10-4
ピー。笛のスタートの合図で、ケイと陽と光優のチームと守がいるチームとで五人制のバスケットの試合がスタートする。
(陽くんもコウも昔から運動神経はよくて全般的に運動が得意、マモは中学の時までバスケット部だし、ケイくんはどうなんだろう?)
試合開始からすぐにスリーポイントシュートを決める、守。男女両方の歓声が上がる。そのあと、ケイもダンクシュートを決め歓声が上がる。
(バスケがそんなに詳しくない、普段試合をみない私ですらわかる。その試合がすごいということに。練習でもしていたのと思うくらいの連携のとれたパス回しに外さないシュート。コウと陽くんが連携を取れるのはわかるけど、ケイくんも昔からの仲のように二人と息の合ったパス回しをしている。なんだろう、いつもフワッとしている三人だけあってここまで素早く動いているとなんだかカッコよくみえる!)
本日は球技大会なので、バスケの試合以外にも球技の試合はいたるところで行われているのだが、元々人気のある光優と守がいるだけでなく転校生で白馬の王子と言われるケイも一緒となると注目度がとても高い。そのため体育館は女子生徒たちで埋め尽くされ、ここはアイドルのライブ会場かというくらいに黄色い声の声援が響き渡っている。
白熱した試合が続き、ケイたちのチームが勝利する。
「陽くん! すごい試合だったね! すっごくかっこよかったよ」
結はそわそわしながら目を輝かせ、試合から戻って来た陽にタオルを差し出す。陽は結の顔見て軽く頭を下げ、タオルを受け取る。
結の視界には陽しか映っていない。
結は前日から陽に手渡す用のタオルを用意しており、見た目で選ぶか肌触りで選ぶか、どうやって渡すのがいいかと色んなシミュレーションをしていた。
「佐糖、ありがとう」
陽は無表情でお礼を言い、タオルを使い始める。
「そうだ、陽くん」
「なに」
「あのね、私の苗字ね。佐糖じゃなくなったんだよね」
「あ、そうか」
「それでテイラーって呼ばれるのもなんか変だしね……」と結がモジモジしていると「結」と陽が名前で呼ぶ。
結は名前で呼ばれたころが嬉しく顔がヘニャヘニャととろけてしまう。
「ねぇ、結! 僕の分のタオルは?」
ケイは結に話しかけるが、結の耳にケイの声が届くことはない。今の結の世界は陽でいっぱいで、名前で呼ばれた事で陽以外の人も声も何も入ってこない状態である。
「はい! ケイくんはアタシのフワフワなタオル使って」
「え? いいの? ありがとう、星」
星は背伸びとジャンプをしてケイの首にタオルをかけようとする。ケイは星が手が届くようにと屈み、星は頭からタオルをかけ頭を撫でるようにゴシゴシと拭く。
「星!」
「ん?」
守は星の目の前に立ち、抱きしめるかのように星の腰に手を回す。




