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やっぱり「物理」が最強!  作者: 和紗泰信
召還されたら無双したい
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序章

初の投稿なので、ちゃんとできているかわからないけれど、まずは開幕です。

基本はバトルというか戦闘になりますが、対象を「物理的に破壊する」お話しです。


最初の3話は毎日投稿する予定です。

「せーのっ、どっせい!」


 俺は手に持っている特殊合金製の高周波ブレードを目の前にある機械へ振り下ろす。俺の背よりもよりも高く、筐体もかなりしっかりとした素材で構成され頑丈さをアピールしていた機械であるが、刃自体が振動することで切れ味を増している高周波ブレードにかかれば、まるで豆腐を切るかのようにするっと切り裂かれる。


「そら、もう一度!よっこらしょっと!」


 高周波ブレードをさらに野球のバットのように両手で持って振り回し、背の高い機械を床から1mくらいの辺りで2つに切断する。

 これで目の前にある装置群はすべてが火花を散らすこととなった。叩きつぶされてへしゃげ、または切り刻まれて中が露出した筐体に付いているランプはすべて消灯していることから、1つ残らず完全に破壊できたことがわかる。


「はぁ、はぁ……これでようやく全部ぶっ壊れたか。」


 手に持った高周波ブレードを鞘に戻し、息を整えながら今いる体育館ほどもある部屋の中を見渡すと、目の前にある装置を含め、これまで叩きつぶしてきた大量の機械が目に入った。あー、あそこに転がしたままの斧というかハンドアックスは回収しないとな。あれも刃の部分は高周波ブレードになっていたんだが、使い方が荒くて壊した機械に埋もれてしまった。当然使えるんだが、重たいし引き抜くのが大変だしで放置でも良いんだけど、回収しないとあとで文句言われそうだ。うん、たぶん文句を言われるな。ちゃんと回収することにしよう。

 ここはデータセンターに相当する建物だという話なので、これらの機械はサーバーということになるはずなんだが、俺の知っているサーバーっぽくない。なんとなくスーパーコンピューターとかデータセンターと聞くと、なんだかんだ言ってサーバーラックが大量に並んでいるイメージがあるんだが、ここは空港にある管制室みたいな感じにしか見えない。もしくはテレビで見たことのあるロケット打ち上げ場の管制室か。あ、どっちにしても管制室だな。


 そうして破壊した機械群を眺めていると、後ろに控えていた女性型ホムンクルス――全身が有機物でできたボディに有機電脳AIを搭載したタイプのアンドロイド――であるミクが感情のない平板なトーンで声をかけてきた。


「お疲れさまでしたマスター。これでようやく1つ目の拠点攻略が完了です。」


 何の意味があるのか、掛けているメガネを少し上げる仕草をしている。なにその「私はできる秘書です」みたいな仕草。いや確かに俺の秘書兼ボディーガードでもあるんだけどさ。そしてそんな風に性格設定したのも俺なんだけどさ。こういう仕草が萌えるだろう?お前だけだって?そうか……。


「ああ、ありがとう。でも本当にまったく何も手伝わないんだな。」

「はい、秘書兼ボディガードというのはそういう仕様ですので。それともマスターの露払いをして破壊された方が良かったですか?」

「いや。冗談だから気にするな。俺もそんなスプラッターは望んでないし。」


 この世界では人間に対する攻撃は御法度になっている。殺人がNG。例えそれが壁で跳ね返った跳弾だったとしても、人間が死んでしまうと大問題になる。だから俺が突貫する分には問題ない。絶対に当たらないようコントロールしてくるからだ。だがアンドロイドをはじめとする機械類は攻撃対象となる。それはホムンクルスも同様だ。隣にいるミクをはじめ、見た目は人間と区別が付かないホムンクルスやアンドロイドであっても、攻撃対象になっている。

 だから俺には当たらないけど、隣にいる彼ら彼女らには当たるような攻撃がガンガンと飛んでくる。いや、本当に俺には当たらないんだよね?と言いたくなるようなレベルで。これは結構心を抉られるんだよなぁ……。

 そういう意味では機械でできているアンドロイドは破壊されても機械の残骸にしか見えないが、ホムンクルスはバラバラ殺人事件の被害者にしか見えないからね。これも心を削られるんだよな。そんなSAN値を削ってくるようなシーンは求めてないのよ、俺。そういえば人間である俺との見分けはどうやって付けてるんだろう?すごく不思議だ。


 そんなわけで防衛側の攻撃はエグい。殺意の高い兵器が「これでもか」というくらいてんこ盛りで配備されている防衛設備になっているので、それらの兵器が遠慮や手加減無しで攻撃を加えてくる。だから、この建物の内部に機械のみで突入するのは無理ゲーなのだ。そんなわけだから俺を召喚した連中の意図はわかるし、俺に対しては一切の直接攻撃が加えられなかったことから、奴らの言ったことが正しいこともわかった。だからといってこの待遇に納得できるかどうかはまた別問題なんだが。


「もしお手伝いが必要でしたら、シロウ達を呼べば良かったのでは?」

「いや、さすがにここに敵が侵入してこないように警備してくれてる護衛隊の隊長を呼びつけるわけには行かないからなぁ……」

「それでは、次回はアンドロイドをもう少し多めに連れてくる方が良さそうですね。」

「そうだな、そうしよう。」

 

 次回への反省点は分かった。確かにホムンクルスのシロウ達を手伝いに駆り出すのであれば、アンドロイドの数を増やすしかない。いずれにせよ、反省会は後回しにして、今日はここまでだ。さすがに身体のあちこちが痛い。明日は筋肉痛になるだろう。こんなむちゃくちゃな課題を出しやがってあのデブガリ王め、と心の中でひとしきり悪態をついてから、もう一度破壊し忘れたものはないか辺りを見回してからミクの方を振り返る。うん、もう大丈夫だ。ミクのお墨付きもあるしな。


「よし、今日はここまでだ。撤収しよう。さすがに帰りは攻撃してこないだろ?」

「マスターに対しては攻撃はありえません。ただし私どもについては追撃があるものと考えてください。」

「おいおい、あの地獄の戦場をもう1回くぐるのか?」

「はい、その認識で間違いございません。」


 まぢか……あの高出力レーザーとかレールガンや地雷の山をもう1回生身で越えるの?いくら俺に向かって直接飛んでくることはないとわかっていても、誤爆とか流れ弾はあるし、破片は飛び散って当然のことながら俺に襲いかかってきたし。あーそれも計算ずくで、当たらないことにはなってるんだけど、鼻先を掠めるように破片が飛び散るのは、わかっていても無理なのよ。この部屋に到着するまでに10回くらいは「死んだかも」って思ったんだけど。あれをもう1回なの、ホントに?


「な、なあ……ちょっと休んでから撤収というのは……」

「ここが破壊された以上、相手にとってもここは武器の使用禁止エリアにする意味がありません。ですので我々を排除すべく敵の攻撃機が遠慮無しで攻撃を行うために押し寄せてきます。というか、すでに押し寄せつつあります。」


 確かにここに入ってきた通路の方からイヤな感じしかしない駆動音がオーケストラで聞こえてくる。あー、まぁそりゃそうなるよなぁ。


「でもほら、俺は安全じゃん?」


 ミクは「ふぅやれやれ」と言わんばかりに首を振って、俺を哀れで可哀想なヤツのような目で見てくる。お願いだからその目はやめて、自分が情けなくなってくるから。


「はい、もちろんマスターは安全です。ただし我々サポートメンバーについては敵の破壊対象に入っておりますので、万が一全機が破壊されてしまった場合、マスターにはここから転送機までの道筋を一人で何とかしてもらう必要があります。付け加えて言いますと、転送機も敵にとっては破壊しない理由がありませんから、確実に防衛しているガン・ドロイドごと破壊されます。その場合、マスターには帰り道の約1500kmをお一人で踏破していただく必要が出て来ます。海越えは大変そうですね。」


 うん、ですよね。だからこの部屋に居続けちゃいけないのは知ってた。ただ疲れてたからちょっと言ってみたくなっただけなんだよ、言ってみただけ、わかるだろ?……あのデブガリ王、絶対殺す!大事なことなので2回言うね。あのデブガリ王、絶対殺す!


「仕方ない、さっさと撤収するか。ミク、ハンドアックスを回収してくれ。あとで文句言われたくないからな。少し重いが、お前なら何とかなるだろう?」

「イエス、マスター。」

 

 さして苦もなく、片手でハンドアックスを回収したミクと共に、残骸だらけの部屋を出る。そして部屋の入り口を防衛している味方の護衛部隊に合流する。ミクと同じ、都市迷彩服を着たホムンクルスがシロウ以下7体。同じ都市迷彩服に身を包んだ機械のアンドロイドが9体、それに通路を走行可能なガン・ドロイド――全高2メートルくらいのミニ戦車というか、見た目はなんとなくガンタ○クっぽいやつが28両。これが今回の作戦でこの建物内部に引き連れてきた部隊の残存戦力だ。

 ちなみにそれ以外にガン・ドロイド10両が転送機の防衛に回っている。俺が先頭を切ったために敵が反撃を躊躇してくれたから、突入作戦で破壊されたのはアンドロイドが3体とガン・ドロイド12両。俺やホムンクルス、アンドロイドを2両のガン・ドロイドで護衛する形を取ったんだが、帰りはガン・ドロイドの数が足りないなぁ……贅沢は言ってられないので、何が何でも外で待っている転送機までは逃げ切らないと。


「よし、ではこれからヤツらの包囲網を突破し、転送機までたどり着く。ガン・ドロイドの数が足りないが、こいつらは使い捨てでも構わん。ミクをはじめとするホムンクルスとアンドロイド兵諸君は完全破壊だけは免れるように。」

「イエス・サー!」

「最悪の場合はボディを破壊された3体と同様に、頭脳部分だけ回収する。では、転送機まで500m。全員ついてこい!」

「イエス・サー!」


 ホムンクルスとアンドロイド達は俺の命令に完全服従してくれる。「アンドロイドは使い捨てるモノ」と言われたが、俺はそんなことしない。内部に搭載されている人工頭脳はAIだから?いや、こいつらだってそれぞれ個性があるのを俺は知っている。ホムンクルスに至っては人間と見分けがつかないほどなので、完全に戦友というか悪友や学校で言えば仲の良いクラスメイトくらいな感じだ。アンドロイドだって隣のクラスの奴らくらいの感覚だ。だから見捨てないし、少なくとも頭脳部分だけでも回収する。ボディは新しいモノに交換すれば良いけど、個性は復元できないからな。特にこんな電磁気的に封鎖されている空間ではネットワークを介してのリアルタイムバックアップも取れないし。

 俺たちはガン・ドロイドを先頭にして転送機に向かって500mの道のりを歩き始めた。俺の左手側にはミクが、そして右手側にはシロウがつく。その周りを残りのホムンクルス達が固め、俺たちとガンドロイドの間、プラスしんがりをアンドロイド達が務めるフォーメーションで移動する。まだ建物の中だからか敵の姿はない。ふと気になったことを右手側にいるシロウに対して訊いてみる。


「シロウ、どう思う?」

「どう、とは?」

「ここは破壊されたわけだろ?なら防衛の必要は無くなっているはずだ。それに俺たちが脱出するのを妨げなければならない積極的な理由もないと思うんだが。」

「まぁ、確かにそうですな。」


 シロウに限らずミクにだってその程度の事はわかっているはずだ。それでも警戒を解けないのは何故だろうか。


「そうですな。ここが破壊された方法というか戦術は相手も理解したでしょう。そしてマスターがいる限りは同じ戦法が何度も使えます。」

「俺を排除しないとダメということか。」

「いえ、制約上の問題で殺すことはできませんから、マスターを捕らえて軟禁するというのが簡単な対策です。」

「なるほど。じゃあ捕まるわけにはいかないな。」

「そういうことです。」

 

 建物の出口に近づくと敵のやってくる音が大きくなってきた。狭い場所の方が捕り物には有利な気がするけど、建物の外を主戦場にするつもりなんだろう。どうやら周辺の警備部隊をかき集めたらしい。さっきよりも数が多いだろうから、地獄の撤退戦が始まるわけだ。これをあと12ヶ所でやらないといかんというのは、考えるだけでも気が滅入ってくるが、あのデブガリ王をぶっ殺すまでは我慢するとしよう。とりあえずこの武装を抱えたままあと400mを走りきることができれば俺たちの勝ちだ。まぁ普段使ってない筋肉を酷使したから、明日は筋肉痛確定だろうけどな。なんでこんな事になったのやら。

こんな感じで、しばらくは戦闘の度に筋肉痛と闘う主人公になりそうです。

そのうち科学の力で何とかする予定。

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