。俺たちの現在位置から近い順に、クード運河東岸施設、旧サウス・ケンジントン駅に隣接する施設、そしてムーニー・ポンズ川東岸施設だ。

 俺たちはクード運河東岸施設を攻略後、二手に分かれて旧サウス・ケンジントン駅方面はルォシーが、ムーニー・ポンズ川東岸は俺たちが攻略する予定だ。

 サウス・ケンジントン駅方面には、北東側のロイヤル・パークに地元シティ連合の主力部隊が展開し、北西にあるフレミントン競馬場へと終結している第2部隊と共に注意を引きつけてくれている。シイとヨナもこちらに潜入している頃だ。

 またロイヤル植物園に集結した第3部隊はクミとクウヤの到着を待たずにヤラ川を下ってドッグランズ方面に移動を開始している。これが陽動になっているので、敵もヤラビル・ガーデンズにいる俺たちが本命だとわかっていても、こちらに部隊を向けられないでいる。正直、ほかの2ヶ所は地元シティ連合だけで攻略を終わらせて欲しいくらいだ。


 などと愚痴っていても始まらない。まずは先制攻撃と行こうじゃないか。


「あまたの光よ、我が槍となりて敵を貫け。トリニティ・レイ!」


 今回のミッションに合わせて更に出力を上げた。ぶっちゃけエアバイクからのエネルギー供給ができるようになったので、出力を上げると同時に光線の数も10条から100条にまで増やした。1回の呪文で敵兵100体をなぎ払えるようになっている。それをルォシーの突入する道を確保するために、ほぼ一直線に集めて攻撃を行う。隣ではヤヒチとヤオも大出力レーザーとレールキャノンでそれぞれ遠慮のかけらもない攻撃を始めている。


「さぁ、行くわよ!」


 ルォシーは外骨格装甲モードで突入を始めた。彼女もこの段階では通常兵器である、手に持ったレーザーガンと肩の上に載せられたレールキャノンを乱射しながらホバーダッシュで突入していく。

 敵からすればルォシーを数で囲んで拘束するのを目的とするだろう。この辺は俺に対したときと同じだ。だから今回は大量のアンドロイド兵を投入してきやがった。だからといってこちらがそれに付き合う必要はないので、拘束されないように護衛を増やすという形になる。

 というわけで、今回は敵味方含めて5万体以上のガン・ドロイドやアンドロイド兵が投入されているという、昔の戦争レベルと言って良い、大規模武装集団同士の衝突となっている。おかしいなぁ……俺の予定ではパーティー戦のつもりだったのに、完全に戦争だよなぁ、これ。まぁ大規模攻略戦だと思えば良いか。


 現在、俺たちが向き合っている正面には、敵が約6000体。すべてを破壊する必要はないが、少なくとも3割くらいは何とかしないと最初の目的地にまで辿り着けなさそうだ。味方は2000体ほどだから約3倍の敵と戦い、味方とほぼ同数の敵を何とかしないといけない。

 ルォシー達は果敢に切り込んでいるものの、敵の数に圧倒されて侵攻速度が落ち始めている。このまま止まってしまうと数で押しつぶされてしまう。何とかしないとマズいな。ナノマシンの散布もまだまだ弱い。散布できた範囲が狭すぎて大規模大気操作は難しい。となると……。


「みんな、あれを使うしかない。」

「しかし、ここからですと味方にも被害が出ます。」

「それはわかっている。ルォシー達を援護するためにどこで撃ったら良いか、わかるか?」

(マスター。こちらで最適地を弾き出しました。そこから500m北に移動し、ドッグランズ・スタジアムを目標にして発射して下さい。それで敵右翼の後ろ側を削れます。)

「わかった。ヤヒチ、ヤオ。ここは任せる。ミク、ミナは俺の護衛だ。」

「イエス、マスター!」


 そう、これから使うのは今回新たに実装された、キャシーの「レウコシア」の劣化版だ。それでも敵を大幅に削れるはずだ。

 配置についた俺の周囲をミクとミナが固める。敵はいないので慌てる必要はないが、味方が巻き込まれないように発射方向は細かく制御する必要がある。味方には敵の左翼側に方向を転換してもらっている。もちろんそこの道をヤヒチとヤオの2人だけが遠距離攻撃で切り開いているので、負担は大きくなっている。なるべく早くしないと、俺の不在がばれてしまう。


「準備はできた。方位もこれで合ってるか?」

(大丈夫です。発射して下さい。)

「わかった。」


 ミクとミナも俺の後方に位置を変える。これで発射準備が整った。俺はスタッフの方向を固定して呪文を唱える。


「滅びの光よ、すべてを焼き尽くせ。アニヒレート・レイ!」


 発射されたガンマ線が敵の右翼に襲いかかる。キャシーのレウコシアほどの威力はないが、それでもガンマ線ビームから生み出される高エネルギーの副次放射線が敵を機能停止に追い込んでいく。味方の被害はかなり抑えられたようだ。敵の右翼からの攻撃を受け流すことに注力していたロイの部隊は一気に反転攻勢に出始めた。またルォシー達も敵左翼方面に進んでいたのを90度方向転換し、食い破っていく。当然敵の左翼はルォシー達の後方から攻撃を仕掛けようとするが、ロックの部隊が支える。それをヤヒチとヤオが支援する。俺もチャージの終わったスタッフを構え、敵を混乱させるべくファイヤーボールを撃ち込む。エアバイクに原料を多く積めたので、完全にナパーム弾となっているけどな。


「マスター、ルォシーさん達が敵を突破しました。このまま第1目標に突入するようです。」

「よし、じゃあ俺たちも突入しよう。近くでルォシー達を支援しつつ、ナノマシンを使った魔法も試しておこう。」


 俺はミク、ミナを伴ってヤヒチ、ヤオと合流し、エアバイクでアニヒレート・レイによって焼き払われたエリアを突破する。特に妨害を受けることもなく目標地点に到着した俺たちは拠点奪還に向かってくる敵の残存部隊を抑えながら、ルォシー達が目標を制圧するのを待つ。なんだかんだで30分近い防衛戦を戦ったところ、敵が旧サウス・ケンジントン駅方面に撤退を始めた。向こうの部隊と合流するのだろう。


 しばらくすると建物の中からルォシー達が現れた。


「目標クリアよ。」

「おお~、やったな、ルォシー!」

「まずは1ヶ所目。あと2ヶ所でしょ?」

「ああ。旧サウス・ケンジントン駅方面には、さっきまで相手をしていた連中も向かったから、結構な数が残ってると思う。」

「そうね。こっちは物量作戦になるから、ガン・ドロイド部隊は借りていって良いのよね?」

「ああ、全部持ってけ。」

「ありがとう。ナオ、ナミ、ナナ。シロウ達から指揮を引き継いで頂戴。」

「イエス、マム。」


 引き継ぎを行っている間に、俺たちの方も作戦内容と合流地点の確認をする。旧サウス・ケンジントン駅方面の方が敵の数も多いので、俺たちの方がさっさと片付けて、南東方面から合流する前提で内容を詰める。


「じゃあ、あんまり無理をしないように。行けそうだったら構わないけど、厳しそうだったら俺たちが合流するまでは戦力の維持に努めても良いからな。」

「わかったわ。じゃあ、また後で。」


 ルォシー達を見送った後、メンバーの減った俺たち、というか、シロウ、ロイ、ロック、ヤヒチ、ミク、ミナと俺だけなんだが、ムーニー・ポンズ川東岸施設に向かう。この人数で行った方が、よほどパーティー戦っぽいよな。さて、次はさっき不発だったというか実行できなかったナノマシンを使った魔法を使ってみよう。

 そう心に決めて、俺たちはエアバイクを発進させた。

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