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「え? マモ?」と守を見上げる星。
守は星が腰に巻いていた自分のパーカーを抱きしめるかのような動きで取る。そして羽織り、顔が隠れるくらいにフードを深くかぶる。
「ん? なに? ハグでもされるかと思ったの? お顔が真っ赤でリンゴのようだよ」
守はしたり顔で星を見下ろし、頭をポンポンと優しく触る。
星はケイ同様、自分からくっつくわりには他人から何かされることにはなれていないらしく、赤面のまま硬直している。
「あれぇ? 星はハグがしてほしかったのかな?」
守は両手を広げてハグの態勢になり、ニヤニヤしながら星が来るのを待っている。
「マモなんて嫌い! ケイく~ん」
星は顔を真っ赤にしたまま涙をポロポロ流し、ケイに抱き着き顔をうずめる。
ケイは星の頭を優しく撫で、守をチラッとみて眉を八の字にして微笑む。
「やりすぎ」と光優は守の頭にタオルを乗せ、軽くゲンコツを落とす。
「星、ごめん」と守は星に声を掛けるが見向きもしない。
守はいつものように星をからかうつもりが度を越えてしまい、星を本気で傷つけてしまう。守は静かにその場を後にする。
「コウはこれを使って」と日和は光優にタオルを差し出す。
「大丈夫だよ」とニコッと微笑む光優。
「うふふ。自分のタオルを渡しちゃったのに? そんな汗がビショビショだと風邪ひいちゃうよ。だから使って。というか使いなさい! ねっ」
「ありがとう、ヒナ」
「さっきのお礼でもありますよ。いつもありがとう」
日和と光優は笑顔で見つめあいグーパンチをする。
(二人は多分、同じ気持ちだよとかいう時にはハイタッチとかグーパンチとかをする。それがちょっと羨ましかったりする。日和と光優は誰から見てもお似合いのカップルで、二人を見ているとココロがポカポカとして優しい気持ちになれる。理想のカップルだなっていつも思う。そう思うのは私だけではないようで、陽くんも二人が楽しそうにしている姿をみていたりする。
もし私と陽くんが恋人同士になったとしてもこうならないのはわかっているし、日和たちのようになりたいかといわれると……なりたい気持ちはあるけれど無理なのはわかっているから、私と陽くんは日和と光優という理想を眺めてしまうんだろうなって思う。って陽くんを巻き添えにしている気がするけど。)
「あ、忘れてた。陽のパーカーも返さないとね」
日和はギュッと抱っこしていたパーカーを陽に手渡す。
陽は受け取り「あったかい……」と言ってパーカーを軽くギュッと抱く。
「あ、ごめんね。クッション代わりに抱っこしちゃったの。あとね、みんなの試合を見ていたらすごい! ってなってギューって握りしめちゃったかも」
「そう。わかった」と陽はパーカーを羽織り腕を鼻に近づける。
「……日和の匂いがする」
日和は耳まで真っ赤になり、陽のパーカーを脱がそうと服を引っ張る。
「え? 脱いだ方がいいの」
日和は下を向いたまま、二回頷く。
「俺は脱ぎたくないんだけど……」
「洗って返す……」
「いいよ。あったかいし、それに……」
日和は陽の言葉の続きを待ち、陽の顔をじーっと見つめている。
(本当は知ってるんだ。でも知らないフリをしている。
陽くんが日和といる時にしか見せない表情……その意味も本当は知ってるんだ。でも今はまだ知らないフリをしていようと思う。)




