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やっぱり「物理」が最強!  作者: 和紗泰信
召還されたら無双したい
3/55

戦うべき相手

連続投稿3話目です。

 さて、戦うべき相手を確認するとしよう。一体誰と戦う必要があるんだ?魔物か?それとも魔王か?


「ということは、私が戦うのは国を襲う魔物や魔王といったところですか?」

「いえ、魔物や魔王が存在するわけではありません。ですが、魔王というものがいてくれた方が楽な相手かも知れません。」

「どういうことでしょう?」


 うん?魔王はいない。魔物もいない。でもそれよりも厄介な相手だと?どういう相手なのか気になるな。


「実は我々も敵の正体がよくわかっていないのです。これまで交流のあった都市国家と突然連絡が取れなくなったり、転移陣が使えなくなったり。それ以外にもイーストケイの勢力範囲の外縁部で、不審な活動が認められるなどです。ところが、これらが何故発生したのかがわからないのです。」


 いや、わかってなさすぎだろ。これはその調査から入らんとダメなヤツか?俺は勇者とか賢者として活躍したいとは思うが、勇者の仕事に調査って入ってたかなぁ……。

 そんな考えが顔に出ていたのか、ミドフィールド卿は慌てて言葉を重ねて来た。


「もちろん、我々も調査を続けております。その結果、原因が確定したわけではないのですが、どうやら問題を引き起こしている場所についてはある程度の目星がついてきております。それに我々も全く孤立しているわけではなく、近隣の都市国家とは交易も続いておりますし、遠方でも連絡の取れている都市国家とは対応策についても話し合いを続けております。」


 近隣の都市国家と問題なく交易ができているのであれば、まあ良いのだろう。だとすると戦う相手は交易の邪魔になる、というか邪魔をしている連中ということか。例えば悪の秘密結社とか?


「それでは私が戦う相手というのは?」

「その『問題がある場所』を正して、元の状態に戻して欲しいのです。」

「そうなのですね。問題の場所を正す、ですか。」

「はい。ですのでタカシマ殿には我々が特定した幾つかの場所の状態を正していただきたい。残念ながら私たちでは正すことができないのです。」


 ふむ。それならば勇者の仕事っぽいな。どこかの古代遺跡が変な活動を始めたのでそれを破壊するとか、もしくはそこに生息する魔物……あ、魔物はいないんだっけ。ということは生物とかそういうのが何か周辺に影響を与えているので討伐するとかだな。うん、わかりやすい。


「なるほど。では早速その場所を正すこととしましょう。」

「おお、さすがは勇者殿。決断が早い。」


 ジョセフ王が感心してくれる。まぁな。俺も折角なのでこの世界を楽しみたいしな。


「しかし勇者殿は召還された直後。まずは休息も必要だろう。その上で歓迎の意味を込めた宴を催すとしよう。ミドフィールド卿、頼めるか?」

「はい、お任せを。まずは晩餐会を開き、タカシマ殿の召喚成功を広く知らしめましょう。その後はこの世界のことをもう少し知っていただく時間と致しましょう。ですので少しお休みいただいた後に具体的な今後の活動方針などについてお話ができればと考えておりますが、いかがでしょうか?」


 おお、晩餐会か、いいね。ただ、テンプレ的には現代人の舌に合わない料理が出てくることも多いんだよな。ほら、現代知識で料理チートする作品も多いしさ。でもまぁ不味くなければ良いことにするか。どうせコンビニ弁当とカップ麺で生活してたんだし。あとはファストフードのハンバーガーセットな。塩分多めの食事だよ。


「それは楽しみです。ですが……」

「何か懸念点がおありですか?」

「はい。晩餐会も良いのですが、やはり召還された以上は、成すべき事についてある程度は知っておきたいと思います。おそらく晩餐会の際にお話をする方々とも、そのような話題になるでしょうし。その時に答えられないというのは、少々マズいのではないかと思うのです。」

「……まぁ、確かにそうですな……」


 おや?何やらミドフィールド卿が困ったような顔で国王陛下の方を見ているぞ。何かマズいことを言ったか?特に問題ない発言だと思うのだが。

 そして国王陛下の方も「どうしよう」って顔をしているぞ。それだけじゃない。周りにいる連中もだ。俺に知られるとマズいことを隠しているような気配がする。そう、俺のちょっとブラックな感じの社会人経験が、失敗しつつあるプロジェクトに何とかして俺を放り込もうとしている時と同じ気配を感じ取った。なんだ、このイヤな感じは。ちょっと逃げたくなってきたぞ。


「えっと、そんなにマズイ状況なのですか?」

「いえ、マズイ状況ではないのです……ただその場所というのが……」


 正すべき場所に問題がある、ということか?そんなにヤバイ場所だと?


「ミドフィールド卿よ。ここまで来たら隠し立てしても仕方あるまい。タカシマ殿には正直にお話しするべきだ。」

「はい、それはそうですね。わかりました、お話しします。実は正して欲しい場所というのは、他のブロックに属している都市国家にあるのです。」


 ん?他のブロックですと?どういうことだろうか。もしかして同じ人間の都市国家ということか?


「他のブロック、というのは?」

「先ほど、元々の国に属していた都市国家で同盟を組んでいるという話をしましたよね。その同盟のことを『ブロック』と呼んでいるのです。」

「なるほど。他のブロックというのはつまり、このイーストケイ都市王国と対立関係にある別の都市国家同盟ということですか?」

「対立関係とまでは申しませんが、競争関係にあることは間違いありません。」

「競争関係……そこが送り出した、交易の邪魔をする者の討伐とかですか?」

「確かに交易の邪魔をするものを放たれてはおります。それらの討伐もお願いはしたいのです。でもそれだけですとモグラたたきと同じですから、根本的な解決が必要だと考えております。」

「もしかしてその都市国家は魔王……というのはいないのでしたね。何かそれっぽい何者かに占領されているのですか?」

「そうですね。がめつさだけで言えば、連中のトップは魔王と言っても良いかも知れません。」


 なんか雲行きが怪しくないか?魔王や魔物は存在しないと言っていたよな。魔王と言っても良いとか、「邪魔をするもの」とか……。まぁ召喚魔法もあるわけだから、もしかしたらそういう「邪魔をするもの」は魔物とは呼ばずに、なにか召還された生物とか、怪物と呼んでいるのかもしれない。


「とりあえずこの国とその周辺国を脅かす他の都市国家の有り様を正し、彼らが放った妨害者を排除するということですね。」

「左様です。」

「しかし、単に他の都市国家というだけであれば、この国の兵士だけでも対応可能なのでは?勇者を必要とする要素がどこにあるのか、よくわかりません。」


 おい、国王陛下。その「あちゃー、気が付いちゃったよ」みたいな顔はやめろ。そして周りの連中。「どうする、どうする?」みたいな話をひそひそとやるのもやめろ。全部聞こえてるからな。ほら、ミドフィールド卿が困ってるじゃないか。いや、困らせたのは俺のツッコミか。


「……その……正すべき相手というのが、競争関係にある都市国家へのアドバイスを与えている……そう、神と呼んでもいい相手でして……。」

「神……ですか?」

「はい。わが国も様々な神託を受けながら国を運営しております。大抵のことは我々が自由に決められるのですが、時々神託が下されまして、それに対して逆らうわけにはいかないのです。」


 ほう。つまり、相手の国に神託を出している神に問題があると。ってか、相手は神様かよ!


「相手の国に神託を出している神を倒せ、と?」

「まだ神が問題を引き起こしているかどうかはわかりません。もしかしたら神託を受ける神官や巫女に相当する人物が、本来の神託を歪めて伝えている可能性もありますし。」

「なるほど。」


 勇者というか探偵みたいな仕事だな。でも結果として神と闘わなければならない可能性もあるわけだ。結構ヘビーなシチュエーションじゃね?そんなのを相手にするなら、こちらもそれなりの装備と加護、チート能力がないとダメだしな。いや、もしかしたらスゴいチート能力をもらってるってことか!ワクワクしてきたぞ。


 じゃあ早速俺のステータスを見てみるか。


「成すべきことがわかりました。あとは私の能力の確認ですね。ステータスを見るのは『ステータス・オープン』で良いのでしょうか?」

「『ステータス』ですか。えっと、そのようなものは無いと言いましょうか……」


 は?ステータスを見られない?そんなことがあるのだろうか。

 すると、ミドフィールド卿に耳打ちする人物が現れた。俺には聞こえない小声で2、3秒言葉を交わし、2人して頷くと俺の方に向き直った。


「タカシマ殿の能力についてですが、こちらのリバーオリジ卿から詳しいお話をさせていただきます。」


 リバーオリジ卿と言われた人物は、先ほどミドフィールド卿と会話をしていた人物だ。この人物が俺の能力について教えてくれるらしい。


「タカシマ殿のおっしゃる『ステータス』というのは、ご自身の能力を把握するためのものだと思われますが、間違いございませんか?」

「ええ、その通りです。相手との能力差がわからなければ戦っても仕方が無いでしょう。負けるのをわかっていながら突っ込んでいっても仕方ありませんし、勝つための能力を手に入れるためには自身の能力をキチンと把握する必要がありますので。」


 そう。ネトゲで培った俺の戦術眼をなめないで欲しい。彼我の戦力差を正確に判断できるからこそ、正しく勝つことができるんだよ。現実もこんな感じになっていれば、仕事面でも苦労しないのになぁ。そうしたらあの役立たずの上司連中はチームから追い出して、もっと戦力になるヤツを引き込んでプロジェクトを遂行できるんだよ。もっとも、現実がそうじゃないからゲーム内ではステータスという形で能力の可視化をするのが当たり前になったというのもあるんだろうけどさ。

 でも、俺の話を聞いたリバーオリジ卿が「わかるよ」という表情と「でも無理なんだ」という表情を同時にしている。うん、わかりやすいなぁ、リバーオリジ卿。


「おっしゃることはわかります。おそらくはタカシマ殿の世界ではそのようにご自身のステータスを見るための道具や魔法が発達していたのでしょう。ですが、この世界ではそうではないのです。」


 おっと、俺の元いた世界はそういうものを見られる世界だと思われた。そんな事はないからね。えーと、これはどう説明したら良いんだろう?


「いえ、その……私の元いた世界も一部の道具にそういう機能があったというだけでして……残念ながら誰でもが持っていたわけではないのです。」


 ウソじゃない。なんちゃってスカウターみたいなのがあったし。正確じゃなくても、なんとなく相手のレベルがわかるARメガネアプリな。まぁ本格的に相手のスキルがわかるようならスゲーと思うわ。


「ですが、王国としてはそのようなものを持っているのではないかと考えた次第でして。」

「なるほど、そういうことでしたか。ですが残念ながらそのような道具や魔法はないのです。」

「では皆さんはどの様にして相手の能力を測っているのです?戦うとなれば相手の能力を上回ることが大前提かと思うのですが。」

「あー……そのぅ……基本的には情報収集を行うと言いましょうか、対人戦であれば相手の履歴がわかれば能力はわかりますし、集団戦であればそういう情報を集めればわかりますし……ですが、タカシマ殿はこの世界にやって来たばかりでその様な情報もございませんし……」


 そうか、諜報活動がメインなのか。魔王とか魔物がいないのであれば、そうなのかもしれない。でも相手は神様だよ?俺のステータスの確認は絶対必要な項目だよね。


「ですが、相手は神かもしれないわけですよね?であれば、私が勝てるかどうかを確認する手段が絶対に必要です。」


 リバーオリジ卿も、ミドフィールド卿も、それ以外でこの場にいる人々も困った顔をして国王の方を見ている。しばらくして国王は「はぁ」とため息をつき、諦めたように言った。


「いや、仕方が無い。本当のことを話すべきだろう。」


 おや、本当のこととは何だ?一体どんな隠し事をしているんだ?

 そう思った瞬間、俺の体と周囲の空間は召還されたときと同様に、まぶしい光に包まれた。

第4話からは毎週木曜日に投稿予定です。

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