第八話:初任務1
※いよいよ依頼による任務開始です。
「あなたが、水無瀬家の現当主?」
琥珀を抱っこしながら時計店へと戻る途中、背後から声がした。
振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。
長いストレートの黒髪は風で微かに揺れ、やや鋭い凛とした声とは裏腹に、目を少し細めて柔らかな眼差しを私に向けている。歳は私より少し上だろうか。きっちり着こなされた着物がよく似合っていて、育ちのいいお嬢様。それが第一印象だった。
「久しいな。もう水無瀬家のことを嗅ぎつけたか」
腕の中にいる琥珀が女性に話しかける。すると、目の前の彼女はふっと口元を緩めた。
「当たり前でしょう?御三家の者ならば、常に魔術師界のことには敏感になっているもの。それにしても久しぶりね。琥珀。また新たな主が見つかったようでなによりだわ」
どこか懐かしそうにそう話す彼女。私は少し視線を下げて琥珀に問いかけた。
「琥珀、知り合いなの?」
「白河未玖。御三家の一族が一人、白河家の現当主だ」
その言葉に、私は反射的に肩を強ばらせた。白河家は真面目な人間が集まる一族だと琥珀はいっていたが、目の前にいる彼女がどういう人物なのか全く分からない以上、むやみやたらに近づくのは得策ではないだろう。
そんな私の心情に気づいたのか、彼女はふふっと小さく笑いを漏らした。綺麗な人だから、笑顔も可愛いんだな。いや、そんなことを考えている場合ではない。
「そんなに警戒しなくて大丈夫よ。私は誰かと敵対したい訳ではないの。相手に悪意があるならともかく、そうでない相手とむやみやたらに敵対するつもりはないわ」
それにね。と柔らかな声が耳をくすぐる。
「あなたのお兄さん、暁人のことも知っているのよ」
「兄を、ご存知なんですか?」
「えぇ。魔術師としてはまだ未熟なところもあったけれど、真っ直ぐで優しい人だったわ。これでも結構仲良くさせてもらっていたのよ」
兄貴め、こんな美人な知り合いがいるなら紹介しろ。いや、だから、そんなことを考えている場合ではない。
「今は、妹のあなたが跡を継いだのね。私のことは気軽に未玖と呼んで。暁人の妹となれば、出来うる限り協力するわ。いつでも声をかけてね」
「わざわざそんなことをいいに来た訳ではあるまい」
白河さんの話に区切りをつけるように琥珀が口を開いた。
「そうね。なら、本題に入るわ。実は、あなた達に頼みたい依頼があるの」
そういって彼女は、にっこりと笑った。
※続きます。
次回更新は明日になります。
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