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やっぱり「物理」が最強!  作者: 和紗泰信
召還されたら無双したい
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防水扉って分厚いのな

 幅3mの通路を完全に塞いでいる防水扉の前までやって来たが、継ぎ目が見つけられない。大抵の防水扉とか防火扉というのは、本来なら通路の左右に格納されているんだと思われるのだが、どうして継ぎ目が見つからないんだ?

 右手の甲でコンコンと叩きながら端から端まで歩きながら継ぎ目らしき場所を探してみる。継ぎ目の所ってちょっと音が変わったりするだろ?それを期待してコンコンとノックをし続けているのだが……ダメだ、わからん。これ、実は継ぎ目ないのか?


「マスター、どうします?」

「そうだなぁ……開けるためのスイッチとかは見つからないよな?」

「はい、残念ながら。おそらくこの扉の向こう側にあるのではないかと。」

「だとするとこじ開けるしかないわけだが……さっきの爆発を受けても、傷1つついてないってことは、特殊合金製かな。」

「普通の防水扉ならそんな事はないはずなんですけどね。」


 ミナもさすがに不思議な顔をしている。


「クルンテープ・シティから提供されたデータだと、元々はチタン合金製の扉だったみたいなんですけどね。明らかに付け替えられているように見えます。」

「敵が侵入を防ぐために付け替えたと考えるのが自然かね?」

「確証はありませんが、多分そうではないかと。とはいえ、どうやって?というのはわかりません。」


 そうか、さすがに方法はわからんらしい。もっとも、すげ替えた方法がわかったところで、この扉を突破できるかどうかは別の話だしな。とりあえずはMk153で対戦車弾をぶち込んでみるか。まだ10本以上残ってるしな。


「悩んでても仕方が無い。まずは何本かMk153で対戦車弾をぶち込もう。」

「では一旦バリケードの外に退避ですね。」


 全員でバリケードの外にまで退避し、2体のアンドロイド兵にMk153を使った攻撃を行わせる。2本の噴煙が同じ場所に向かって伸びていく。そして爆発。1ヶ所を狙わせてみたが、爆煙が収まったところでチェックしても、傷1つついていないように見える。


「ダメっぽいですね。」

「そうだな。すると残るは剣とか刀だな。」

「そうですね……」

「ミナ、まずはお前から試してもらえるか?」

「わかりました。」


 ミナは2つに分割して両腰にぶら下げていた薙刀の刀身を手に取り、つなぎ合わせる。そして刃を超振動モードにした上で、防水扉に斬りかかる。ミナも俺同様、強化スーツを身につけているので、攻撃力は生身の時よりもアップしている。その甲斐があったのかどうかはわからないが、防水扉には幾筋もの斬りつけられた跡が残っていた。だが、向こうは見えない。結構深く斬りつけられているはずなのに、それも通路の向こう側が見えないって、一体どれだけ分厚いんだよ。


「マスター。私の剣でやってみましょうか?」


 ミナよりも長い刀身の刀を持っているミクが訊いてくる。そうだな。できれば防水扉を突いて、向こうに突き抜けるかどうかをチェックしたいところだ。ミクもその辺は理解していたようで、刀身を超振動モードにした上でズブズブと差し込んでいく。刀身が完全に埋まったのを確認してから、下に引き下ろしていく。もしこれで向こうにまで抜けていれば、防水扉を切り取って穴を開けることができる。

 と期待していたが、ミクの刀でも向こうに抜けなかった。いや、ホントにどんだけ分厚いんだよ?!


「マスター。これ、厚み1m以上ありますよ。」

「そうだな。」


 さすがにこれだけ分厚いとうんざりする。大河の洪水対策用の防水扉なんだから、それなりの厚みが必要なのはわかるけど、それでもな。

 さて、どうするか。本来ならツルハシとかシャベルとかそういう土木作業用の機材で何とかするべきなんだろうけど、ここにそんなものは無い。しかも手持ちの爆発物ではどうしようもなかったので、飛び道具系は使えない。ちょっとずつ刀や剣で削るしかないか。


「仕方が無い、全員で削るとしよう。こう、斜めに切り込みを入れつつ、少しずつ削っていって、まずは向こう側に抜ける穴を開けることを目標とする。長物を持っている者が中心となってやろう。もちろん、俺も削る。」

「イエス・サー」


 俺、ミク、そしてアンドロイド兵の中で3体が長物を持っている。この5名で切り込みを入れ、2~30cmずつくらい扉の厚みを削ることにした。もちろん3mも幅があるので、最初にミナが斬りつけ、その後にミクが刀を差し込んだあたりを集中して削る。とりあえず1ヶ所削ってみよう。もしかしたら待ち伏せられているかもしれないことを考えると、突入の際には複数の穴が空いていた方が良いかも知れないが、まずは1ヶ所でも開けないことには話にならないしな。


 ミクが削る側に回ったため、他の分隊や本部のニーナやニックと連絡を取るのはミナにバトンタッチする。特に引き継ぎらしい引き継ぎをしないので、大丈夫なのか?と思うんだが、通信端末と体内のナノマシン群が連携することで、言葉に出さなくても一瞬で引き継げるらしい。うらやましい。


「マスターも体内にナノマシンを入れれば、同じ事ができますよ。」


 俺の表情から思考を読んだのか、ミナがナノマシンの注入を薦めてくる。前に俺の身体強化を話したときにも言われたが、拒否したからなぁ。ほら、何となく身体の中に機械が入っているのって、イヤな感じがしないか?その思考が表情にも出たんだろう。ミナは肩をすくめて、それ以上は何も言わなくなった。


 俺もそんな話をし続けているわけにもいかない。とにかく早いことこの防水扉を突破しないといかんからな。5人がかりで削りまくって既に10分近く。今のところ50cmほど削れた。そろそろ奥に向かって差し込んでみるか。


「そろそろ奥に向かって剣を差し込んでみる。全員、ちょっと離れてくれ。」


 ミクとアンドロイド兵達が後ろに下がる。もし貫通することができたら、そこから攻撃を受けるかもしれない。だからそうならないように俺が対応するわけだが、それでも何があるかわからないので、防水扉から2mほど下がってもらった。

 それを確認してから最も深く削れた部分にまで向かい、俺の愛剣を差し込んでいく。とりあえず根本まで差し込み、丸く円を描くように動かしてみる。もしこの状態で貫通していれば、切り取られた円柱が落ちるはず。貫通していなければ円柱の周りに切り込みができるだけのはずだ。

 キレイに円を描き終わると、円柱が下に動いた。どうやら貫通したようだ。確認のために一度剣を防水扉から引き抜き、振動を止めた後に柄で思いっきり叩いてみる。すると切り取られた円柱は防水扉の向こう側に滑っていき、ゴトンという音と共に見えなくなった。通路の向こう側に落ちたようだ。

 念のために穴を覗いてみると、確かに向こう側が見えた。よし、あとは穴を広げるだけだな。


「みんな、貫通した。あとは穴を広げて通れるようにするだけだ。」

「わかりました。まずは広げましょうか。マスターは少し休んでください。」

「わかった。だけどそれはミクも同じだ。すまないがアンドロイド兵で作業を頼む。」

「イエス・サー」


 再び長物を持っているアンドロイド兵3体が残り30cmになる程度まで削っていく。削られた場所はハンドアックスなどを持った別のアンドロイド兵が貫通するまで削りまくる。後方を警戒している5体を除いて、9体で削りまくるとさすがに早い。5分程で3人以上並んで通れる程度の穴が空いた。これだけ大きければ楽だ。


「マスター。シロウから連絡です。ロックの分隊をこちらに回そうかと言ってきています。」

「そこまで必要かな?」

「1階の廊下をぶち抜いて合流するつもりのようです。」

「そういうやり方か。今のところ、そこまではいらんかなぁ。」

「わかりました。そう返答しておきます。」


 ミナから連絡役を引き継いでいたミクがシロウ相手に連絡を行う。そうか、ここでこんなに苦労するくらいなら廊下をぶち抜けば良かったのかも知れないな。

 と、防水扉を開削できて油断していたのがマズかったのかもしれない。転送機が作動するときの音が響いたと思ったら、穴を開けていたアンドロイド兵達と穴の空いた防水扉が丸ごと消滅していた。


「っ!全員、壁のあの部分に対戦車弾!反対側のあそこにも!急げっ!」


 ミナが残る5体のアンドロイド兵たちに指示を出す。指示を受けた残る兵達は持っていたMk153を構えて動作音がした壁に向けて対戦車弾を発射する。対戦車弾は着弾した壁を大きく削った。えぐれた壁を見ると機械が埋め込まれているのがわかった。どうやら見えている機械が壁に埋め込まれていた転送機だったらしい。


「ここの防水扉は転送機でどこかからか送られてきていたんですね。」

「そういうことか。防水扉ではなく、防水壁だったわけか。道理で切れ目が見つからないわけだ。」

「たぶん一度どこかに転送し、破壊される前のデータを使って再構築しようとしたのでしょう。」

「あぶねぇな。そうしたら俺たちはアンドロイドを9体失った上で、またあの削る作業をいちからやり直す必要があったわけか。」

「はい。ですが転送機を破壊したので、もう大丈夫かと。」


 ミナの機転でその状況は避けられたわけだ。しかし油断ならねぇな、転送機。何でもかんでも転送機を使う文明ってのは、何でもありだな。というか、修理にも転送機を使うのって反則じゃねぇか。と思ったけど、俺の身体もトラックに跳ね飛ばされた怪我を治してもらっているから、反則とまでは言えないか。


「っていうか、確か転送機ネットワークから切り離したってクルンテープ・シティは言ってたんじゃないのか?」

「防水扉……というか防水壁ですから、もしかしたら緊急用に独立したものだったのかもしれません。」

「なるほどな。他のネットワークが落ちても、これだけは緊急時には動くようにしてたってわけか。ありえる話だ。」


 つまりは病院の非常用電源とか、それに近い位置付けというわけだろう。おかげで今回は余計な犠牲が出てしまったけど。

 ミナと現状認識を合わせるための会話をしていると、外部との通信を担っているミクが会話に割り込んでくる。

 

「シロウが、やっぱりロックの分隊を回そうかと言ってきていますが。」

「もう、そこまではいらないんじゃないか?」

「いえ、天井をぶち抜く準備だけしておいてもらうべきかと。場合によってはそこから脱出する可能性もありますし。」

「……そうだな。わかった、ミナの言うとおりだ。ミク、シロウにはそう伝えてくれ。」

「わかりました。そのように。」


 そこまでは必要ないと思いたい。だけど、まだ転送機を使った罠があるかもしれないからな。退路を確保するために穴を開けるのは良い考えかもしれない。

 というかさ、移動式の転送機を持ち込んで、その辺の機械を再構築時にインゴットか何かになるようデータをセットして転送したら楽なんじゃないか?物理的に破壊するのって面倒だし。次からはそれで良いかもしれない。今回の反省会ではそれを提案しよう、そうしよう。


 だったら、さっさとここでのミッションを終わらせよう。通路は確保できた。確保できた通路の20mほど奥に目的地であるサーバールームの扉が見える。さすがにあの扉も厚みが1m以上あるなんて事はないだろう。そしてそこまでの間にはもう障害も、防衛を司っている敵兵の姿もない。あの扉をぶち破って、内部をガラクタになるまでぶっ壊すだけだ。よし、では進もうじゃないか。


「全員、攻撃準備。まずは対戦車弾であの扉をぶち破る。」

「イエス・サー」

「では、総員配置に。」


 ミナの指示に従い、アンドロイド兵5体はMk153を担いで横並びに整列する。


「10カウントから行きます。」


 俺はミナに頷いて合図を出す。ミナは10からカウントダウンを始めた。


「3、2、1、ファイヤー!」


 発射された5本の噴煙が扉に向かって進んで行き、一斉に着弾、爆発した。しばらくは噴煙と爆煙で何も見えなかったが、換気装置が働いたのか煙が薄まると、見事に扉が吹き飛び、その向こう側で左右に細い通路が続いている様子が見えてきた。まぁ、サーバールームと言えば2重扉になっているのは基本中の基本だが、まさか扉の向こうが風除室ではなくて、通路になっているとは思わなかった。


「あれ、左右どちらに進むのが正しいんだ?」

「見取り図では左ですね。」


 俺の質問にミナが即座に答える。うん、左側ね。じゃあ、早速踏み込むとしようか。

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