ひまわり・ひまわり・ひまわり
『なろうラジオ大賞4』参加作品です。
「どうかこれきりにしてください。もう!私達を許して下さい。」
「それって…十三回忌の法要にも来てはいけないと言う事ですか?」
交通事故で彼が亡くなって10年目。
お仏壇の前での彼のお母様とのやり取りの後、彼の月命日には墓参しかできなくなった。
お墓をお清めしようと手桶に水を汲んでいた私の横をひまわりの花束が通り過ぎる。
「盗人見つけた!!」
手桶を置き去りに花束の後を追った先は彼が眠るお墓。
季節にそぐわないひまわりの花束は本来は私と彼との思い出なのに…
この見知らぬ男はその思い出を奪い、お墓に手を合わせている。
「あなたは…どなたですか?!」
怒りに震える語尾を感じ取ったのか、男はゆっくりと振り返る。
「菊池家の方ですか?」
「いいえ、そうではありません! けど…」
「山内…咲さんですね?」
「どうして私の名前を?!」
「私は…河野静子のゆかりの者です」
彼を殺した忌まわしい女の名前が男から発せられた次の瞬間、私は墓前のひまわりの花束を掴んで激しく男を打ち据えた。何度も何度も
「一体何の真似ですか?! 帰って下さい!帰って!!」
花束がボロボロになって辺り一面にヒマワリのかけらが飛び散っても男は微動だにしない。
「どうして!!??」
「あなたの気持ちが分かるからです。あの事故の日…あなたと私は…恋人を失った。 あなたは事故で、私は自死で…」
彼を轢いたその日に女は…『人殺し!!』と罵った私の言葉に耐えかねてビルの外階段から身を投げた。
そんな私の胸の内はどす黒く渦巻き、哄笑となって零れ出る。
「私の気持ちが分かるですって!!それなら私もあなたの気持ちが分かる。私の事を殺したいと思っているでしょう?!」
「私は彼女の遺言に従っているだけです。あなたに不快な思いをさせてしまい本当に申し訳ございません。」
深々と頭を下げるこの男を見ていると
どうしようもなく悲しい思いが胸にこみ上げて来る。
この男の手元にある百合の花束は…
きっとこれから会いに行くあの女の為の物だろう
それに引きかえ、私は…
この10年…取り残されただけだった。
だから私は…悪魔が耳打ちしてくれた言葉をそのまま口に乗せた。
「それならばとっておきの提案がある。お互いがお互いを復讐する方法! その百合の花を打ち捨てて私を抱きなさい! この10年、石女として生きて来たこの私を!!」
冷え切った冬の石畳にひまわりのかけらが咲くように
私の奥底に奇妙な火種が燻り始めていた。
とても辛い物語を思いついてしまいました。
現実には出会いたくない…
頭の中のプロットはどうしようもなく辛い展開に落ちていったので…1000文字の歯止めがあって良かったのかもしれません(^^;)
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