第四十一話:九条真琴という魔術師3
※前回から続いています。
「水無瀬千暁ーー兄貴の仇だ。お前にはここで死んでもらう!!」
九条が放った無数の火の玉が勢い良く向かってくる。
瞬時に反応した琥珀がすぐさま私を庇うように前に出た。そして素早く結界を張り、私の身を守ってくれている。
しかし、攻撃を防ぐだけではなにも進展しない。
なにか、手を考えなければ。その間にも水や雷、様々な攻撃が私達を襲う。
「いつまで俺の攻撃に耐えられるかな!?」
琥珀が結界で攻撃を防いでくれている間に私は頭をフル回転して考える。だが、なかなかいい案は浮かばない。
ーー考えろ。考えろ。
そうやって、考えることに没頭して油断していたのがいけなかった。
気づけば、いつの間にか背後から鋭く尖った、一際大きい水の刃が迫っていた。ーー琥珀に向けて。
目の前のこの敵は、本気で私達を抹消しようとしている。
この攻撃は、琥珀の結界でも防げないかもしれない。
「琥珀っ!!」
私は考えるより早く、琥珀を庇うように身体を盾にして攻撃を受け止める。攻撃が琥珀に当たらなければそれでいい。
私の左肩に激痛が走る。予測した通り、攻撃は結界を突き破り、水の刃は私の肩へと突き刺さる。しかし、それはすぐに液体へと姿を変えた。
左肩を押さえながら琥珀の無事を確かめるために顔を上げると、特に怪我をした様子はない。どうやら無事だったようだ。
「主が従者を庇ってどうする!?」
すぐ近くからこれまで聞いたことのない怒号が飛んでくる。
「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、大馬鹿者だお前は!!」
「ちょっとさすがにいい過ぎじゃない!?」
負傷した左肩を押さえたまま反論すると、琥珀は少し安心したように息をついた。
「それだけ元気があれば大丈夫だな」
呟くようにそういった琥珀に、私は小さく笑ってから目の前にいる敵を睨みつけた。
「ちっ。外したか」
九条は忌々しそうに顔を歪める。そうだ。九条真琴はこういう卑怯なやつだった。今もおそらく、私ではなくあえて琥珀を狙った。私を最大限に苦しませて復讐するために。それを忘れてはならない。そうでなければ、本当に殺される。
ーー殺される?誰が?
私のことはいい。魔術師たるもの、危険はいつだって付きまとう。でも、琥珀は違う。琥珀はただ、わがままな私に付き合ってくれているだけ。
ーーそれなのに琥珀が殺される?兄貴みたいに?
そこまで考えた時。突然、身体の中から熱いものが込み上げてきた。これは、私の中の魔力か。不意に、昔の記憶が蘇る。
ーー兄貴はなんで時計師になりたいの?
これは、兄貴が時計師を目指し始めた頃の記憶だ。
ーー色々あるが時計っていうのは、時間を重ね、刻むためのものだろう?そこには色々な人の思い出や記憶、時間が詰まっている。時計を直すってことは誰かの大切な思い出や記憶、時間を直すってことだ。それができる者だと信じて皆、時計店にいる俺達の元を訪れる。その思いに応えたい。そういう思いが俺の中にあるからかな。きっと、どんな形であれ、思いには色々な力があるんだろうよ。だからきっと、修復した思い出や記憶、時間はその人に力を与えてくれる。俺はそう信じてるよ。
ーー思い。私が私の思いで応えたい人……自分を育ててくれた祖父母。未熟な私を支えてくれる琥珀や未玖さん。そして。
「私のことをいつだって信じてくれた兄貴だっ!!」
※もう少し続きます。次回更新は明日の予定です。
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