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やっぱり「物理」が最強!  作者: 和紗泰信
ライバルたち
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インターミッション、そしてミッション3スタート

 会議室から出たら、ミサが腕を絡めてきた。そういえば、出撃の際は抱きついてきたのに、お帰りなさいのハグがないなーとは思ってたんだよな。


「さすがにトウキョウ・シティからのお客様がいる前では遠慮した方が良いかなー、と。」


 うん、可愛い。可愛いお姉さん属性って最高だなぁ。俺、クールメイド属性に弱いと思ってたんだよな。だから一番身近な存在としてミクを設定したはずなのに、今ではミサ以外が隣にいるのは想像できないというか……いや、ミクもアリだな。なんかさっきもこっちの方を見てたし。自意識過剰でなければ、俺の事を気にしてくれているのじゃないかと思うんだ。たぶん、クルンテープでは俺とミナで情報交換をしていたから、ちょっとミクとは距離があったんだよな。そこを気にしていたのかもしれん。

 そんなことを考えてたら、頭の中を読まれたのか、ミサに思いっきり二の腕を抓られた。


「マスター、他の女のことを考えてましたね? もしかしてミクさんですか?」

「すまん。ちょっとクルンテープでの対応で色々あってな。でもミサのことだけを見るようにするよ。少なくとも今はね。」

「むぅ……今だけじゃなくて、ずっと私だけ見ていてくださいよ。」

「善処するよ。」


 もう苦笑するしかない。よくもまぁ考えてたのがミクのことだとわかったもんだ。

 ホムンクルスとはいえ、人間の女性とその辺は何も変わらないんだろう。300年前の俺の時代に女性との付き合いがそんなに合ったわけじゃないし、少なくとも召還直前には付き合っている女性もいなかったけど、俺だって恋人がいた時期もあったんだよ。だからこそミサとも付き合えているんだろうと思うけど。いや、もしかしたら設定した俺に対する好感度というか、忠誠心の高さみたいなのが効いてるだけという話もあるか。うん、精進しないとダメだな。


 2階の会議室から階段を登って3階へ。腕を絡めたまま歩き、そのまま2人で俺の部屋へ。もちろん他のメンバーも自室に戻っているだろうが、誰も歩いて階を移動しないため、廊下ですれ違うことはなかった。


「マスター、まずはお風呂ですか?」

「そうだな、一緒に入るか。」

「はい、ご一緒させていただきますね。」


 そんな会話を交わしつつ、そのまま脱衣所へ移動して、全裸になったら風呂へ。身体の隅々まで洗ってもらい、2人でゆったりと湯船に浸かる。あー、疲れがどんどん抜けていくなぁ。この時代の風呂、しっかりと足を伸ばせるし、2人で入っても狭くはないんだよ。もっと狭ければ密着できるんだろうけど、その場合はゆったりできなくなっちゃうからなぁ。ミサは不満かもしれないけど、まずは疲れを抜きたいしね。


 風呂から出たら軽く食事をしてベッドへ。そのまま翌日までずーっとミサと2人、部屋でゆっくりした。何回戦やったかは、数えてないからわからん。数えるのも無粋だろ?


「マスター、明日はどうしますか?」

「そうだなぁ。休みも明日までだしなぁ。本当だったらちょっとデートで外に出たいところだけど、ミサは行きたいところとかあるか?」

「そうですね。今は冬ですし、できれば屋内がうれしいかも知れません。」

「そうだよなぁ。夏なら海とか山とかに行ってみるのも楽しそうだけど、冬だもんなぁ。」

「風邪を引かないようにしないといけませんしね。まぁ風邪を引いてもすぐに治せるんですけど、わざわざ体調を崩す意味はありませんし。」


 確かにそうだ。もう少し良い季節だったら遊びに行く場所も思いつくんだけどなぁ……冬だし……いや、待てよ。


「なぁ、温泉とかどうかな。」

「温泉ですか?でも近くにありましたっけ?」

「俺が住んでいた厚木には七沢温泉なんかがあったけど、遠いか?」

「そうですねぇ……というか別に転送機で出かければ良いので、有名な温泉街を抱えているシティの方が良いかもです。確かベップ・シティなんかはマスターのいた時代でも有名な温泉街だったのでは?」

「おお、別府か。いいな。明日はそこに行くか。いや、どうせ行くならしばらく滞在したいから、明日はゆっくりして、次のミッション終了後に行こうか。皆で行っても良いしな。」

「そうですね。ベップ・シティの情報を仕入れておきます。あと、情報をまとめて宿泊プランの作成も。今から楽しみですね。」


 ミサがうれしそうだ。こんなに楽しそうに笑ってもらえると、俺もうれしい。うん、俺のいた時代とは変わっているところもあるんだろうけど、そもそも別府には行ったことがないし、皆でワイワイと温泉に入るのも楽しそうだ。温泉巡りをしてもいいしな。ミサとミイの仕事にしよう。もしかしたらニックとニーナあたりもノリノリで企画に参加してくれるかもしれん。

 

 しかしいつまでも遊んでいられないのが、俺の置かれた立場でもある。それに今回は魔法職としての服装や装備もデザインするわけで、ゲームの時のキャラクターメイクに繋がるワクワク感がある。

 まずは服装。こちらは魔術師っぽいローブ。普段は迷彩服なのだが、モードチェンジでローブになるというもの。もちろん防弾防刃などの要素もキッチリと盛り込んでもらう。


 一方でマジックワンドだとどうしても魔術師っぽくならないので、スタッフにしてもらった。トウキョウ・シティの技術陣からのアイデアで、専用の小銃から変形するようにした。しかもレーザー光線や電撃などで大容量のバッテリーというかキャパシターを搭載することになりそうなので、銃も火薬式ではなく、レールガン方式に変更することとなった。おかげで初速を火薬式の物よりも上げられることとなり、実際に使うと威力自体をアップ出来るとのことだった。ミッション3で利用できないのが残念だ。

 確かに反動への慣れも必要となるので、次のミッションに間に合わないというのは了承してるんだけどな。それでも少しずつ慣れていくために、ミッション3の準備をミク達が行ってくれている間に、この仕組みになれるための訓練も始めた。迷彩服+小銃からローブ+スタッフへの変形、そして半分はこけおどしもあるが、魔法の呪文の開発も行う。これには俺の溢れる厨二力(笑)が役に立っている。ほら、やっぱり聞いたときに格好良く、しかも仰々しく聞こえた方がそれっぽいだろ?


 トウキョウ・シティの技術部と拠点とを行き来しながら訓練を行い、夜はミサとイチャイチャしながら過ごしていると、遂にミッション3の目的地が公開された。今回は旧フランス共和国の港町、カレー・シティだそうな。

 このカレー・シティ。元々はドーバー海峡に面する港町だが、俺の時代にはドーバー海峡の海底を通ってイギリスとフランスを結んでいるユーロトンネルの、フランス側の出口が置かれた街という認識が正しいのだそうだ。俺は行ったことがないし、ユーロトンネルにもなじみがないので知らなかったけどな。

 転送機ネットワークの発達したこの時代では、港だけでなくユーロトンネルも使われなくなったため、基本的には物流で栄えた街だったカレーは一気に凋落したらしい。もちろん観光資源も少しはあったわけだが、ヨーロッパには観光資源だらけの街も数多くあるわけで、ちょっとやそっとの観光資源では、いろいろとキビシイだろうなぁと思う。そこで新しく設定されたのが転送機ネットワークのハブ機能だったようだ。まぁ、ハブ機能と言っても、ここを通らないと他のシティに行けないというわけではないので、基本的には重要な管制センターが置かれたというだけらしいけど。


 というわけで、今回の標的となるシティはカレー・シティなのだが、直接転送機で現地に乗り込むことができないのはこれまでと同じらしい。ただ、ヨーロッパの大陸側には直接乗り込めないけど、イギリスというかグレートブリテン島やアイルランド島には転送機で行けるらしい。そこで、グレートブリテン島へクウヤとクミが転送機で行き、そこで転送機を積んだ車両を運転して、ユーロトンネルを使って大陸側に運び込むというアイデアで行くことになった。

 もちろんこれは読まれている可能性もあるので、同時に小さな船舶を幾つか用意し、ドーバー海峡を突破するという陽動も入れる事になった。陽動はアンドロイド兵のみで行う。もちろん特に邪魔が入らなければそのままカレー港に上陸し、ミッションの目標地点に向かうこととなる。ただ、カレー港はクルンテープの時とは異なりかなり広い。クルンテープの敵部隊は通りの上の狭い範囲にしか展開できなかったから、ロケットのペイロードで挽きつぶすというか跳ね飛ばして排除するという作戦が取れた。だけど今回、その方法は使えない。地道に敵部隊を排除するしかない。結構面倒なんだな、これが。


 標的となる場所はカレー港にあるため、本来ならば揚陸艦などの艦艇を使って部隊を上陸させるのが鉄則なんだが、当然のことながら警戒されているのと、この時代には強襲揚陸艦など残っていないんだそうな。博物館には200年以上前のものがあるらしいのだが、誰も動かせないし、そもそも動態保存されているわけでもないので、動かないそうだ。なので、小型艇による強襲と本来ならば小規模部隊の上陸くらいしかできない。ただし転送機様々というわけで、小型艇に転送機を積んでおけば上陸できる歩兵部隊の数はそれなりに多くできる。


 だが、メインはあくまでもユーロトンネル側からの部隊だ。一気にカレー港まで進出して、陥落させる必要がある。クルンテープの時の様な反則技は使えないが、ハバロフスクの時よりももう少し転送機の数は増やせるので、部隊の数自体は多めにできることとなる。

 ブリテン都市同盟との話し合いで、彼らの方からもユーロトンネルを経由した部隊派遣が決まった。どうやら貨物列車を1編成準備できそうだとのことで、これに転送機を10機ほど、そして残りにはガン・ドロイドをできるだけ積んで突入させるつもりらしい。

 またカレー・シティを含むフランドル都市同盟が海上からの陽動部隊を編成してくれることにもなった。クルンテープ・シティの時の協力体制が被害を最小限に抑えたということで、その点が評価されたらしい。ありがたい話だ。


 ミッション前日にはユーロトンネルを突破する車両に乗り込むべく、クウヤとクミがロンドン・シティへと旅だった。まぁ転送機で一瞬なんだけどな。彼らはそこから転送機を使ってさらにフォークストン・シティへと移動し、ここが管轄しているユーロトンネルのブリテン島側入り口からドーバー海峡を渡ることとなる。


 そして俺たちは転送機がカレー・シティの所定の場所に到着したら、転送機をくぐることとなる。その準備をしている際に、クウヤから連絡が入った。うん?まだミッション本番には時間があるはずなんだが……このタイミングだと、カレーに到着しているどころか、まだユーロトンネル内を走っている時間帯のはずだ。何かトラブルが発生したのか?作戦室に緊張が走る。ニーナが連絡をよこしてきたクウヤに問い合わせる。


「クウヤ、何かトラブルの発生ですか?」

『いや、今のところ順調にユーロトンネル内を走行中。後続の無人トラック群も、しっかりと着いてきている。』

「では一体……?」

『あまりにも、すんなりいきすぎてるんだ。どうもやってくるのを手ぐすね引いて待っている連中が、向こう側にいるような気がしてならない。』

『あーしもクウヤと同感。ワナっぽい感じがしてるんよねー。』

「それはブリテン都市同盟かフランドル都市同盟が裏切っている可能性があるということ?」

『いーや。あーしの感覚だと、あの人達は完全にこっちの味方。ただ、それ以外のどこかがちょっかい出してくる可能性がありそうなんよねー。』


 ふむ、彼らの勘は侮れないからな。俺たち人間の勘とは少し異なり、入ってくる様々な情報を処理しながら、何らかの漏れ抜けや穴がありそうな部分を発見するのがホムンクルスの「勘」だ。だから、何らかの罠を誰かが仕掛けているのを見抜いたと言うべきだ。

 そしてもしそういう罠を張っているヤツらがいるとしたら、案内人を送り込んできた勢力だろう事も何となく想像が付く。アイツは一応、俺を召還した連中とは敵対しているはずだしな。それに確実に俺たちの作戦を予測しているだろう。

 

 だが、考えていても仕方がない。どんな罠があろうとも、それを突破するしかない。俺は作戦を再度確認する会議を行い、予想外の事態が起こった場合の対策についても再度確認した。あとは現地で何とかするしかない。

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